101番目の魔術師
くれはちづる
モノローグ
【0】
はじめに、術学というものが現代の日本においてどのような役割を果たしているだろうか。
最古の術学である技術が生み出されたのは、縄文時代ごろだった。
人々は獣を狩り、簡素な住居を作り、火を起こし、衣服を作ったこと。
それが事の始まり、技術。
そこから三つの術学が生み出され、術学師によって研究された。
次に生まれたのが、科学。
人類は太古の昔から、自分たちをとりまく自然界の現象に目を向け、快適な暮らしを得るために道具を作ってきた。科学というのは、ラテン語の scientia (知識)に由来する。科学の発達により、時代を覆す次の術学、魔術が誕生するのであった。
魔術は、火、水、風、土、光、悪の六つの属性からなる術学である。ただしメリットデメリットはあり、威力が強いぶん、状況が属性に適していないと威力が半減されてしまう。例えるならば、水中で火の魔術は使えないという例がわかりやすいだろう。だが人気の術学であった。
では今はどんな術学が好まれているだろうか。
それは魔法。
五年前に誕生した最新術学。ただし威力は魔術より少し劣る。だがどんな状況でも、属性に適していなくても使用できる。まだ研究が進んでいないため、魔術を超える力なのではと揶揄されている。現在半分以上の術学師の卵が属している、最も人気の術学であった。
この四術が国が最も重要としている術学の原点だ。
二十一世紀も半分以上を過ぎ、二〇七二歳となった地球。地球に住んでいる半分近くの少年少女たちが今、術学師を目指している。そして、国も術学師を重要な人材だと判断し、今現在、術学師を養成するためのプロジェクトを進行しているのだ。
その一つが、術学を学生教育に取り入れることであった。
中等学校では普通科と術学科に分かれ、高等学校では術学専門高等学校の建設が開始された。
国立術学師養成高等学校。
東京都にしか建設されていない、国内最高の有能者が集まる名門校だ。
この高校に入れば、必ず安定した術学師への未来が手に入り、術学師を志す子供を持つどの家庭でも、ここの学校に入ってほしい、という両親の願いがあるはず。
だがしかし、現実は厳しいものだ。
実力主義の術学師の世界は、簡単にエリート校に入ることが出来るほど、甘くはない。
中等学校の成績が術学科で素晴らしい者、普通科であっても学業成績が優秀で、術学に興味のある者が入学者選抜試験を受けることを、許可される。
許可されたものだけが入試を受け、実技、筆記、どちらも優秀な結果を出さないと、この学校には入れない。それが、実力のみを重視したこの学校。
甘ったるい考えだけでこの学校に入学すること。
ただの好奇心だけでこの学校に入学すること。
術学の世界は残酷だ。
だからこそ、選ばれたものだけしか勝ち上がることはできない。
だけどそれが偽りであっても。
努力して手に入れた実力なんて、だれも見向きしない、もっと上を目指せと鞭を打たれるスパルタ教育。
それが、術学の強さだった。
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