魔術師は現代社会に殺される
軌跡
プロローグ 例えば魔法があったなら
唐突な話だが、魔法と科学って共存できるんだろうか?
例えば火を点ける魔法があったとする。この魔法は定型にしたがって、修行しないと獲得できない。RPG風味に言うならレベルを上げるとか、そんな感じで。
対して科学はどうだろう? 火を点ける――なんて方法ならライター、あるいはマッチで直ぐに出来ることだ。オール電化のご家庭なら指先だけでチョチョイのチョイ、である。
一般の人々が楽だと感じるのは、たぶん後者だろう。
修行なんて明らかに時間が掛かりそうなものより、お金を払って設備を導入する方が明らかに簡単だ。魔法みたく、事ある事に呪文を唱える必要もない。スイッチ一つ。仕組みを理解する必要はまったくなく、人類が積み重ねた技術の恩恵を簡単に受け取れる。
科学は誰もが手に出来る普遍性を持ち、魔法は才能のある人間が手にする特権を持つ。
お互いが技術として同程度のラインに達しているなら、後は需要と供給の問題だ。そう、火を起こす度、わざわざ魔術師を呼ぶなんて馬鹿らしい。ライターで、マッチで、スイッチ一つで代用した方が、明らかに手間は掛からない。魔術師が風邪を引いて来れませんでした、なんて事故もなくなる。
時代が進んで魔法――いや、魔術でなければ出来ないことはなくなった。特権は失われ、科学はその特徴を生かして一気に拡散した。
とすれば、もう。
魔術師が独占する仕事は、無くなったようなものだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます