凄い剣のはなし!? 序章:卒業、新たなる旅立ち
龍頭
第1話 パブリックスクール
残雪も溶けきり、川は雪解け水でその流れを煌びやかにし、湿った土壌から新たな命が芽吹く季節。そして、それは人の社会においては別れ、新たな出会いに期待する節目の季節でもある。ここハルモニア王国の首都スレインの国立パブリックスクールでも別れ・・・、卒業の季節を迎えようとしていた。
「さて、いよいよ明日が卒業試験です。みなさん明日は体調を万全にし・・・・・・」
俺のクラスの担任教官のナルヤ先生が明日の試験について言っているが俺の耳には入らない。俺の頭の中は明日試験のことでいっぱいだ。
「ここ数年は死者は出てませんが・・・・・・」
そう、この試験は実戦だ。本物のモンスターを相手に戦わなければならない可能性も十分ある。まぁ別にそんなの実習で何回もやっているから余程の大物以外は特に問題にはならない。多分何とかなるだろう。それより一番俺の頭を悩ませるのは・・・・・・。
「では、明日の試験の組み合わせを発表します。呼ばれた人は打ち合わせに入って結構です。では、・・・・・・」
そう試験のパートナーだ。この試験は3人で1チームとして実施される。このチーム編成によって試験の苦楽は一変する。完全にランダムに決められるためチームバランスがばらばらなのだ。みんなそれぞれ得意なものや実力が違うので優秀な奴が集まったり、弱い上に相性が悪い奴が集まったりすることもある。俺は、よく知っている友人か、俺が剣による攻撃を得意としているのでできれば魔法が得意な奴と組みたいと思っている。剣と剣の連携は実は結構大変なのだ。上手くいかないとお互いに切りつけてしまったりする事もある。まぁこのパブリックスクールでは余程の人じゃない限りそうはならないだろうけど全員とコンビを組んだことがあるわけじゃないからわからない。
「次のチームは、クレイスラー=マイトと・・・。」
おっと俺の名前が呼ばれたようだ。相手は誰だろう。
「クレイスラー=マイトとミクリィー=エナハルドの2人だ。本試験で唯一の2人チームだ。大変だろうが頑張ってくれ。」
げ、2人チームになってしまった。なんて運が悪いんだろう。戦力は他のチームの6割。結構厳しいだろうか。等と考えてると横に女の子がやってきた。俺が浮かない顔をしているからだろうが一瞬ためらい、そして意を決したように話し掛けてきた。
「クレイ、よろしくね。2人で大変だけど頑張ろうね。」
「ああ、ミクこちらこそよろしくな。2人だけどまぁ何とかなるだろう。」
俺はなるべく気楽そうに明るく言う。ここで暗くなっても良い事はない。
「うん。がんばるよ。」
彼女も明るい笑顔で返事をしてくれた。
彼女が俺のチームメイトとなったミクリィー=エナハルド愛称はミクだ。
ショートカットでやさしい顔立ち、背は普通、どちらかというとおとなしめの性格をしている部類に入る。
それほど仲良くはないが知らないって程でもない。友達の友達ってくらいの間柄だ。何回か実習で組んだこともある。
「ミクは補助支援魔法が得意だったよな?」
「うん、支援系魔法は得意。だけど攻撃魔法はあまり得意じゃないよ。」
支援系魔法が得意だと攻撃系魔法はあまり得意じゃないというのが一般的だ。この理由は魔法力学等で説明されているが俺はあまり詳しくは覚えていない。
「じゃ、物理攻撃はどう?」
「メイスや棒くらいなら使えるよ。でも長い刃物はだめかな。」
やはりこの非力そうな娘に近接戦闘は酷そうだ。
「それなら俺が剣での攻撃をメインにしてミクが後ろで支援魔法って感じかな?」
というかこれしかやりようないんだよねこの組み合わせは。
「うん。私はそれでいいよ。でも、いざとなったら私もメイスで戦うよ。」
「いや、そういう時は逃げるよ。できるだけリスクは背負いたくないから。」
もし、彼女がメイスで戦ったとしたら逆に支援魔法が来なくなるので俺が相手にできる数が減って逆に二人とも危険になってしまうだろう。まぁ俺はいちいちそんなことを口に出して相手を落胆させたりはしないけどね。どっちかというとコンビネーションを重視した方がチームプレイは成果が出るはずだから。
「ミクがメイスで戦ったとしたら逆に支援魔法が来なってクレイが相手にできる敵の数が減って逆に二人とも危険になってしまうでしょ!。」
え!?
俺が声をした方を見るとそこにはミクの親友シエルが居た。
ポニーテールできりっとした顔立ちの背の小さな女の子だ。
「いい?二人だけなんだからミクがきちんとしないと、何かあったらすぐにやられちゃうんだからね。」
「はぁい。」
「じゃそういうことでミク持っていっていい?これから明日の準備しに買い物行こうと思ってるんだけど。」
まぁ戦術はさっきのでいいからもういいかな。本当はもうちょっとミクの得意魔法とかを聞いておきたかったけど。
「ああ、戦術はさっきの感じでいいと思うから打ち合わせはもういいよ。」
「え、え!?でも・・・。」
勝手に話が進んで困惑しているミク。
「クレイが良いって言ってるからいいの。さぁ早く行かないと良い矢が売り切れちゃうよ~。」
彼女は弓による攻撃を得意としている。100m先のねずみも射止められるとか射止められないとか。
「細かい打ち合わせは試験直前にすればいいさ。」
「わかったよ。じゃあいいよシエル。」
「じゃあさっさと行きましょうか。じゃ~また明日ね~クレイ。」
「明日は試験頑張ろうね。」
「おう。」
ミクが行ってしまったので俺ももうここに用は無い。
周りを見るとまだ打ち合わせをしている人がほとんどだった。中には結構もめてたりするところもあって傍から見ていると中々面白い。
「クレイは打ち合わせ終わったのか~?」
話し掛けてきたのは、そのもめているチームの1人で俺の親友のシャイン。
「あぁ、もう終わったよ。そっちは結構大変そうだね。」
「そうよ、まだぜ~んぜん決まってないのだからじゃましないでね。」
シャインのチームの女の子に怒られてしまった。
「でもこのままじゃ埒があがらないだろ、ここは部外者の意見を聞いてみようじゃないか」
といってシャインが俺の方を見る。
「そうね、それもいいかもね。」
「聞くだけ聞いてみる価値はあるかな。」
他の二人も賛成のようである。困ったなぁ。他のチームなんか良く判らない、というかどうでもいい。
「で、どういう風にもめてるの?」
とりあえず聞いてみることにした。
「チームのカラーをさ何色にするかでさぁ。」
「私は朱がいいて言ってるのにさ。シャインが」
「いや、やっぱり赤でしょここは。」
「俺としては緋色がいいって・・・。」
また三人で言い合いが始まったようだ。かなりどうでもいいことのような気がする。
「作戦とかは決まったの?」
「そんなのとっくに決まったわよ。シャインはどうせ剣しかできないんだから。」
「なんだと、そっちだって攻撃魔法しか役に立たないじゃないか。」
「・・・・・・。」
さて、こいつらはほっといて俺も帰るとするか。
おっと途中で鍛冶屋によって剣を取りに行かないとな。
試験に備えて研ぎなおしてもらっているのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます