第31話

「……本当に大丈夫なのか? その……俺ん家に隠れてなくても……」

 河原から少し離れた場所で姿を現し、亮介はトイフェル達に問うた。

 道々話した内容によると、トイフェル達はこれから地球上のどこかに自分達の住処を見付けるつもりなのだという。グヴィルにディネ、それにズゾといったイーター達の大物達も倒したし、先程の亮介の攻撃で雑魚のイーターもかなりの数が減った。そのお陰で、上手くいけばイーター達が地球から出ていくかもしれないし、そうでなくてもしばらくは大人しくしているだろう。なら、自分達の種族を集めて拠点を作るのは今がチャンスだ。

「まぁ、キミの家からそんなに遠いところには行かないつもりだけどね。何かあった時、すぐ近くに頼れる人間がいるというのは大切な事さ」

「……そうか」

 少しだけ寂しそうな顔をする亮介に、トイフェルも少しだけ寂しそうに言う。

「落ち着いたら、また遊びに行くよ。従兄弟クンのご飯、またご相伴に預かりたいしね」

 そう言って、トイフェルはふわりと上空に浮かび上がった。フォルトも、それに続く。

「それじゃあ、また遊びに行くまで元気でいるんだよ、亮介! あと、もしまたイーターが現れたら、その時はよろしく!」

 そう言って、トイフェル達はそのまま何処かへ飛んでいってしまった。遠ざかっていくその姿を眺めながら、亮介は苦笑する。

「……ったく、最後まで自分勝手な奴……」

 そう呟いて、亮介はくるりと踵を返した。その時だ。

「あ、亮ちゃん!」

 聞き慣れた声が聞こえ、亮介は振り向いた。そこには、ご多分に漏れず時野がいる。

「時野。……今、学校の帰りか?」

 手にエコバッグを提げている従兄弟を眺めながら、亮介は問うた。すると、時野は「そ!」と元気に頷いた。

「美味い麻婆茄子とその他諸々作って持ってくからさ、楽しみにしててくれよな! ……あ、ところで、亮ちゃん」

「? 何だ?」

 妙に真剣味を帯びた顔になる従兄弟に、亮介は嫌な予感を覚えた。

「さっきまで、そこの橋で何か色々不思議現象が起こってたって言うんだけど、亮ちゃん、何か知ってる? 何でも、火の玉がボンボン降ってきたりとか、竜巻みてぇな花吹雪が現れたとか、勝手にそこらの岩が砕けたとか、川にぽっかり穴が空いて一時的に水量が減ったんだけど、すぐに元に戻ったとか。大騒ぎがスーパーにまで伝わってきてさ。俺、急いでここまで走ってきたんだけど、なーんにも起こってねぇんだもん。せっかく、今度こそ冒険の始まりだーっ! って張り切ってきたのにさ」

「ネギが飛び出たエコバッグぶら下げたまま冒険の旅に行くつもりだったのか、お前は……」

 不満そうに言う従兄弟に呆れた声で返す。それから、亮介は少しだけ柔らかい口調で少しだけ優しく言った。

「お前には残念な話だけどな、あそこではもう、不思議現象は起きねぇよ。多分、この先ずっと……な……」

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