第26話
いつも、怖いと思いながら戦ってた。
俺は時野やミリィみたいに魔法使いに憧れてたわけじゃないから、いきなり魔法使いになったところでどんな攻撃をすれば良いのか、なんてイメージは全然湧いてこない。町を極力壊さないように戦わなきゃいけないとなれば、尚更だ。建物や人を上手い事避けて攻撃魔法を使うなんて器用な事、できる自信なんてこれっぽっちも無い。
じゃあ直接攻撃は? と訊かれたら、これも無理だ。時野みたいに武術を習得なんてしてねぇから、さぁ戦えと言われたってどうすればまともに戦えるのかすらわからない。体育で剣道や柔道は少しだけ習ったけど、異星人と戦えるような代物じゃないし。
そもそも。俺の腕力じゃ武器を持ち上げて振り回すのが精一杯。素早く立ち回るなんて無理な芸当だ。
そんな俺が、魔法使いになって異星人と戦う? 悪い冗談だと思った。けど、やらなきゃやられるんだから、戦うしかない。
だから、戦った。けど、何回戦っても心の奥底ではいつでも怖いと思ってた。怖くて、自信が無くて、逃げ出したくて……。
ミリィが目の前に現れて、実はすごくホッとした。これで俺はお役御免になるかもしれないと、本気で思ったし、喜んだ。
けど、ミリィはアッサリと殺されてしまった……。
それで、余計に怖くなった。
俺よりもずっとイメージができて、強い魔法を使えるミリィがあんなにアッサリと殺されてしまったんだ。俺なんかが太刀打ちできるわけがない。
怖い。逃げたい。怖い、逃げたい、怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い逃げたい怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い……。
心の中でどんどん膨れ上がっていく不安は、消える事無く更に増えていく。だから、いきなり今日ボスを叩きに行こうと思った。これ以上時間を置いたら、気が狂いそうだったから。
けど、結局はそれも無駄な考えだった。ボスにいきなり名前を呼ばれて、確信した。
俺じゃあ、こいつには勝てないと。
魔法も武術もイマイチ、おまけに心を読まれるようじゃ、勝ち目なんてあるわけがない。
そうだよ。俺が世界を救うなんて、やっぱり無理だし、おこがましい事だったんだ。二十一歳の若造が一人で救えちまうほど、この世界は安くない。これは現実なんだ。漫画や、アニメとは違う……。
俺は、このまま死ぬのかな。目の前の、このイーターのボスに食い千切られて。ミリィみたいに、生きたまま引き裂かれて、食われて……それで、行方不明になるのかな。親が心配して、捜索願を出して……それでも遺体すら見付からないまま何年も経って……そして、最後には死亡したものとみなされて、遺体の無い葬式を出されたりとかするのかな。……本当は、もう何年も前に死んじまってるのに。
……それも、嫌だ。やっぱり、死ぬのは怖い。死にたくない。けど、どうすれば逃げ切れる? どうすれば目の前のこいつを倒せる?
どうすれば、俺はこの不安を断ち切れる?
……あれ? 俺って、前からこんなにネガティブだったっけ? ……何か、違った気がする。何かがおかしい。
……あ、まさか……ひょっとして……。
……ん? 何の音だ? 携帯? 俺の携帯が鳴ってる。……って、今はそんな事気にしてる場合じゃねぇってのに。……けど、気になるな……。誰からだ……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます