魔王さま、銀河を征く! -ハイファンタジーVSスーパーサイエンス-

みみみみ

第1話 <地球終了のお知らせ>

 西暦20**年 地球

 

 世界は核の炎に包まれ……る事もなく、第三次世界大戦は回避された。

 

 しかし……。

 

 新生代のエネルギーを求める先進国と産油国との意識差。

 発展途上国と移民、難民によるテロリズム。

 グローバリズム推進による弊害の顕在化と、死の商人の暗躍。

 覇権国家の衰退と独裁国家の暴走。

 

 などなど、数多もの火種が解決したわけではない。

 

 むしろ世界は一種即発。

 

 第三次世界大戦の勃発は時間の問題でしかなかった……。

 

 だが、ならば何故、大戦勃発が回避されたのか?

 

 ―――答えは単純シンプル

 

 世界各国、皆全て。それどころではなくなったからである。

 

 「おい! アレは何だ?」

 「鳥……飛行機……じゃないな?」

 「べんとら~べんとら~」

 「ファック!? UFOだと?」

 「ひとはちまるまる……有視界にて未確認飛行物体を確認。レーダーに反応はありません!」

 「バカな!? あの形状で完璧なステルスだと? ありえん!?」

 「おうどんたべたい」

 「ねーパパ! お空になにか浮かんでるよー?」

 「ははっ! マイボーイ! ソレは飛行……機…と………ジーザス!?」

 「きゃははUFO? ブログの更新ネタ来たー!」

 「……マジか?」

 「バルス!」

 「はい! 何度も確認しましたがレーダーは正常です!! はい! 信じられないのはこちらも同じです!!」

 「……映画の撮影?」

 「よっしゃ! 世界の終わり来た!! コレで会社を休めるぞー!!」

 「スクランブル! これは演習ではない! 繰り返す! これは演習ではない!! 警戒レベル5! 総員戦闘配置につけ!! ……状況開始っ!」

 「始まったな……」

 「ああ……」

 「うぃっく? おんやあ? ゆーふぉー? ち~とばかし飲み過ぎたか~?」 

 「ねぇ喪流堕……あなた憑かれてるのよ」

 「須賀理……これは現実だよ」

 「ふむ、全長5kmってとこか? 大気圏内の重力下でアノ質量を飛ばすだけの技術など地球には無い……やはり本物か!?」

 「ヒャッハー! 今ならなんでもできるぜ!!」

 「誰だ!?」

 「……通りすがりのキノコ狩りの男だ」

 「ふがふがふが」

 「もう、お祖母ちゃんたら……はい入れ歯」

 「すげー! バリすげー!! メチャすげー!!! とにかくすげー!!!!」

 「はいはいワロスワロス……って、まじかよ!?」


 

 それ・・は唐突に現れた。


 

 世界各国の首都上空。

 

 汚れた大気で白く霞む青空に、悠然と舞い降りた巨大な鉄の塊。

 

 ソレには翼も羽も無く、それでいてジェットの噴射口も無い。何故浮いていられるのか常識では理解できない。

 

 ただ分かるのは、ソレが星と星を渡る“船”であり。

 

 現在の人類にとっては、空想上……SFの中にしか存在し得ない乗り物だと言うことだけであった。

 

 銀河帝国軍2525番太陽系方面軍所属の宇宙艦……通称“黒船20XX”

 

 現実の空に浮かんだ侵略者インベーダーの船。

 

 「ワレワレハウチュウジンダ……こほん。

  私は銀河帝国太陽系方面軍37564号。恒星間巡航宇宙戦艦の艦長である。

  

  大銀河2525番太陽系未開有人惑星“地球”において、最も古く歴史ある國を惑星代表と見做し、その言語を持って布告する。

  

  銀河帝国共通時刻12時71分241秒。銀河帝国地方評議会は、元老院に未開有人惑星の取り扱いにおける法案の変更を提案。

  地球時間における2時間と12分32秒の審議の後に既決、新法案は承認された。

  

  そして現在。新たに制定された銀河帝国法12条5335項“帝国貴族の領有権と自治法”を根拠とし、太陽系方面軍最高指揮官。

  銀河帝国貴族である2525番太陽系辺境伯の決定を現地民に伝える」

 

 全世界が注目する中。使い古されたフレーズと共に大空に映しだされたのは奇怪極まる宇宙人。

 

 青白い肌に漆黒のガラスのような眼をした……銀色の軍服を着たグレイであった。

 

 360度、どの方向から見ても直立不動のグレイを正面から見ることとなる不可思議な技術に地球人類は圧倒される……まもなく、ソレを上回る衝撃の言葉が告げられた。

 

 「銀河帝国歴42351年。2525番太陽系有人惑星“火星”の現地民虐殺。及び、銀河帝国資源である“地球”の汚損。

  その他諸々の罪に対する罰として、地球現地民全員に、当該惑星からの退去・・を命じるものとする。

  

  地球時間において一ヶ月を猶予とし、それが成されない場合。銀河帝国法に基づき強制執行されるので注意されたし……以上。

  

  なお、強制執行の際には現地民の人権は大幅に制限され、自由意志は認められない。

  また、退去先の指定はないが、2525番太陽系の無人区間全域が辺境伯の領地であることを留意し、領域侵犯の愚を犯さないことを期待する」

 

 小難しいことを並べ立てているが要約すれば……『血の繋がらない先祖がヤラカシた事と、環境破壊の罪で、オマエラに罰を与える。地球から出てけ』……となり。

 

 『退去先? 知らん! あ、それとココらへん全部俺らの縄張りなんで、勝手に入ってきたらボコるぜ?』……と、なる。無茶苦茶である。

 

 「最後に、諸々の質疑応答については、2525番太陽系方面軍18師団所属の広報課が行うので、宙域通信“ギャラクティカ”0765-555-2525番に問い合わせるように」


 現地民である、地球人類による……『宙域通信“ギャラクティカ”ってなんやねん?!』……とのツッコミは華麗にスルーされた。


 「―――では、銀河帝国に繁栄を! 現地民である諸君らにも安寧のあらんことを……これにて失礼する」

 

 こうして、第三次世界大戦の危機は回避され……大惨事宇宙大戦の危機が勃発したのであった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る