Lemon Sugar

水波 碧

真桜の記憶

「ミント」


それは、葉に鼻をあてると広がるにおい。

スーっと和ませてくれる。


「綺麗な香り」


そう表現したいと思う。

私の大好きなこのミントは心も体も癒してくれる。

心が痛む時も、体が癒しを求める時も、このミントが私をつなぎとめてくれる。


「花」とは何て美しい生き物なのだろうか。

自分の命が尽きるまでひたすらひたすら服を着続け、最後の時も儚さをあたり一面に残し、そして静かに消えていく。

まるで私の理想。


でもまだ消えたくはない。

これはみんなが私を救ってくれて、そのおかげで今もなお、生きていられるのだから。


「尽きるまで、この人生を楽しんでみようか。」


私はそう思った。


*****


正直言って早く死にたかった。


たくさん苦しんでたくさん泣いた病院生活は私の人生すべてをを苦しめた。

苦しめただけじゃなく、私の精神も蝕んでいった。


「どうして私なの」


そういうことを毎日繰り返して、お母さんとお父さんを困らせた。

夜になると、私に気づかれないようにして陰で泣いていた。

お父さんはそんなお母さんを慰め、そして笑顔を絶やさなかった。


「いつになったら外を歩けるの」

「あとどれくらいで学校にいけるの」


世間では一般のことが、私にはやっとの願いだったから。


必死に神様を探して、夜空に向かってお願いもした。


「早く治してほしい」


願いはたったそれだけのこと。

私の中にある病気を一つだけ取り除いてくれれば、それ以上は何も望まない。


だから、どうか叶えて。


「お願い・・・」







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