第13話
「最初に注目したのは『これを読んだ人間』という部分だった。どう見ても不特定多数に対しての記述だ。特定の人間に送るはずのメールに書く文としては、これは不自然なんだよ。メールなら『このメールを受け取った人間』となるはずなんだ」
ページをめくりつつ、彼女は続ける。
「ではどうしてこんな言い回しになったのか。考えれば分かることだ。ネット上の掲示板など、不特定多数に向けた文章だった。そう仮定すると不自然さはなくなる。掲示板で『これを読んだ人間』はメールを送れってことだよ」
「成程。確かにそれならしっくりきますね」
「さて、ではどこにあった文章なのか。私はまずPC(パソコン)でネット上にこの文章があるか探してみた」
「あったんですか?」
「いや、見つからなかったよ」
「……八方塞がりですね」
「そうでもないよ。ここで私はどこで広まっているのか調べることにした。私がこのメールを知ったのは、君の学校の生徒が送ってきたからなのだが、では他に知っている人間がいるか、くまなく探してみた。そしたらね、面白いことが分かったんだよ。私と君の学校の生徒以外、誰もこのメールを知らなかったんだ」
「僕の学校でのみ広まっているってことですか?」
「そういうことだよ」
「だとすると、先程の仮定って間違っていますよね?」
「何故そう言える?」
「だって、ネットの掲示板が出所だったすると、そんな局所的に広まることなんてありませんよね。掲示板とかは不特定多数が見られるものですから。……あぁ、SNSのコミュとかなら別ですね。それなら特定の人間だけが見られます」
「残念だが違うよ。PCでネット上を探したら見つからなかったと言っただろう」
「でもこの場合って、検索エンジンには引っかからないのでは?」
「誰が簡単な検索だけをしたと言った。そういう掲示板関係は直接確認したよ。検索だけがネット上の捜索方法だとは思うな。勿論、様々な検索エンジンを使い分けて捜索するのが基本だけどね」
「そういうものですか。というより、検索エンジンって全部同じじゃないんですか?」
「…………」
違うらしい。
「ここまで情報があれば、出所は簡単に推測できる」呆れたように頭を振りながら彼女は言う。「PC上では探すこともできず、特定の人間、君の学校の生徒だけが見ることのできる掲示板。それは――」
顔を上げずに、本を閉じて彼女は言った。
「――学校裏サイトだよ」
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