歌が救ってくれるから
高瀬 志保
First music
居酒屋で単品飲み放題120分を注文。
生ビールで乾杯。
もう一杯生ビールを飲んで、
日本酒2合を2人で分け合う。
赤ワインを飲んだ時には、
アルコールで脳が茹で上がっていて、体が熱い。
「飲み放題、ラスト一杯ですが何にしますか?」
店員がそう言うので、
サワーのプレーンと漬け物の盛り合わせを頼む。
出てきた漬け物のキュウリを食べると、
ポリポリと鳴る音が出てきて、
おかしくて声に出して笑った。
「センパイ、何がそんなにおもろいんですか?」
「いや、私が入社した時はさ、
カシスオレンジやカルーアミルク飲んで、
最後にアイスクリーム食べてたんだよなぁと思ってさ。
それが今では漬け物ってね。」
「えっ、そんな可愛い飲み方してたんですか?
おばさんというか、おっさんになりましたね。」
後輩は、焼酎のお湯割りをズズっと飲み、口元だけ一の字にして笑った。
私は、最後に残った漬け物の白菜を口に入れ、
目を一の字にして後輩を睨んだ。
シャキシャキと鳴る音が切なかった。
仕事終わりの飲みは終了。
後はお風呂に入って寝て、また明日から仕事だ。
「しんどいっすわ。」
レジでのお支払いとなり、後輩が財布からお札を取り出す。
「本当、しんどいよね。」
私も財布からお札を取り出す。
「でもお金のために働かないといけないっすね。」
「そうそう、働かず者飲むべからず!」
支払い後に出てくるお釣りは、全て私の元へ。
「契約社員ですもんね。あげますわ。」
後輩のその言葉が刃物となり、グサリと私の胸を刺す。
グーで後輩のわき腹を叩くけど、
後輩はいつもの通り、一の字にして笑うだけだ。
店を出て、後輩とさよならをする。
ウォークマンを取り出し、イヤホンを耳にかける。
再生ボタンを押して流れる曲を聞きながら、
ちらりと見た後輩の財布の中身を思い出す。
5万円ほど入ってたよな。
私の財布の中身はお釣りでもらった小銭だけ。
きゅうりを食べたときと同じおかしさがこみ上げて来て、
1人で笑ってしまう。
今のままではダメだ、自分。
全曲をシャッフルで聞いていたウォークマン。
流れてきた曲がRADWIMPSのトレモロで泣けてきた。
歌が救ってくれるから 高瀬 志保 @sakazu731
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。歌が救ってくれるからの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます