第104話 起爆用バッテリーを作成してみる
バッテリーが欲しい。
爆薬を遠隔操作で起爆するためにはどうしても銅線でつないで雷管を電気起爆させたほうが確実だから。管理の面倒な導火線か導爆線と雷管で繋ぐより確実性がぐんと上がる。
モーターを手巻きすればエンジンスタート用にも使えるかも知れない。今はクランクでエンジン始動。ちょっとした仕事だ。
師匠に聞いたところ、電池自体は商用として存在するらしい。しかし電信ギルドが内部で作って消費しているだけで市場には出回っていないとのこと。話に聞いた構造から推測するに、ルクランシェ電池か初期の乾電池に近いもののようだ。
手に入らないのか。
……そうだ自作しよう。
小振りの木箱をいくつかの部屋に分け、銅板と亜鉛板、銅線、薄く作った土の素焼き板を用意。内側はゴム接着剤でシールし、部屋の真ん中に仕切りとして素焼き板を設置する。亜鉛板か銅板のどちらかを素焼きのケースで包んだ構造でもいいが希硫酸の浸透と製造に時間がかかるから却下。
端子となる銅板、亜鉛板は穴をいくつもあけて表面積を稼ぐ。隣の部屋の銅板、亜鉛板を銅線でつないでおがくずとともに部屋につっこむ。おがくずは衝撃緩衝材と希硫酸の液漏れ防止素材だ。銅板側には銅の削りカスを入れておく。ゴム接着剤で銅線はカバー。隣の部屋とつなぐ銅線は蓋に干渉しないよう接着剤で溝に埋める。箱の上部分、蓋の内側もゴムを塗ると防水箱となる。使用時は希硫酸を各部屋に
ドライバッテリーに近い構造だが、最初から希硫酸を入れておかないのは、使えるゴムの耐薬品性能が低いから。外箱にプラスティックかガラスを採用できれば完全密封のドライバッテリーとしてつかえるのだが仕方ない。技術も強度も足りなくなってしまう。
一室あたり約1.1Vを発生させる簡易ドライバッテリー。素焼き板の仕切りが割れなければ防爆用の減圧弁は不要なはずだ。8室9V弱版と12室13V版を試作してみる。
最初は素焼き板の厚みに苦労した。厚すぎれば希硫酸内のイオン交換効率が落ちて電流が稼げないし浸透にも時間がかかる。薄すぎると衝撃で割れて端子同士が同じ希硫酸に触れ、水素ガスが発生するし電圧の落ちも早い。
最低でも数回以上は起爆につかえるバッテリーにしたい。
電気着火式の雷管は発破用の雷管に導火線の黒色火薬と細い銅線をコイル状にして詰め、接続用のケーブルを外に伸ばしてカシメた物を用意した。電気を流せば遅延がほぼゼロで起爆する。バッテリーサイズによって供給できる電流量が変わってくるようで、実用レベルの携帯できるサイズだと、レンガ三つくらい。これは最低でも20本以上の雷管を起爆できると実験で分かった。
持ち歩くならこのバッテリーに希硫酸入りボトルも必要になる。これより小さくするとなると加工作業が大変になる割にメリットが少ない。
ちなみに木箱はヘンリー師匠に作ってもらっている。液体が漏れないレベルの加工精度は俺には無理だ。
これを実現するまで数週間かかったのは痛かった。が、しかたない。前の北都市遠征からこっち、空き時間でちまちまと作業、テストを進めてやっとの完成だ。何回も硫酸を買うために通ったおかげで薬屋の
さて、今日も薬屋さんに行くか。
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