第119話

「先に来ていると思うんだけど」

「お名前は?」

「二階堂」

「二階堂さんですね、確かに承っております」


案内されて奥の個室に。


「やぁ、久しぶり」

「お久しぶりです、アリアさん」

「相変わらず美人だね」

「そちらも可愛らしく」


軽く挨拶を済ませて


「初めまして、お二方。運営の舞宮優(マミヤユウ)と申します。ソーニョでは広報を担当しております」

「初めまして、江利亜美と申します。こちらは弟の柘雄です」

「アミさんとツゲオさんですね」


席について


「お好きなものを。料金はこちらが払いますから」

「いえ、大丈b「私はオレンジジュース」

「アリア⁉︎」

「いえ、構いませんよ。いつもの事ですから」

「うん、いつも通りだから。直美も瑠璃も色々食べたし」

「若い人の食べっぷりは見ていて楽しいものですよ」


若作りだけど今確か三十後半のはずだよね……


「……では烏龍茶を」

「コーヒーで」

「分かりました」


このお店は高級らしくて注文は口頭とタッチパネルの二つがある。だからさっさと打ち込んで注文し


「失礼ですがお二人のアバター名を聞いても?」

「……今はエミリア。これからもエミリアです」

「シンです」

「アリアさんと同じギルドに所属されている?」

「はい」


ふむふむ、と手元のデバイスに打ち込んで


「さらに失礼ですが年齢層の方は……?」

「10台です」

「え!?」

「柘も10台です」


亜美の手が高速でツゲオの頭を叩いた。


「10台サンプル三人、っと。さて、まずはソーニョの現状に不満などは?」

「そうだね、私としてはひよちゃんたちのステータスが大幅に下げられたことかな」

「アレはあなたが原因なんですが……」

「え?」

「アリアさんのテイムモンスターのひよちゃん、固有名、《ブリザードフェニックス》が星獣レグルスの三つのうち二つを占めたのはご存知でしょう?」

「うん」

「プレイヤーを大幅に上回るステータスはバランス崩壊に繋がる、とのことです。それだとテイムモンスター3体を強くしまくるだけで無双できますからね」


むぅ……それなら仕方ない……なんて思えない。


「他には?」

「そうね……種族を選ぶ利点が無いってところね。選ぶよりも今のままバランスが良いヒューマンで十分なとこ」

「なるほど……今現在は上級種族を開発しているのですがそうですね、大本も強化「ううん、強化じゃなくて一極化、二極化くらいがちょうど良いと思うの」

「なるほど、検討させていただきます。ツゲオさんの方からは?」

「召喚獣の実装が遅いっていうのと……やっぱり大規模戦闘が少ないってとこかな」

「なるほど……大規模戦闘はゾディアックモンスターだけでしたね。追加するとして……召喚獣の件は完全にうちの中で意見が分かれておりまして」


……?


「女キャラか擬人化か、モンスターとしてかイケメン化など……様々な趣味趣向を持ったものが集まっておりますので意見が纏まらないんですよ」


苦笑しているけどさ、


「それは優たちの部署だけなの? それとも会社全体?」

「全体です。ちなみに坂崎は普通にモンスターとしての意見です」

「坂崎?」

「セプトですよ。元は中の状態を確認するためのプレイヤーだったのですがガッツリとやり込んで……今では最強ギルドの一員だそうですね」

「うん、そうだね」

「私も少し覗いてみたのですが思いの外モンスターがリアルで……」

「ま、それに関しては個人差があるよね」


ウンウン、と頷いていると


「ご要望などはございますか?」


*****


「僕のターン、手札の《銀河戦士》の効果で《銀河光竜》を墓地へ送り、守備表示で特殊召喚。効果で《銀河騎士》をサーチ」

「……通そう」

「んじゃ《銀河騎士》をリリース無しで召喚し、墓地から《銀河光竜》を特殊召喚し、オーバーレイ! 二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚、《No.107銀河時空竜》! カードを二枚伏せてターンエンド」

「私のターン、ドロー」


私の手札にあるのは《エフェクトヴェーラー》と《バイスドラゴン》、《ダークリゾネーター》に《チェーンリゾネーター》と《二重召喚》、そして《バトルフェーダー》。これで一気にエースモンスターである《スカーレットノヴァドラゴン》を召喚できる!


「相手フィールド上にのみモンスターが存在する時、《バイスドラゴン》は手札から特殊召喚できる。そして《ダークリゾネーター》を召喚してレベル5《バイスドラゴン》にレベル3チューナー《ダークリゾネーター》をチューニング! 王者の鼓動、今ここに列をなす! 転地鳴動の力を見るが良い! シンクロ召喚、レベル8《レッドデーモンズドラゴン・スカーライト》!」

「なんか違くね?」

「《レッドデーモンズドラゴン・スカーライト》のモンスター効果発動!」

「チェーンして手札から《タキオントランスミグレイション》発動」

「手札からトラップだと!?」


不味い不味い不味い……手札の《二重召喚》で壁は呼べる……だけどライフで受けても問題なさそう! それに《フェーダー》握ってるし。


「ターンエンド」

「僕のターン、ドロー……今引いた《銀河光竜》を墓地へ送り《銀河戦士》を召喚、そのまま《銀河騎士》をサーチして召喚しダブルオーバーレイ!」

「ダブル?」

「《セイクリッドプレアデス》と《No.62銀河光龍皇》を召喚」


あ、これ不味い……


「バトルフェイズ、《107》でダイレクトアタック!」

「手札の《バトルフェーダー》の効果で特殊召喚し、バトルフェイズを強制終了!」

「……ターンエンド」


このドローに全てをかけて


「ドロー!」


…………引いたのは《死者蘇生》……《バイスドラゴン》……《チェーンリゾネーター》……《バトルフェーダー》……レベルの合計は7! 黒薔薇を咲かそう!


「《死者蘇生》を発動! 《バイスドラゴン》を蘇生する!」

「通しましょう」


通す? 何か発動できるモンスターがいる……もしくは伏せカード?


「《チェーンリゾネーター》を召喚」

「《セイクリッドプレアデス》の効果で《バイスドラゴン》をバウンス」


……


「まだだ! レベル1《バトルフェーダー》にレベル1《チェーンリゾネーター》をチューニング! レベル2《フォーミュラシンクロン》! 効果で一枚ドロー!」


これで何かを引けば……!


「《THE・トリッキー》の効果で《バイスドラゴン》を墓地へ送り特殊召喚!」

「《プレアデス》のバウンスが逆効果となったか……」

「冷たい炎が世界の全てを包み込む、漆黒の花よ、開け! シンクロ召喚! 《ブラックローズドラゴン》!」

「げ」

「《ブラックローズドラゴン》の効果で全て壊すんだ」


全てが消え去った……しかし私の手札は0、対して相手も0枚。これでしばらく凌げる!


「ターンエンド」

「ドロー……ターンエンド」

「私のターン、ドロー! 《星屑のきらめき》を発動! 墓地のシンクロドラゴンと同じレベルになるように除外してドラゴンシンクロを蘇生する! 蘇れ、《ブラックローズドラゴン》! ダイレクトアタック!」

「……残り5600か」

「ターンエンド」


ドローしても手札は二枚、《ブラックローズ》を突破するには程遠い!


「墓地の《62》の効果で蘇生、さらに《銀河雲竜》を召喚し、効果で《107》を釣り上げる」

「……!? だけど《62》の与えるダメージは半減、それに《107》なら怖くない!」

「墓地の《雲竜》効果で《107》の素材を増やし、バトルフェイズ! 《107》の効果で全てを無効にする!」

「《62》のデメリットが消えた……!?」

「《107》で攻撃し《62》でダイレクトアタック!」

「ギリギリ耐えたか……まだチャンスはある!」

「それはどうかな」

「何!?」


カン☆コーン!


速攻魔法RUM‐クイックカオス発動!」


あ、ダメだこりゃ。


「《107》一体でオーバーレイ、《CNo.107》を召喚しダイレクトアタック」

「負けたー」

「ちょっとそこの二人、バイトはー?」

「仕事は終わってますよ」

「なら良いよー」


カーマインブラックスミスは今日も平和だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る