第47話
僕は6人の前で背中の二本ではなく、腰の二本を抜く。木の剣だ。
「手加減のつもりですか?」
「嫌なら全力で潰すけど?」
「全力で来てください!」
6人はそう言って剣や槌を構える。そして一斉に飛びかかってきた。なので
「メテオブレイク!」
ちょーぶっ飛ばした。
*****
「自分、姐さんを舐めてたっす! 申し訳ありません!」
「「「「「申し訳ありません!」」」」」
「そう思うなら土下座をやめてお店から出て行って」
僕の言葉にシェリ姉は苦笑して
「それで? 弟子にでもなりたいって言うの?」
「はい! 姐さん!」
「……面倒だなぁ」
僕はため息を吐いて
「ひよちゃん、ちゅう吉、ルフ。出かけるよ」
『ちぃ!』
『ちゅう!』
『うぉん!』
ブレーメンしながら3人が奥の部屋から出て来る。そのままお店から出る。僕も続いて
「ほら、閉店だからシェリ姉もそっちのみんなも出て」
「はーい」
「「「「「「了解!」」」」」」
6人はお店から出て去って行った。そしてシェリ姉も。
「今日は高純度ミスリルを採りに行こっか」
『ちぃ!』
「ひよちゃんかルフがもう一段階進化したら上に乗れるのかな?」
『ちゅう!?』
「ちゅう吉は僕の上か二人の上に乗れるでしょ?」
僕はちゅう吉を肩に乗せてルフの頭を撫でる。そのままひよちゃんの嘴を撫でる。
「今日は僕が久々に前に出るから三人は身を守る程度に頑張ってくれる?」
*****
「ミーティアスラスト!」
『ぎぃ!』
「スターダストプリズン!」
2本の剣は棍棒を振りかぶった鬼の腕を切り落とす。
「メテオアッパー!」
振り上げると同時に飛び上がる一撃は鬼の顎をかする。しかし直撃ではない。そして
「メテオインパクト!」
『ぎぎっ⁉︎』
回転しながらの斬撃、そこからの切り上げ、そして顔面への振り下ろし。そのまま着地して
「ダブルテンペスト!」
僕は2本の剣を背中の鞘に収める。腰にも一応木の剣二本が常備されている。換えよう換えようとは思っていたけど機会が無かった。
「使い切らないで物を捨てるのは嫌だからねっ! ソードリバーサル! ダブルサイクロン!」
2本の剣で振り下ろされる棍棒を受け流して左右からの二閃、振り切った状態から戻しての二閃、体を回転させて二閃、反対回転からの二閃、地面を蹴ってバク転しながらの二閃。着地してすれ違うようにして二閃、振り返りざまに二閃、振り降しからの切り上げで四閃、左右からの二閃ずつで四閃。そして
「はぁっ!」
クロスする斬撃からの交差点への突き。それでモンスター、鬼の頭領の体力は全損した。
「……やっぱり長いスキルより短いスキルを繰り返したほうが攻撃は早いかな? それと目が回らないよね」
ため息を吐いて
「ダブルグリザイユ!」
『ぐぎ!?』
「ダブルシアン!」
灰色の斬撃から蒼い斬撃。二刀流重攻撃だからこその重い効果音。そして吹っ飛ぶ鬼。余りスキルレベルを上げていないから削りきれない。だから
「スターダストミーティア!」
飛び込みざまに七閃。ようやく全損は出来たけど……
『ちぃ!』
「ひよちゃん?」
『うぉん!』
『ちゅう!』
「どうしたの? 2人も?」
3人が僕に近寄って慌てている。何かと思い、振り返ると
「プレイヤー?」
「助けてぇぇぇぇ!」
「モンスターに追われているんだろうね」
『ちぃ?』
「トレインかな?」
「そこのプレイヤーさぁぁん! 助けてぇぇぇぇ!」
僕はひよちゃんたちを見て
「やるよ!」
『ちぃ!』
『ちゅう!』
『うぉん!』
走る。元々僕がいた方向から駆けて来る女。そのプレイヤーの背後からたくさんの鬼が。いくらダンジョンのモチーフが鬼ヶ島だからって……
「スターダストスプラッシュ!」
『ちぃ(アイススラッシュ)!』
『ちゅう(ウィンドスラッシュ)!』
『うぉん(ブラッディクロス)!』
そこから先は一方的な蹂躙だった。そして
「大丈夫?」
「……はい、助かりました」
「こんな場所に来るなら装備は整えたほうが良いよ」
「はい、はっきりと自覚しました」
その鈴のような声の主は銀髪の……でかい女の子だった。捥げろ、垂れろ、萎め。
「あの……そんなに睨まないでください」
「……睨むつもりは無かったんだけどね」
2本の剣を納めて
「何でこんな場所に来たの?」
「それ、あなたがってもしかしてアリアさん!?」
「……何? 知っているの?」
「だって有名ですから」
そうなの?
「ま、どうでも良いけどここから離れるよ。すぐにまた鬼がリポップするから」
「そうですね」
*****
「君の名前は?」
「私の名前はエミリアですって何でそんなに睨むんですかぁ!?」
「エミリア……ううん、違うね、人違いだ」
僕たちの妹と同じ名前だけど違うさ。
「それでエミリアはどうしてあそこにいたの?」
「新実装されたダンジョンには行きたくなるのがゲーマー魂ですよ」
ふふん、と胸を張るな。揺らすな。
「最近までテストで入れなくて入ってみたら新しく出てるって知ったんですよ」
「あんな旨みの無いダンジョンによく言ったもんだね」
「え」
「あそこは鍛冶屋スキルがあってギリギリ行っても良いくらいの価値だから」
僕の言葉にエミリアは絶句。
「そもそも金棒をインゴットにしても鋼鉄だからミスリルに劣るし地味にモンスターが強いからね」
「……マジすか」
「レアドロップも作った方が性能良いし」
エミリアはカウンターに突っ伏した。
「それよりも僕が有名なのはなんでかな?」
「そりゃもちろんこのゲームの最強プレイヤーですからね」
「そうだね。僕は最強だからね」
するといきなり
「私に武器を作ってくれませんか?」
「……そりゃ構わないけどさ、お金はあるの?」
「大丈夫……だと思いますけどどれくらいなんですか?」
「最低でも10M」
「げ……足りるけど……」
「好きにしなよ。僕は基本的にいつでも多分カーマインブラックスミスにいるから」
「不正確過ぎませんか……」
エミリアはため息を吐いて
「もう少しお金を貯めたら頼みに来ます」
「うん、それが良いよ……あ、今日みたいに無茶はしちゃだめだからね」
「さすがに懲りましたよ」
そう言ってエミリアはカーマインブラックスミスから出て行った。
*****
「エミ~!」
「お姉ちゃん!?」
「あらあら、アリアちゃんは今日はエミちゃんと百合百合なのね~」
「お母さん、とりあえずテーブルに運ぶよ」
エミを抱きしめて堪能した後
「お母さん……これは何?」
「茄子の刺身よ」
「……こっちは?」
「茄子の茄子炒めよ」
「これは?」
「茄子の茄子漬よ」
「あのね、お母さん。ご飯はバランスよく作ったほうが良いと思うんだ」
「私もそう思うわよ。だから毎日朝昼晩別の物でしょ?」
間違ってはいないけど否定したい。何とか我慢して
「お父さんは今日は遅いの?」
「もう少しで帰ってくるって言っていたから待つ?」
「そうだね。お父さんも一緒に食べようか」
「そうね」
「そうだね」
このとき3人の気持ちは同じだった。巻き込もう、と。
「ただいまーってあれ?」
帰ってきたお父さんが私たち3人の眼光に怯んだのはみなかった事にしておこう。
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