第42話

「ただいまー」

「お帰り。昼ご飯は何かな?」

「炒飯、ちゃんとアリアちゃんとエミの分もあるよ」

「はーい」


私はログアウトして部屋から出る。そして一足先にログアウトしていたシェリ姉とリビングで入れ違いになる。そして


「午後からはシェリ姉とマモン、セプトと私だよね?」

「そうよ。急がないで良いってみんなは言ってたからね」


*****


「リンクイン」


私から僕に思考回路が切り替わる。そして


「お帰り。後はリョーマだけだな」

「リョーマは自分でご飯を作るのかな」

「さぁ?」

「落ち着いた雰囲気があるからきっと料理は得意だろうな」


シエルとセプトの言葉に頷く。すると


「リョーマがいないけど先に決めちゃおっか。私かセプトかシェリちゃんかアリアちゃんの誰を最初にするか」

「それなんだけどさ、僕は最後で良いよ」

「んー、そうね、私が最初にしてもらっても良い?」


シェリ姉の言葉にみんなが頷く。残りはセプトとマモンだ。


「私は飛竜系にしたいからシェリちゃんと同じタイミングで行けるから」

「……と、すると俺が三番目か」

「そうね。多分問題無いけど準備はしておいてね」

「あ、ひよちゃん」

『ちぃ?』

「もう横取りしちゃダメだよ?」

『ちぃ⁉︎ ちぃちぃ!』


リョーマの蛇姫とシエルのリザ、どちらもひよちゃんが助けそうになっていたから。しかし


「このままだとひよちゃんたちが勝手にテイムモンスターを増やしそうな気がする……」

「それはそれで楽しそうじゃないか?」

「テイムモンスターの限界はまだ分からないのだろう?」


セプトの言葉に頷くと壁際の椅子が光り、リョーマが再ログイン。そして


「行くよー、場所は6個目の街。転移アイテムはあるよね?」

「あ、私まだ6個目の街に行けてない」

「シェリちゃん今どこまで?」

「4つ目」

「4つ目周辺には山があったな」

「ビックラットとソードリザードマンがいたな」


と、いうことで


「シェリちゃん、動きを止められる?」

「水魔法だけだと難しいから他の属性も取った方が良いよ?」

「うーん……ひよちゃん、お願いしても良い?」


シェリ姉の言葉にひよちゃんは僕の目を見て……飛ぶ。そしてダメージの低い範囲スキル、アイスフロアで足を止める。


「……ファイアーボール」

『ぎぎ⁉︎』


シェリ姉はゆっくりと慎重に氷を溶かす。そしてあっさりと仲良くなった。


「シェリ姉のネーミングセンスが試されるね」

「そうね……アルカ、あなたの名前はアルカよ」

『ちゅう?』


外見はちゅう吉と一切変わらないアルカを手の平に乗せてシェリ姉は微笑む。


「アルカ?」

「理想郷アルカディアでは長いでしょ?」


よく分からないけどそう言う事らしい。そう思った瞬間、頭にひよちゃんたちが帰還。


「こっちも終わったよ」

「そっか。後はセプトだけだね」

「アリアちゃん自身を忘れているよ?」

「……それがさ」


ひよちゃんたちが頭から飛んで辺りを見回している。


「テイムするモンスターを探しているんだ。そして多分お目に叶ったら僕のテイムモンスターが増えると思う」

「あー、そうね。良い子たちだね」

「そうだね」


僕は苦笑して


「セプトはどんな子が良いの?」

「……鳥だな」

「鳥?」

「ドラク○のIIIのラー○アみたいに乗ってみたい」

「ちゅう吉みたいに?」

『ちゅう?』

「そんな感じだ」


つまり鳥系をテイムしたいと……鳥かぁ。


「引っこ抜こう」

「え?」

「引っこ抜くの?」

「何をだ?」

「どこで御座るか」


その結果


「おお〜、かわすねぇ」

「セプトも中々抜けなくなるまで刺さる子がいなくて困っているね」

「かと言って攻撃しないしね」


セプトは頑なに回避し続ける。

ひよちゃんは僕の太ももの上で毛繕い、ちゅう吉は眠っている。

ちゅう吉も経験値がたまっているのでカーマインブラックスミスに帰ったら割り振る予定だ。


「……なんとか出来たな」

「お疲れ」

「最後はアリアだ。何をテイムしたいんだ」

「僕は……そうだね、狼?」

「狼って……」

「どこのエリアにもいるよな?」

「うん、サンドウルフさんこの辺りにいるね」


みんなで山を降りて蝶から逃げて


「ラミアは拙者が「ダブルラッシュ!」

「スプレッドアロー!」

「デュアルスライサー!」


道中のモンスターを切り倒して


「狼ってやっぱりカッコ良いよね」

「そうだな」

「それじゃ僕たちがやるから」

「はーい」


ひよちゃんとちゅう吉、僕の3人でサンドウルフに相対する。突進して爪を振り下ろすのを回避して


「ひよちゃん」

『ちぃ!』

『ちゅう(ウィンドボール)!』


ひよちゃんの嘴による突きとちゅう吉の魔法で狼は驚き、逃げようとした。だけどその方向には僕がいる。それを何度も繰り返した結果


『わぉん!』

『ちぃ!』

『ちゅう!』

「……ブーメランの音楽隊?」

「多分ブレーメンの音楽隊かな?」


マモンの言葉にそんな気もしたので頷いてもふもふふかふかな毛皮に頬を擦り寄せる。


「その子の名前は?」


みんなはログアウトした。今は僕とマモンだけがカーマインブラックスミスにいる。


「ルフ」

「ルフ……ウルフから?」

「うん」

「やっぱり安直だと思うなぁ」


3人に文句を言われてマモンは苦笑い。そして


「それじゃ私はこの子をレベリングしてくるから」

「うん。また今度」


マモンが出て行ったのを確認してちゅう吉のステータスを開く。そして経験値をダッシュスキルと風魔法のスキルに振る。


「ちゅう吉、魔法系と戦士系のどっちになりたい?」

『ちゅう……ちゅ(ウィンドフロア)!』


いきなり風を範囲に起こす魔法。これは


「魔法系に進みたいんだね?」

『ちゅ!』


二足歩行からの親指を立てるちゅう吉。とりあえずマジシャンラットに進化させる。そしてスヤスヤと眠るちゅう吉をベッドに入れる。


「ルフの経験値も割り振るよ?」

『うぉん!』

「ルフの適性は炎と素早さ……うーん」


魔法系に進ませるのも良いけどすでにひよちゃんとちゅう吉が魔法系と言って差し支えない。だから


「戦士系にしても良いかな?」

『うぉん!』


尻尾バタバタルフは元気よく吠えた。だから頭を撫でて素早さを伸ばす。ステータス系なら次点がstrなので戦士系にぴったりだ。


「それじゃ今日はこれくらいにする?」

『ちぃ⁉︎』

『うぉん⁉︎』

「……ならどこに行くの?」

『ちぃ!』


ひよちゃんは僕の頭の上に留まって鳴く。するとルフが頷いた。


*****


テイムモンスターの限界は3体。だからこれ以上は増えないそうだ。


「ほら、ファイアーウルフが来たよ」

『ちぃ(アイスボール)!』

「ルフは僕の近くにいてね。守るから」

『うぉん!』


ルフは尻尾をバタバタさせながら歩く。そしてひよちゃんは僕の頭の上で固定砲台をしている。何かがおかしい気もするけどね。


「ひよちゃん、ルフを守れる?」

『ちぃ!』


その言葉に頷いて地面を蹴る。そしてファイアーウルフ、ファイアーリザードマン、ファイアーバタフライ、ファイアーゴブリン、ファイアーオーガの団体に突撃する。そして跳躍、輪の中に飛び込んで


「ダブルテンペスト!」


怒涛の勢いで放たれた連撃は一体たりとも残さずに全損させた。

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