第19話

「アークスラッシュ!」


2連撃。ゴブリンの体力を削り取り


「そろそろ大会の登録が始まる頃だね」


剣を背中の鞘に納めて街の、最初の街に行く。そしてさっさと登録して……初戦は最後だ。じっと待つのも良いけど


「……鍛冶屋のスキラゲしとこ」


*****


『diabolos:アリアのおかげで大分儲けたぜ』

『Aria:トトカルチョでもしていたの?』

『diabolos:正解』

『Aria:ふーん』


僕は魔王とのチャットを打ち切って


「かつての最強はもう良いや。傘下は誰もいないけど最強に至らせてもらうよ」


*****


「一回戦と二回戦と三回戦がサクサク過ぎてどうにもならないや」

「あのね、普通は慎重に行くんふだよ?」

「マモン、僕だよ?」

「あ、そうだったね」


間の休憩時間、僕は少し自分の工房を持ちたいとマモンに相談していた。すると


「んー、三つ目の街かな? 確かその辺りから物件が買えたり土地が買えたり建物を建てたり出来るようになるよ?」

「これが終わったら最速で向かうかな」

「それとあと五分くらいでシェリちゃんが来るよ?」

「もういるけどねー」


ギュッ、と背後から抱きしめられた。慌てて手足をバタバタさせるも


「うわ、この剣邪魔ね。外して良い?」

「ダメ!」

「うふふ、美少女二人の百合……眼福」

「マモンって本当にその趣味があるの⁉︎」

「うふふふふ」

「怖いよ⁉︎」


僕は慌ててメニューを開いて転移して暗い部屋に。ゼエゼエと息を吐いて


『sheril:大会の様子は見とくよー』

『Aria:止めて』

『sheril:可愛い妹の晴れ舞台でしょ?』


僕はそれにため息を吐いて


『Aria:僕の勇姿を見ててね』

『sheril:もちろん!』


トーナメント表を表示して眺める。トップ4に入っている。ここからは激戦だ。そして


「セプト、また君と戦えて嬉しいよ」


他にはシエルってのとナヲフミってのがいる。

ナヲフミとは有名Web小説の主人公。盾の勇者の名を借りているんだ。盾使いだろう。

だけど


「セプトがシエルに勝てるかな?」


さっきまでの試合を見ていたけどどうにも両手剣をぶんぶか振り回す女の子だった。相性が悪い。それは僕もだ。


「……時間だね」


転移して辺りを見回す。ここは廃墟の一種、廃城だ。

そして盾の勇者は視界にいない。どこにいるのかな。


『START!』

「ホーミングシールド!」

「え?」


近くの柱の陰から飛んで来た円盤のような盾を慌てて柱の陰に飛び込んで回避する。弧を描く軌道は受け止め辛い。


「ちっ! 外したか!」

「……そこかな」


僕は声の出処と盾の戻っていった方向から大体の位置を割り出す。だから剣を抜いて


「っ!」

「ちぃっ! シールドバッシュ!」


僕の進んだ方向で間違いなかったのか盾を構えたナヲフミが。そして僕の顔を狙って盾を突き出したけど


「それはもうセプトから学んだ!」

「なにっ⁉︎」


突き出される盾を正面から


「スターダストスラスト!」

「ぐ……シールドバリア!」


盾を中心に光の膜が張る。それに僕の剣はぶつかるが


「その程度じゃ僕の剣は止められない!」

「ぐ……あぁぁぁ⁉︎」


光の膜を突き破り、剣は胴を切る。一撃じゃ終わらない。だから


「スターダストリープ!」


今の僕が最高だと思うスキルを放った。もっとも最適という意味で。

飛び込んで袈裟懸けに。切り上げた勢いでバックステップ。そしてすれ違いざまの一撃。そのまま振り返って剣の腹によるカチ上げ。そして飛び上がり


「せゃぁぁぁっ!」

「くそがぁぁぁ⁉︎」


最後の二撃で体力を削りきった。

合計6連撃だ。一段スキルのリープと二段スキルのスターダストを組み合わせるのはリープを限界ギリギリ、9まで上げて初めて出た。もっとも今ので10になったから


「『流星』……二段は星関連なのかな」


呟きながらセプトとシエルの試合を見る。セプトの盾と斧は両手剣を弾くがシエルはそこから連続で攻撃する。スキル任せではなくステータス頼り……。

セプトはあの恐るべき反応速度で防御してカウンターを仕掛けるが


「カウンターをカウンター……反応速度の問題じゃない。もっと他の何かが凄いんだ……動体視力?」


それも反応速度だ。……悩んでも答えは出ない。それに


「彼女と次に戦うのは僕だ」


セプトは必死に凌いでいるがすでにジリ貧。次第に防ぎきれなくなり


「……またいつか、戦えたら良いな」


彼とは良きライバルになれる気がした。


*****


「……君はシエルで良いんだよね?」


名前の読み方に自信が無いので確認すると頷かれ、僕の体を眺めて再び頷いた。


「あなたはアリア?」

「そう、僕がアリア」


カウントダウンは決勝戦だからか1分ある。だからのんびりと話す。


「あなたのプレイスタイル、私と正反対だよね」

「そうだね、僕は連続スキルを使って」

「私は自分のステータス頼りの一撃を」

「セプトとの試合を見たけど正直驚いたよ」

「あなたこそ華麗な連続スキルだったじゃない」


カウントダウンが1桁に。そして


『START!』

「ショートリープ!」

「甘いっ! なにっ⁉︎」


ショートリープ、リープ系の距離を短く威力を高くしたスキルだ。だから振り下ろされた両手剣の側面を弾いて


「ヘヴィブラスト!」

「はっ!」


僕の放った一撃は両手剣に受け止められる。凄まじい膂力(str)だ。

スキルの余波でダメージを受けながらもニヤリと笑って


「わわ⁉︎」

「ほーむ……るぁん!」


振り抜かれた。ダメージは小さい。だけど着地を意識したら話は別だ。だから


「アークヘキサゴン!」


衝撃を殺すための6連撃は地面を抉る。とりあえず体勢を立て直してポーションで回復。


「出鱈目なstr……」

「お、見つけた」

「見つかった」


鉄の剣をしっかり構えて


「アークブラスト!」

「バスタァァァァァ!」


え、と思う間もなく吹き飛ばされた。2連撃は放った。なのにそれを上から打ち破られた。


「うわ、体力が……あんまり減ってない」


スキルか武器か、他の何かの要因で攻撃力が低いのかな?


「ほら、おいで」

「ミーティアスラスト!」

「え」


瞬時に背後に回り込んでの一撃。それに反応出来ないシエル。やれる、そう思ったけど


「ホリゾンタル!」

「げ、ソードパリィ!」


吹き飛びながらも対抗策を講じる。ミーティアスラストはクールタイムが長い。乱発出来ない。だから


「スターダストリープ!」

「くっ」

「はっ!」

「あっ」

「せいっ!」

「んっ」

「せやぁ!」

「あぁっ」

「とりゃぁぁぁ!」

「ぁああんっ」


何だか悪寒がするが……削りきれなかった⁉︎


「嘘だ⁉︎」

「危なかったけどなんとか耐えたよ」


僕はそれに驚きながら


「どうして今のを耐えられたの?」

「ギリギリでポーションをオブジェクト化したら剣で砕かれて回復しつつダメージを受けたの」

「……うへぇ」

「嫌な顔をしないでよ」


両手剣をしっかりと構えたシエルは笑いながら


「あなたが最強って名乗る理由が分かった気がする」

「え?」

「強くありたい、誰にも負けたくない」

「……」

「だからこそ自分の力を誇示出来る大会に出場したんでしょ?」

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