碧眼が見た世界

星治

第1話「誘拐された少年」

「藤音さん、」

聞きなれた声、もうあまり自由が聞かない身体をその声の方に向ける。

「アイルズか」

その声の主は私の大事な友人の一人だ。

年老いた私に対し彼は出会った時と変わらない相変わらずの美男子だ。


「また日記を読んでたの?」


ニコニコ笑って私の横で胡座をかく。

「そうだ」と返せば「そう」と言ってまた彼は笑う。


「この年になると思い出に浸ってしまうな、まあ、この不自由な体ではそれしかすることがないのだがね」

私は近い内に死ぬだろう。私は病ではないのでとても健やかに、痛みもなくあちらへ逝ける。

そう、苦しい思いをして逝ってしまったあの子とは違って。


「もう、藤音さんはすぐそうやって自分を責めるんだから!」

自然と暗い顔になっていたのだろう、アイルズは私の額にデコピンをかまし「年取って余計酷くなった?」と半ば呆れ気味に言う。アイルズの言う通りかもしれない。


「で、暗い話はそれまでにして、どこまで読んだの?」


話題を変えようと、アイルズは私が開いている本に視線を移す。


「私とエリオスが出会った頃に差し掛かったよ。」


私が本を指させば、「へぇ、僕も読もうっと」と言って本を覗きこんだ。

私よりかなり年上の筈だがそんな雰囲気は感じさせない。むしろ子供の様な無邪気さにおいては、幼少期の私ですらかなわないと思う。それは出会った頃と変わらず、今でも失われることなく現在に至っている。彼の元々の性質なのだろう。


私も続いて本に視線を移す。

先程までは業務報告のような、いい狩場を見つけた、魚が取れた、と言った短文ばかりだった。だが、それ以降の記述にはびっしりと文字が書かれていた。


僕は誘拐された。だけど、藤音さんという人が僕を助けてくれた。







あぁ、そうだ…








「真っ暗、」


足首と、後ろ手に手を縛られ、身動きが取れない状態の少年。名前はエリオス・ロロフィーネ


「いたっ!」


岩道にても差し掛かったのだろう、エリオスが乗っている馬車の荷台はがたがたと揺れており、大きく揺れた拍子に頭をぶつけた。それでも馬車は揺れ続けていたが、次第に揺れは無くなり、やがて馬車は止まる。

暫くすると、馬車に光が差し込み、その先には男がいた。

鎧を身にまとう、金髪の騎士、と言った表現が的確だろうか。

その騎士は縛られているエリオスを抱えて城のの裏口らしき小さな門に向かっていった。

ちなみにエリオスを抱えるとき、騎士がボソッと「重い」と呟いたのだが騎士はそれを無視して歩みを進めた。


「さて、君には相応しいドレスを与えなくてはね」


「は?」


白と金で統一された部屋。明らかに特別な部屋であることは間違いない。

皺のない、いかにも高級そうな肌触りの良い生地を扱ったベッドにエリオスは放り投げられた。

あまりの雑な扱いに抗議の一つでもしてやろう、と思った矢先でのその言葉である。

エリオスは思う。確かに髪は長いけどいくらなんでもそれはない。だけどこの男は何と言った?ドレス?ふざけるのも大概にして欲しい。

エリオスが心の中で悪態を吐いていると男が口を開いた。


「君が男と知っている上での言葉だよ」


本気か、エリオスは疑いの眼差しを受けるが、相手の瞳は真剣そのものだった。


「私もいたいけな少年に強要したくはないのですが、上司の命令なのでね。」


有無を言わせない、と主張していた冷ややかな瞳は、次の瞬間にはにこり、と笑みを見せ先ほどの好青年に戻る


「これを身に着けるんだ。」


エリオスは思わず顔が引きつる。

渡されたのは…何と言うか、女の子が身に着ける、いや、女の子ですら身につけるのを躊躇うほどの薄い生地をしたヒラヒラの純白のワンピース。しかも丈が短い。

ちゃっかり下着も用意されているが、あんなのでは出てはいけないものが出てしまう。何がとは言わない。

正気かと呆れてものも言えない。だけど、目の前の男の目を見たら本気なのが伺える。

そして


「私の前で着替えるのが嫌でしたら外に居ますね」


と、部屋を出ていってしまった。

僕が逃げるとい思わないのかな。あまりにもあっさり一人にされてしまった。たとえここが密室でも。

一応部屋を調べてみる、だけど、特に何もない。出口は1つ、先程の男が扉のすぐ向こうにいるあそこだけ。

強行突破する?それは厳しい、相手は剣を持ってたしある程度武術を嗜んでいるはず。

腕には自信があるけど流石に丸腰じゃ…いや、でも勝てる。

とはいえ狩りに逃げることが出来たとして相手はおそらくこの建物の構造を把握しているだろうし、それに対し僕はここが地下なのか、それとも3階、4階、何階にいるのかすらもわからない。仲間を呼ばれて追いつめられたら少しまずい。

そう考えると下手なことはしない方がいいだろう。


エリオスは溜め息を吐き、その純白のワンピースに手を伸ばした。





「…」


目の前に鏡があるけど僕は自分を視界に入れないように目を逸らす。

ほぼ女性物の下着に近い服を身につけた自分の格好なんて見たくない。

憂鬱に浸っていると扉を開く音が聞こえた。着替えてる途中だったらどうするんだろう…


「…」


男は黙っている。無言なのが一番傷つく、せめて鼻で笑うとか、僕は消えたいという思いをぐっと堪え、口を開く


「これで満足?」


男ははっとして、言葉を続ける


「あ、あぁ、そうだな…」


心なしか頬が赤く染まっているように見えるのは気のせいだと思いたい。


「おほん、では」


ひとつ咳払いをして、男が手をかざせば。怪しい光が放たれ、僕はそれを防ぐ間もなく意識を手放し、体は支えを失ってベッドに倒れ込んだ。


騎士はエリオスが意識を失っているのを確認すると、再び部屋から出ていった。




少年をあの様な格好にさせ、この様な部屋に置くことが何をするかだいたい予想はつく。

今からこの部屋に来るであろう少年少女愛好家、その人物を始末することが私の仕事だ。

基本は幼い子供から10代半ばくらいまでの少年少女達を好き勝手する不埒な輩。

それが依頼主からの情報だ。そしてあのエリオスと呼ばれていた少年もその被害者の一人。

本当はここで助け出したいのだが、標的を始末しなければならないので、申し訳ないが彼には囮になってもらおう。


暫くすると部屋の扉が開き、その先にはいかにも、な雰囲気を漂わせた男がいた。


「ウォンス卿、こちらでございます。」


騎士がベッドに案内する

部屋に入り、少年を見るとウォンス卿と呼ばれた男は感嘆を顕にした。

よほどあの少年を気に入ったのだろう。

興奮を抑えきれないのか、気持ちが先走り、足がもたついている。


さて何時殺る、今か?


私は焦っていた、あの騎士と近距離で一騎打ちになっては私に勝ち目はないだろう。

どうにかしてあの騎士との直接対決は避けたい・・・

そうこう考えていると、男はそうだ、と騎士の方に向きなおす。


「この愛し子を飾りたい、せっかく美しい髪をしているのだ、このままではもったいない。」


男はまだ意識を失ったままのエリオスの髪留めを解き、さらり、と金色の髪をすくう。

今すぐに殺してやりたい、男がしたのはただ髪をすくっただけ、だが私にはその行為だけでも男を汚らわしいものだと思わせた。

いたいけな少年を好きにしようとしている、その現実が男を一層汚いものと自分に認識させるには十分だった。

男は騎士に命令して持ってこさせ、美しい装飾が施された数々の髪留めをこれでもかと吟味している。

気に入ったのがあった様で、機嫌良くそれを少年の髪に留めた。

その姿に満足した男は改めて、とエリオスに這いよる。


今だ、男があの子に触れる前に、と短刀を構え、飛び出そうとした。

が、それはうまく行かなかった。


「な、に…」


少年が目を覚ます。

駄目だ、もみ合いになってもし少年に当たってしまったら…!そう思ってしまった私の思考と手は止まってしまった。


「っ…!」


少年も自分の危機に気付いたのだろう、迫ってくる男を見て恐怖の表情になる。

後ずさろうとしているが、騎士の魔法がまだ残っているのか上手くいかないようだ

騎士は、相変わらずその様を見ている。


「やめ、っ、」


男がついに少年に触れた、少年は震えながらも抵抗し、男を、突き飛ばした。

男はみっともなく尻餅をつく。

拒絶されたくせに、性懲りもなく少年に迫る。よし、少年から離れた今なら万が一は起きない。騎士も、男を挟んでいては手を出しにくいだろう。

そう判断した私は男と少年の間に割り込む


「何者だ」


男はそう言おうとしたのであろう、だがその言葉は最後まで発せられることはなかった。

男の胸を一突きする刃。だがそれは私のものではない。では…




「無様ですね」


男に刺さったままの剣を、騎士が振えば男はベッドから落ちる。

男はまだ死んでいない。しぶといものだ、と何故か私は冷静に見ていた。

私が壁になっていたので何が起こったかはこの少年には見えていないだろう。こんな光景、見せるべきではない。私は少年に向き直り、目を瞑って耳を塞ぐように言う。。


「きさ、ま…!何故!」


胸を一突きされた男は声を荒らげる。部下を呼ぶつもりか男が叫ぼうと息を吸い込んだ時、騎士はもう一度剣で男を突き刺したためそれが叶うことはなかった。


「何故?いたいけな少年に手を掛けようとする悪人を始末しただけですが?」


「だが、今、まで…」


「えぇ、今までなら見ていることしかできなかった、が、今回は違う。貴様の蛮行もこまでだ、よく見ろ、抵抗もできず惨めに殺される自分の様を!恨むなら己を恨め、自分が辱めた子供を側に置き、殺したいほど恨まれてるとも知らず、成長したその子供を自分の部下にした、愚かな自分をな!」


何が起きているというのか、部下の反逆?いや、騎士の言葉から察するに彼は今からこの少年がされるはずだった事をされ、ずっと殺す機会を伺って部下になっていた様だ。

相当の恨みがあるようで、何度も剣を男に突き立てる。男が既に絶命しているにも関わらずだ。

その現場はとても凄惨なものである。


「もうあの男はいない、だが私が良いと言うまで目を開けてはダメだ」


「耳は?」


「耳は、構わないが…」


多分

剣を突き立てる音がなくなった。大丈夫だろう


「さて、」


満足したのか騎士はこちらに向き直る、鎧には血がベッタリと付着し、髪にも、顔にもかかっている。

どれだけ激しく刺したんだ…と思ったが今はそれどころではない。


「暗殺者、君のおかげで私はみんなの無念を晴らすことができた」


先程までの殺意に満ちた顔ではない、清々しい、晴れやかな顔をしている。


「あぁ、でも悪いな君の仕事を奪ってしまって。」


いやいや問題はそこじゃない。

騎士は絶命した男の頭を踏みつけ、遺体を蹴って転がす。どれだけ恨んでいたのだろう、それが軽いものではないことは騎士の行動が物語っている。


「いや、というか、えっ、と、良いのか?君は主…に当たる人を殺したんだぞ…?バレたらどうするんだ…」


これだけ恨んでいる人間の事を主呼ばわりしていいのか引っかかった。

それより、この状況でこの騎士のこの後を心配してしまう自分の神経、我ながらしぶといものである。


「あぁ、それなら、ウォンス卿はお戯れの間に何者かに殺害され、駆けつけた時には既に…と捏造するが?」


この騎士、とても肝が据わっている様だ。


「だからさっさとその少年を連れて逃げな、そうだ、殺した証拠品でもいるか?」


「あ、あぁ、なら血液を少し…」


私は騎士に言われるまま男に近づき血液を紙に染み込ませる。

これでよし、と立ち上がり騎士を見ると何かを投げられた。


「この坊ちゃんの服だ、その格好で、っていうのも可愛そうだがここから一刻も早く離れたいだろう?」


にっ、と笑ったその顔は爽やかな好青年。恨みをはらせて相当スッキリしたのだろう。

私は少年に声をかけ、抱き上げる。…見た目より重い、筋肉か?と思ったがまぁ、それは今気にしなくても良いだろう。

騎士に別れを告げようとした。


「俺はナリム・スプリーン。今回のお詫びだ、もしこの国で困ったことがあれば頼ってくれ、できる限り力になってやるよ。今から言う俺の頼みを聞いてくれるならな」


まぁ、この青年は根は悪い人間ではなさそうだから頼みくらいなら、と頷く。


「それは助かる!じゃないと俺が殺人犯になっちまうからな!まぁ事実だけど!」


ははは、と笑っているが吹っ切れすぎだろう。大丈夫か、と思わず心配になった。

私の心配を他所に目の前の騎士は笑っていたが、ふと真面目な顔つきになる


「頼みってのはな・・・嫌かもしれないが姿を見られながら逃げてくれ」


「…」


ただ死体を発見したなら自分が疑われるかもしれない。だが、侵入者の私が逃げる様子をほかの誰かに見られたなら、自分から疑いの目は反れる。というのが大体の思惑だろう。


「構わないが、後のことは自分で何とかするんだな」


「おう、それくらいわかってるさ!本当にアンタには感謝しているよ!今までアイツを殺そうとしたやつは何人もいたが誰一人叶わなかった。あの男、あれで気配読んだりまあ、自衛本能が強いのか、この部屋に入る前に侵入者をことごとく見つけやがってその度に俺は始末をさせられてた。」


「アンタが初めてだよ、気付かれずに忍び込めたのはな。そのおかげで俺はようやくコイツを殺すことができたわけだ」


「?別に私が忍び込まなくても、殺す機会があったのでは?」


率直な疑問。


「言ったろ?侵入した奴はみんな死んだ。侵入者は『いなかった』ただ殺したら俺が疑われる。だからなかなか実行に移せなかった。…殺した奴らには申し訳ないと思っているよ」


表情を曇らせる。

私には関係ないので別に責める気も咎める気もない。何より暗殺をしようとしていた自分にそんな資格はない。


「っと、暗くなっちまったが話はおしまいだ。」


それだけいうと騎士は人を集めるために声を上げた。

人がこちらに向かう気配を感じる、逃げよう。


私は少年を抱えて走り出す。

道中、何人かが敵意を出して攻撃して来たがそれを軽く交わして出口まで駆け抜けた。


そう言えばナリムといったか、彼に名乗るのを忘れていたな、とそんなことを考えていると、気がつけば森を駆けていた。

夜でもう暗いが魔物の気配は感じないから大丈夫だろう。

少年の様子を伺う為に木陰にゆっくり下ろす。

やけに静かだったが、やはり精神的に堪えたのだろうか、と声をかけてみるが返事はない。

変わりに規則正しい呼吸が聞こえる。


この子も肝が据わっているな…


何はともあれ私はホッと胸を撫で下ろす。

夜は冷える、宿…と思ったが今あの街に戻るのは危険すぎる。なんせ貴族が暗殺者に殺されたのだ、よそ者はまっさきに疑われるに違いない。

ならば森を抜けるか…それでもいいが、宿がある町に行くには夜の道を抜けなければならない。単身ならともかく、寝ているこの子を連れては危険だ。

ならばやはり森で夜を過ごすしかない。

とりあえず体を冷やすと良くない、と着替えをするように少年を起こそうとしたが起きる気配がない。

だがこのままにするのも、ましてや私が着替えさせるのも問題がある。


強めに揺らす。ダメだ起きない…この子一度寝たら起きないタイプなのかどれだけ揺さぶっても起きない。

仕方ない…暖が取れるかはわからないがないよりはマシかと私の服をかけておく。

この子の服を勝手に使うわけにも行かないしな。


私は上の着物を脱いで少年にかける

一晩、何も起こらなければいいが、そうして私は周辺に意識を集中させた。



やがて夜が明け、朝日が昇る。

一晩気配を巡らせていたが、危険がなくてよかった。

少年は、と横を見ると目が合う。正直心臓が飛び出るかと思った


「…」


少年は真っ直ぐな瞳で私を見つめている。その瞳に恐怖心や警戒心は一切ない

仮にも誘拐されてあんな目にあったのだからもう少しだな、警戒心をだな…!

当事者でない私が必死になっても仕方がないと、呼吸を整える。

急に疲れを感じた、一晩一睡もせず神経を研ぎ澄ましていのだから当然といえば当然なのだが。


「あの、」


「ん?」


少年が口を開く


「お兄さん、ありがとう、それと、これも…」


少年はおずおずと、昨日少年に貸した私の着物を差し出す。


「あぁ、構わない。それより不快だったらすまないな」


清潔にしているとはいえ他人の着物をかけられている、というのを嫌がる人もいる。

私のお節介で不快な思いをさせていたら本当に申し訳ない


「ううん、お兄さんの服、いい匂いで何だか安心できた」


「はは、それはよかった」


いい子だ、そしてそう思ったと同時にひとつの感情が沸き上がる。


ほっとけない


私はお節介の自覚がある。それがもう思い切り疼いている。

そんな私の性格とこの少年の無防備さはそれを決定的なものにさせた。

それはさておき


「まず…着替えないか」


そう、少年はまだあの純白のワンピース姿なのだ。


「…着替える」


少年もあぁそういえば、みたいな顔をした。

マイペースというか何と言うか。

後ろを向いているから、と言って少年に背を向けると、もそもそと布を擦る音が聞こえた。


今のうちに仕事の報告でもしておくか、と先程血を吸わせた紙を取り出し、その紙に霊力を込めて依頼主の元へ飛ばす。

よし、これで無事依頼主に届けば依頼は完了だ。

そうこうしているうちに着替え終わっていたのか、少年に服を引っ張られた。


「さて、これからどうする?」


「家に帰りたい」


だろうな、彼はわけもわからず誘拐されたのだ。まだ幼いだろうに…

この少年を放ってはおけない、私はあることを思いついたので提案してみることにした。


「もし良ければ君を家まで送り届けさせてくれないだろうか。」


「…何で?」


うん、少年からしたらそう思うだろうな。

私は囮にしたことに罪悪感を感じた事と後は純粋に放っておけないと思ったことを正直に話す。話を聞き終わった少年は微妙な顔をして一言「律儀」と呟いた。

ははは、自覚はあるぞ


「君は1人で旅をしたことがあるか?」


「んー…多分ない」


「ここがどこかわかるか?」


「わからない」


「やはり送らせてくれ」


この世間知らずさというかこの無防備さは放っておいたらダメなやつだ…!

詰め寄る私に少年は渋る。それは嫌がっているというより申し訳ない、というニュアンスを感じさせた。


「お兄さんには助けてもらってるしこれ以上迷惑かけたくない」


どこまでいい子なのだろうか。


「私は君を囮にした。そして私は見ての通りお節介でね。迷惑だなんて微塵も思っていない。」


後暫く任務無いから休暇にちょうど良い。

私の言葉に少年は「それならお願いします」と丁寧に頭を下げる。それにつられて私も頭を下げた。

よろしく、と言おうとした矢先、あることに気が付いた。そうだ自己紹介していなかった。


「私は藤音だ、よろしく」


「僕はエリオス・ロロフィーネ。よろしく藤音さん」


私達は握手を交わす。そう、これが私達の出会いだった。




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