第2話 菌の鳥と境界の事情


芥子を練っていると、当然のように都鳥がやってくる。


彼らは挨拶もそこそこに、その細いくちばしで、見てきたこと、見てこなかったことをせわしなくおしゃべってくれる。


本当は納豆を所望しているのだが、私の工房では納豆を・・・する時には、菌を極力拡散させぬための呪結界を張ることにしているので、彼らは菌の気配を読み込むことが出来ず、仕方なしに芥子に反応してやって来るのである。


彼らは、どうやら豆糸で何かを作っているらしいのだが(はっきりとは教えてくれない)彼らの工房のある広い入りくんだ花崗岩の海岸で起こる出来事を聞くのは、結構楽しい。たまに嘘っぽい話も混じっているところなども、面白さを引き立てているように思える。


まあ、人界と人外境の境界では、いろいろと興味深いことが起こるものではあるが。


そういうわけで、我が工房では都鳥に配慮し、御田(関東煮)や熱い犬を食する時には芥子を出さぬようにしているのである

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