第3話 優秀、不断
-零-
夢は夢だから価値がある
-一-
「ん……」
急に感じたまぶしさに目を開けるともっとまぶしくなるのは、朝ご飯を食べないとお昼前に気分が悪くなるくらい至極当たり前の事で、だからと言って再び目を閉じて眠りに就くのは僕にとってはご飯を抜くくらい難しいことだ。頭はグラグラと揺れていて、気持ちはまだ寝ていたいけど一度目が覚めると二度寝が難しい体質らしく、仕方なく目を一度限界まで閉じてのっそりと体を起こした。
正直言ってひどく眠い。寝不足の時に感じるあの倦怠感が全身をくまなく支配してくれて、まるで泥の中にいるみたいだ。
(あー……そう言えば今日は土曜だっけ……なんで目が覚めたんだろ……あー洗濯しなきゃな……ダルいな……外出たくねぇ……なんでカーテン開けっぱで寝たんだろ……)
体を起こしてもまぶしさのせいもあってまぶたは中々開いてくれない。思いっきりでたらめな思考が頭の中を駆け巡って、最後に思ったのは今自分がとてもひどい顔をしてるだろうと言うことだ。
受験勉強で疲れてた時に撮ったせいで学生証の写真はひどく恥ずかしいものだった。髪も服も適当で、街中に貼られている指名手配写真の方がもっとマシだろう。可能ならば学生証を切り刻んでやりたいくらいだ。もちろんそんな事をしても後から面倒な事になるだけなので、想像するだけに留めておく。そして今の自分の顔は、それよりももっと悪人面をしてるだろうと本気で思う。
我が家とは言え、いつまでもこんな状態でいるわけにもいかない。眠いということは今の吐きそうなくらいダルい感覚が体にいつまでも残ってしまうということであり、そんな感覚は今現在だけで御免被る。目を覚まそうと頭をボリボリと音が立つくらい全力でかきむしり、思いっきりその場で背伸び。バキバキと、骨が折れてるんじゃないかと思うほどに盛大な音と共にやっと思考が落ち着いてきた。
「えっと、眼鏡は、と……」
ぼやけた視界で、手探りで眼鏡を探す。幸いにしてそれほど時間を掛けずして眼鏡を見つけることができた。ベッドの脇のテーブルの上に置かれていて、それを確認すると手を伸ばす。
「およ?」
ガチャ、という音と同時にそんな声が聞こえた。それに反応して振り向いてみると、どういう訳か女の人が立っていた。
手にはこれでもか、と言うくらいの大量の漫画本を抱えていて、びっくりした表情で僕の方を見ていた。仕方ないから僕も見返してみる。同じ様にびっくりした表情を浮かべて。ていうか、どちら様なんですかね?
「あー起きたんだねー、良かったぁ。いや、本当に焦ったよ! 全ッ然目が覚める気配が無いしさぁ、正直、やっぱ死んでんのかな、て本気で何度も思ったけどね、心臓の音はきちんとしてるし、ものっそい浅かったけど呼吸もしてたからさ、あ、やっぱ生きてるわ、て分かったけどね。全く! 生きてるんならさっさと起きなっ!って思っちゃうよね! そう思わない!?」
「え? ええっと、あの……」
「ん? ああ、これはね暇つぶしの漫画。だってチョー暇なんだもん。こんな狭っ苦しい部屋にいてさ、ずっと見張ってるのって結構拷問に近いところあるよね? 一秒たりとも目を離すなって上司様に言われちゃったらさ、下っ端のこっちは断れないし。大体なんでアタシ一人で延々と眠ってるヤツを見続けなきゃいけないのさ!?」
「いや、そんな事言われても」
「あっ! そうだ! 君の目が覚めたんならもうここにいる必要ないよねっ!? んじゃ早速他の人呼んでくるから大人しくベッドの上でボフボフジャンプでもしててねん!」
そう一方的に告げると台風の様に騒がしい彼女は跳ねるようにして部屋を飛び出していった。けど、ドアを開けきらないままに出ていこうとしたもんだから、ゴインッ、と素晴らしい音を立てて頭をぶつけていた。その表紙に持っていた漫画を床にばらまいてしまう。「あたた……」と恥ずかしそうに頭を撫でながら僕に手を振って今度こそ部屋から出て行った。
「よっ! ほっ! んたぁっ!?」
漫画を先に拾えばいいのに掛け声を上げながら漫画を飛び越え、一応僕の視界からは消えていった。直後に「ほああぁっ!?」なんていう声と一緒に何かにぶつかる音がしたけれど。当然相変わらず一般人でしか無い僕には彼女の様子を見に行く、なんて真似をする気などサラサラ無い。きっと関わらない方が楽しい人種なんだろう。
寝起きからいきなり疲れた。どうしてだか深いため息が口から零れる。
それはともかくとして、ここはどこだろうか。僕は部屋を見渡してみたけど、そんな事するまでも無く自分の家ではない事は分かる。
四畳半くらいの広さでコンクリート打ちっぱなしの壁。シミ汚れがあっちこちにあって、よくある話だけど人の顔みたいに見える。どういう訳だか蛍光灯は微妙に薄暗い。奇妙な気味悪さが漂っている気がする。たぶん僕の思い込みだろうけど。
置いてあるのはベッドとスチール製の無骨なテーブルが一つ。後は折りたたみ式のパイプ椅子が、一つはベッドの横に広げられていて、もう一つは壁に立てかけられているだけ。窓さえ無い。一つ広げられてるのはさっきの話しぶりから、きっと彼女がここに腰掛けていたんだろう。入り口一つに窓は無し。気が詰まる感じがするのは僕の気のせいじゃないだろう。狭くて暗い所は別に嫌いじゃないけど、かと言ってこんな場所に何時までもいたいかと問われれば全力を以て首を横に振らせてもらう。ここで寝てた人間が言うセリフじゃないけど。
装飾品が破滅的に少ないおかげで部屋の観察は一分持たずして終わってしまった。理由は知らないけど、僕の看病?をしていた彼女が床にぶちまけられた漫画を持ってきたのもうなずける。少なくとものんびり時間を潰す場所ではない事は確かだ。
ここまで考えはしたものの、結局ここが何処か、という今の僕の至上命題に対する答えは出てはいない。こんなインパクトの無さ故に逆にインパクトのある部屋を一度でも見た事あるなら忘れるはずは無いし、知らないということは当然部屋の情報からここがどこかを割り出すなんて芸当は、名探偵でも無い僕にできるわけも無くて。誰かに尋ねようにも狭い部屋に一人っきり。マシンガンの如く一方的にしゃべって出て行った女の人は帰ってくる気配は無いし、何より、寝起き直後の胡乱な思考からは脱出したとは言ってもまだ寝起き状態の頭でいろいろと考えるのも億劫だと考えてしまうほどには僕は面倒臭がりだった。
眼鏡を外してもう一度目を擦る。少し眼鏡が歪んでいる気がするけど、気づかない内にどこかで落としたかぶつけたかしたんだろうか。
「はよ帰ってこーい……」
寝転がって誰もいない天井に向かって呼びかけてみる。当たり前の話ながら、返事が戻ってくるわけも無い。人を呼んでくる、て言ってたから勝手に部屋から出ていって入れ違いになるのも面倒だし、そうなったら申し訳ない。
「退屈だ……」
立ち上がってストレッチをして固まった筋肉を解す。で、解すだけで終了。完全に手持ちぶたさ。天井を見上げて光量の乏しい電灯にうっすらと眼を焼かせる。そして体を後ろに倒して自由落下。脳内では夢でよく見る、マンションの屋上から落ちる映像を再生させる。
実際にそうなら僕はミンチだけど、今は背中にはベッドがある。絶対の安心と無念さを抱えて、安物スプリングの上に倒れこんだ。
「おっ?」
意外とスプリングがしっかりしている。予想に反して僕の体は心地良く跳ねてベッドに沈み込んだ。この部屋においてこれは破格だ。前言撤回。ベッドは安物じゃないらしい。
唯一の入り口を見る。足音は聞こえてこない事を確認。なればやる事はただ一つ。
「ふんっ!!」
意味の分からない声を上げながらベッドにダイブ。ぼいん、といい感じの音をさせながら体が跳ねる跳ねる。子供じゃないんだから、と思うがこれがまた意外と楽しい。いや、意外でも無いか。どうしてだかは分かんないけど、妙にハマってしまうこの行動。これは老若男女構わずベッドがあればやるはずだ!
上がって、下がって。上がって、下がって。また上がって下がって。
天井が近づいて遠ざかって、近づいて遠ざかって近づいてまた遠ざかる。
大した高さじゃないけど、僕は落ちてる。少しだけ上へと、手を伸ばせば別の世界に届きそうなのに届かない。触れられそうなのに触れられない。
落ちる瞬間に一瞬だけ感じる浮遊感。息が詰まる様な錯覚。それが病みつきになる。
何度もそれを繰り返す。繰り返し感じるカタルシス。その最中にリアルを伴った光景がまぶたの裏に浮かんできた。
どこか高い所から落ちる風景。それはビルの屋上だったり、階段の上だったり、建物の吹き抜けだったり。子供の頃から幾度となく見てきた夢の世界。だけども似た風景を僕は見た気がする。気がするだけかもしれないし、そうでないかもしれない。もし落ちたのならば僕はここにはいないはずだけども。
見たことのある景色に僕は記憶を探った。すぐ近くにそれはある。そんな気がした。
出てきそうで出てこないそんなもどかしさ。あるかどうかも分からないそれはきっと重要じゃないはずで、なのにどうも気になる。後、少し。後少しで出てくる。そんな予感がして、僕は体を上手く使って高く跳んだ。
と同時に部屋のドアが開いた。
「……楽しいか?」
「……いえ、そうでもないですヨ?」
高く上がった名残でボインボインと跳ねながら、そう女の人に嘯いてみる。あくまで退屈だったからです。決してこういうのが好きなわけではないです。
恥ずかしさにうっすらと頬が熱を持つのを感じながら頑なに僕は主張してみた。結果は火を見るまでもなく、というかむしろ火を点けるのを見られたくらいに明らかではあるけど、あくまで否定の主張は止めるわけにはいかない。止めたからっていってどうにかなるわけでは無いけれど。
僕の頭の中にある乏しい言葉を最大限に無駄に活用させて何とか弁解を試みるも、新たに入ってきた女性は「そうなのか?」と形だけは疑問形で、でもその表情はまるっきり信じていなく、逆に僕の主張など聞くに値しないとばかりにいやらしく口の端を釣り上げていた。ああ、ダメだ、この人は。もう自分の中で自分だけの答えを出してしまってやがります。
「いやはや、ああいう行為が好きなのは年齢性別性格問わないんだろうな。やはり聞くのと見るのとでは大違いだ。百聞は一見に如かず、とはよく言われるが、聞くのと見るのとでは情報の質に大きな差異があるのは当然だとは思わないか?」
「何を見聞きしてそう思ったのかは置いときますけど、それに関しては一部分だけ同意しておきたいと思います。そもそもがシチュエーションによって優劣は決まってくるでしょうから」
「なるほどな」
「それに、百聞の方が一見よりもよっぽど有益な時もあるでしょうし。人を見る眼が無い人の一見と観察眼の優れた人からの百聞、どちらが意味があるかは瞭然でしょう?」
「もっともな意見だ。しかし、結局は当人の中でどのように処理されるかが何を差し置いてでも重要になる、という意見はどうだ?」
「得た情報を、ただの情報の羅列と見るか、それとも意味のある情報を抽出して自分の中で処理できるか、という意味では肯定しますね。後者なら百聞も一見も得られる情報が異なるだけで意義という観点では甲乙つけ難い、とも思いますが」
「道理だな」
それで、とここで一度僕の方から話を区切る。こういった問答は好きな部類ではあるけれど、とは言え見知らぬ人と延々と話すのもどこか話しづらい。
「ええっと、失礼ですがお名前を伺っても宜しいでしょうか?」
「おっと、それは失礼したな」
女の人はもたれかかっていた壁から背中を離し、半開きだったドアを閉めようとする。が、閉じ切る直前ににゅう、と手が伸びてきてそれを遮った。
「ちょ、ちょ、ちょっ! ちょぉっと待ったぁ! アタシも一緒にお話したいんですけど!?」
ついさっき聞いた、かしましい声がドア越しに聞こえてくる。だけども女の人はまるで聞こえなかったかのように、それこそ綺麗さっぱりに脳に信号が伝わる前に接続を切断してしまったかのように極々自然な動作でドアを閉めていった。手ごと。
「痛いっ! 痛いっす! かなり痛いっす! ちょー痛いっすよ! マジで痛いっす! 指がちぎれんばかりに痛いっす!」
「お前のちぎれた指から出てくる液体の色は何色か知りたいんだ」
痛い痛いとどれだけ連呼するんだろうか、あの子は。そしてそれを聞いても平然としている女の人に恐怖を覚えたとしてもあながち間違った感情でも無いと僕は思う。
「誰がここに来ていいと言った? お前にはオフィスで待機しておけと言ったはずだったんだがあれは私の妄想だったのか? それとも私が口に出したと思い込んでるだけで実は音になってなかったとでも言うのか? ん?」
「言いました言いました仰いました! 仰いましたから力を緩めてーっ!」
「だったらどうしてここにいるんだ? 上司の命令は絶対だと十分に教え込んだと思ったんだがそれは間違ったみたいだな。そうそう、そう言えばついさっきも勝手にこの部屋から出て行っていたな。その時も私は『部屋を離れる時は誰かに連絡しろ』と伝えたはずだったんだがそれに関してはどう私に弁解してくれるつもりかな、悠?」
「だ、だってだって連絡したところで『今、忙しいから』とか言って誰も来てくれないんですもん! 大体、課長だってカメラで監視してるんだからいいじゃないですか!」
「当然だ。なにせ常にウチは人手不足だからな。ついでに言えば私も忙しい。カメラなんぞずっと見てられるか」
口調は淡々としていながらもその課長さんはドアを押し込めていく。相変わらず口元を釣り上げて笑いながら。指の方はすっかり紫色に変わっていってる気がする。
このままだと寝起きで指がちぎれ飛ぶ、なんてスプラッタな光景の目撃者になってしまいそうで、僕としてもそんな目撃はしたくないわけで。
「あのー、もう許してあげてもいいのでは……? 十分反省してると思いますし」
「して、本音は?」
「朝から惨劇は見たくないです」
そう言うと、それもそうだな、とつぶやいてようやくドアノブから手を離した。
挟まれてた方はというと、「ぬおお……」とうめきながら心底敬服して王に忠誠を誓った騎士のごとくかしずいていた。両手をプルプルさせながら。
「さて、話が途切れたな」
「そうですね。それで、えっと、何でしたっけ? ああ、自己紹介でしたね」
「そうなんだが、その前に私は君に確認しなければならない事がある。もちろん真面目な話だ」
「何でしょう?」
真面目な話、なんて言葉が出てくる辺り、やっぱり今までは遊んでたのか。
そんな事を思いながらも「真面目な話」に相応しく姿勢を正して、座り直して女性を再度見つめる。彼女はガシャンと椅子が上げた悲鳴を無視して座ると脚を組み、尊大な態度で僕を舐めつける様に下から上へと眼を動かしていく。上まで辿り着くと、細い目が僕を睨みつけた。
染めた様子も無い綺麗な黒髪は短くカットされて、やや紺色がかった黒のタイトスーツの中に全身を置いていて印象としてはやり手のキャリアウーマン、といった感じ。そういった女性は、僕の中では少し怖いイメージがあるけど、その例に漏れずこの女性も似た感じだった。可愛いと言うよりは綺麗と形容すべき容姿は、街中では間違いなく男だけで無く女の人でさえも振り向いてしまうだろう。その程度には美人で、だけど見た瞬間に射殺されんばかりに視線は鋭い。
怒っているのだろうか。その視線は、不幸な事に今は僕一人に向けられていて、部屋の温度が下がったような錯覚に陥る。さっき話し掛けてきたような気軽さは最早どこにも見当たらない。椅子に座り、テーブルに肘を突いて視線に射抜かれる僕は、さながら死を前にした罪人の様で、ひどく息が詰まる。
「単刀直入に聞こうか。貴様は何者だ?」
そんな僕がマトモに思考を働かせることができるわけも無く、その質問の意図を理解しきれず、視線を右へ左へとさ迷わせた。視界の先で、彼女の視線もまた僕のそれを追尾し続けているのを感じ、ますます僕は答えに窮する。人間にとって、いや生物にとって極当たり前の、呼吸をするという動作さえ忘れてしまったかの様に僕は空気に溺れた。
「あ、え、っと……名前は雨水鏡と言いまして……」
「そんな事は聞いていない」
何とか喉から搾り出したのは僕自身の名前、という何の変哲もない僕自身を表す記号でしか無くて、そしてそれすらもピシャリと一刀両断された。
「雨水鏡、十八歳。一九八八年十二月四日生まれ、出身は大分県大分市佐ノ崎町二丁目五ー三で本籍地は福岡県太宰府市岡出町一丁目四番。家族構成は、現在は母親一人で父親とは二歳の時に死別。その他兄弟はおらず親戚関係もほぼ皆無。この春の健康診断では身長一七二cm体重六一kgとやや痩せ気味だが至って健康。大学合格を機に四月より福岡県福岡市鳥海の木造二階建てのアパートに転居。性格は真面目で成績・素行共に優秀。友人関係も問題無し。教師からの信頼もそれなりに厚かったが人前を嫌がり、大人しいために特に目立った存在ではなかった。スポーツ歴は小学生時に剣道をやっていたが中学入学と同時に退会し以降の部活動歴はゼロ。趣味は特に無く、ネットや読書をして過ごすことが多いが運動自体は嫌いじゃない、とは本人の弁。まだ続けようか?」
そう尋ねてくるが僕は答えない。答えられない。
流れるように諳んじられた僕の情報に一切の誤りは無く、中学高校の通知表に書かれていた評価その他に到るまで詳細に調べられていた。全てが気持ち悪いほどの精度であり、恐らく僕に関することは徹底的に知られている事は、硬直した思考の頭でも容易に理解が可能だった。
だから「続けようか」と言われても「いえ、結構です……」としか返しようも無い。
なら僕に求められてる答えは何か。それだけ調べても分からない、僕自身の事。たぶん、いや絶対に僕以上に僕をこの人は知っている。そんな人に提供できる情報など僕は持っていない。
「なら、なら何を聞きたいって言うんですか?」
「おいおい、まだとぼける気か?」
その口調には更に険が込められていて、顔には笑みがうっすらと浮かんではいるものの、ひどく苛立っているのが分かった。おもむろに立ち上がって僕のそばに近寄ると吐息が掛かる程に顔を寄せて、僕の胸ぐらを掴み上げた。
「私は忙しいってさっき言ったんだがな。聞いてなかったか?」
「そ、そんな事言われても本当に何の事だか……」
「ならなんで一昨日あんな場所にいたんだ?」
一昨日、というキーワードに必死で僕は記憶を探る。一昨日といえば朝から普通に大学に行って、正祐といつも通りの掛け合いをして、後は家に帰って一歩も外に出ていない。「あんな場所」と言われても普段と違う場所に足を踏み入れた記憶は、記憶領域の端から端まで徹底的にさらっていっても、どこにも出てこない。だけども、知らない、と言っても目の前の人は決して信じてはくれない。
「課長」
どうすればいい、と頭を働かし始めたその時、落ち着いた声が僕の耳に入ってきた。
「寝てなくて苛々してるのは分かりますけど、落ち着いてもしかしたら本当に知らないんじゃないんですか? それか記憶が飛んでるとか?」
割り込んできてくれたのはさっきまで床で悶えてた彼女で、容姿や声はそのままだけどテンションはさっきまでと違って落ち着いていて、場にふさわしい真面目な表情をしていた。
課長さんは考える仕草をして、ようやく僕から手を離し、「面倒だな。悠、パス」と彼女にあっさりとバトンを渡した。
悠、と呼ばれた彼女はため息混じりの吐息を吐き出して課長に変わって僕の前に座る。
落ち着いた環境で初めて彼女の顔を正面から見た感想としては、課長さんとは逆に可愛い、という印象だ。助け舟を出してくれたせいか、彼女を見ると少しだけ落ち着いたみたいだ。そしてその落ち着いた頭で考えてみると、彼女の顔を何処かで見た気がした。よくある顔、というわけじゃなくて、確かに僕は見ている。じゃあどこで、という話になるけど、それを思い出そうとすると浮かんできた映像はあっけなく霧散してどうにも明確な像になってくれはしない。
「よしっ、じゃあ一昨日の行動を順に思い出してみよっか? 声に出しながら朝からね」
「あ、はい」
人懐っこい笑顔でそう言われ、僕はそれに素直に従う。そしてさっき思い返した内容を今度は声にして伝える。
胸ぐらをつかまれた恐怖が残っているのか、それとも記憶を辿りながらなのか僕には判別がつかなかったけれど、途切れ途切れながらも話し、彼女はそれに口を挟まず黙って聞いていた。
「……以上です。特に変わった場所にも行ってませんし、何かをした記憶もありません。というか、これって何なんです? まるで取調べみたい……」
悠さんの態度に落ち着きを取り戻した僕の頭の回転が元に戻ってくる。そして気づく。僕は明らかに何かへの関与を疑われていて、それを調べられてる。ベッドこそあるものの、圧迫感のある部屋や無機質なテーブルと椅子のみという構成はテレビの刑事モノで見る取調室にそっくりで、更には僕は監視されている、と言っていた。なれば、そういう事なんだろう。
課長さんの顔を見ると、課長さんは面白そうにニヤニヤとした笑いを浮かべていて、僕にはそれがひどく不快だった。
「何だ、今気づいたのか?」
「そりゃそうですよ。全く罪を犯したことが無いとは言いませんけど、少なくともこんな取調べを受ける犯罪を犯すほど落ちぶれてないです。僕は極普通の善良な一般市民のつもりです」
「はっ! 極普通か」
彼女は笑った。それは明らかに僕を嘲って、侮蔑して、貶めていて。そしてその課長さんは普通、という単語にそんな反応を示した。善良でも、一般市民でもなくて。
「極普通の人間が今頃こんなとこにいるかよ」
言いながら課長さんは胸元から一枚の写真を取り出して僕の方目掛けて投げつけた。一直線に回転しながら向かってきたそれはむき出しのカッターの様に鋭い切れ味を持っていて、僕は手を切らないように体全体で受け止める。
何とか落とさずに済んだ写真を胸元から剥がし、見てみる。見てみたはいいけど、僕は顔をしかめざるを得なかった。
「うわ……」
そんな声が自然と漏れていた。写真に写っていたのはグロテスクとしか言いようが無い真っ黒な何かで、それが人間だった物だと気づいたのは、頭や手の様な物が付いていたから。もっとも、手は肘のあたりで不自然な方向に折れ曲がってはいたけれど。
写真の中身はともかくとして、何故僕にこれを見せるのか。こんな写真一枚から何か情報を取り出せるほどにプロファイリング能力に優れているとは、天地がひっくり返ろうとも思えない。
「何ですか、コレ?」
黒焦げの「人」だと気づくと、余計に気分が悪くなる。こういった写真を見るのは初めてだけど、とても元人間だとは気づけない。何かで打ちつけられて折れた腕は、焼けたせいだろう、許しを乞うかのごとく手を宙に伸ばしていた。眼があったであろう場所には、空洞がぽっかりと覗いている。
何もかもを失った人物。なのに、その顔はどこか笑っている様にも見える。
「分からないか? まあ、分からないだろうな。実際に目撃した私自身でさえも信じられないんだからな」
「何ですか。もったいぶらないでください」
「鏡クン、さっき話してもらった一昨日の事だけど、たぶんそれは三日前の事だよ。
今日が何日か分かる?」
「五月……十二日じゃないんですか?」
「今日は十三日だよ」
そんなまさか。じゃあ僕は丸一日寝てたって言うのだろうか?
「寝てたって言い方が正しいのかは分からないけどね」そう言うと悠さんは写真を僕の手から抜き取り、ヒラヒラとひらめかせて改めて僕の目の前にかざす。「この写真はね、鏡クン、君なんだよ」
「……え?」
何を言ってるんだろうか、この人は。こんな黒焦げになって生きているとは思えないし、百歩譲って生きていたとしても、集中治療室に閉じ込められて治療の真っ最中に違いない。
「すいません、それは『本来なら君がこうなってたよ、運が良かったね?』っていう類の話ですか?」
「それで済む話なら楽なんだけどね」
悠さんは苦笑いとも疲れたとも言えない微妙な表情を浮かべた。その顔から悠さんが冗談を言っているわけでも無く、ましてや嘘を並べているわけでも無いというのが分かる。
つまり。
僕は本当に死んだという事になる。
「……意味が分かんねぇ」
「そりゃコッチのセリフだ」
課長さんが割り込んでくるけど、それに応える余裕は無い。手で抱えられた頭の中ではグルグルといろんな事が渦巻いていた。死んだ人間が生き返って、それは僕で、そして今五体満足でここにいる。何故僕は死んだ?何故僕は生きている?なにより、
――どうして……僕は死ねなかった?
「というわけでアタシたちも意味が分かんないんだよね。で、鏡クン、改めて聞くよ。昨日何があったか話してくれるかな?」
本当に、意味が分からない。考えるのも段々と億劫になっていき、僕は言われるがままに昨日の事を話した。
朝起きて大学行って正祐と飯を食って。午後からも授業に出て時々寝て、どっかのサークルの飲み会に参加して。
参加して、参加して…参加して……それから?
「それから?」
「それから……あれ? ちょ、ちょっと待ってください。それから……」
今日何度目か分からない記憶を探る作業。だけど、飲み会に参加したところから急激に記憶が飛んでいる。
額に手を当て、僕は正面に座る悠さんの顔を一度だけ見た。
覚えている。彼女の顔を。それはさっき確認した。だが何処で?
彼女の怒鳴っている顔が浮かぶ。僕に向かって何かを叫んでいる。だが聞こえない。
そうだ、僕を責めているんだ。そして僕はその場を離れようとして、そして――
「――っ!」
とっさに僕は両手で自分の口を抑える事ができたが、その事を本気で褒めてやりたいと思う。やりたいとは思うが、その時に僕の口から出そうになったのが何だったのか、それはもう分からない。
それは、グロテスクな中身が自分だった本当の意味で気づいての嘔吐感だったのかもしれない。
それは、自分が燃やされた事に対する恐怖だったのかもしれない。
それは、まだ自分が死んでいないことに対する悲鳴だったのかもしれない。
いずれにせよ、人前で錯乱して叫ぶ、という醜態を晒さずには済んだのだけれど。
「どうやら思い出したみたいだな」
「……ええ、おかげさまで」
「大丈夫?」
「なんとか……大丈夫そうです。すいません、ココってタバコは大丈夫ですか?」
悠さんが確認するように課長さんの顔を伺い、そして課長さんはそれに対して自分もタバコをくわえることで応えた。
「本来ならここでもう一度聞くとこなんだが……どうやら本気で何も知らないらしいな」
「はい……たぶん僕の方が知りたいくらいです」
自分が何者か。それは思春期を迎えてから幾度となく繰り返し自問してきた問いではあるけれど、今のその問いかけは全く以て別の意味を持ってしまった。
自分の存在意義への疑問から、完全に、根本的なまでに根源に近い問い。そもそも自分が人間であるかどうか、極端ではあるけれどそこから疑わなくてはならないのか、僕は。「言っとくけどな」と前置きして課長さんは煙を吐き出した。
「写真とお前が別人だ、ていう可能性はゼロだ。この人間かどうかも疑わしい状況から今のお前の姿まで回復していく様をウチの課のヤツが何人も目撃してる。無論アタシもだ。
想像以上にグロイもんだったぞ、あれは。黒焦げた肌がみるみる内にピンク色の肉になって皮膚が再生していくんだ。折れ曲がった腕は何事も無かったかの様に元に戻り、ツルツルだった頭があっという間に髪に覆われていく。さすがに服は元に戻らなかったけどな。ああ、お前が今着てる服は課の人間のお下がりだから。そのまま着て帰っても構わんよ」
タバコを吸い、ぼんやりしながら僕は「ありがとうございます」とだけ答えておいた。
半分ほど吸ったところでだいぶ頭も落ち着き、ようやく僕は自分から口を開くだけの余裕を取り戻すことができて、疑問を課長さんにぶつけてみた。
「……アナタたちは、一体何者なんですか?」
「さてね、答えてやってもいいんだが聞いてどうする?」
「どうするって……」
「もう少し分り易く言ってやろうか。仮に教えたとしてだ、それを聞いてお前は何をアタシ達にしてくれるんだ?」
「それは……分かりません。分かりませんけど、それを決めるために情報が欲しいんです」
「情報? おいおい、馬鹿を言ってくれるなよ。聞くけどな、お前は今まであんな何も無いところから火を放ったりするヤツを見たことはあるのか?」
「いえ、無いですけど」
「あんな派手にやらかしてるのにニュースにさえなってない。ということは、だ。全ては秘匿されてるってことだ。そんな極秘情報をどこの誰かも分からない怪しさ満点のヤツに教えろってか?」
「……」
「誰かが言ってたがな、人生ってヤツは準備不足の連続なんだよ。その中で選ばなきゃならない。お前に与えられた選択肢は二つ。アタシ達の味方になるか、敵になるか、だ。その二つ以外にありゃしない。他の選択肢は許さない。他の誰が許そうともアタシが許さない」
「横暴ですね」
「横暴? 大いに結構。だがそれがアタシには許されてお前には許されていない。それだけの話さ。しかしお前はラッキーだぞ、んん? 巻き込まれても死なずにここにいる。おまけに選択を許されているのだからな」
明らかに見下した口調で、まるで出来の悪い生徒をあしらうかのように、あるいは駄々をこねる子供をあやすかのように僕に言い聞かせた。そして悔しいことにそれは事実だ。
どんな事態であっても十全の準備をして挑める機会などそうそうない。あるとすれば予定調和とも言える予め仕組まれた事件か学校のテストくらいだ。もっとも、そうであっても準備不足になることは多々あるのだけれど。
「確認ですけど、僕がアナタ達の組織――恐らくは警察みたいなものだと思うんですけど、入ればいろいろと教えてくれて、断れば何事も無かったかのように解放されるんですよね?」
「そういうことになるな。当然、解放されても守秘義務は存在するがな」
「なら……」
そこで僕は言葉を区切った。口にしておきながら、その先の言葉にまだ僕は迷っていた。
課長という単語や一昨日の――僕にとってはまだ昨日だけど――夜の様子からしてたぶんここは警察、もしくはそれに準じた組織であることには間違いはないだろう。少なくとも悪の組織ではないと思う。いささか乱暴な感じは否めないけど、それは仕方ないところだろう。向こうから見れば僕は得体のしれない存在なのだから。
魔法使い。超能力者。
そんな単語が頭に浮かぶ。一昨日の夜の景色。最後はアレな結末だったけど、幻想的な光景は未だ僕の中にこびりついていた。その中に僕も加わりたい。加われなくても、ただ眺めているだけでもいい。
触れていたい。あの世界に触れていたい。間違いなく僕はそれを望んでいるのだろう。
「お断りします」
なのに僕の口から出てきたのは真逆だった。
「そうか」
短く課長さんはそれだけ答えるとそれきり何も言わず部屋のドアを開けた。悠さんも何も言わない。少しだけ残念そうな顔をして、口元は何か言いたげだったけど、僕も口を開かずその横を通り過ぎた。
「せっかくだから最初の質問だけ答えてやる」
「……」
「魔法使い、超能力者、異能者……呼び方は人それぞれだが、アレはああいうもんだ。一般的な人としての括りから外れた稀有な存在。目に見える武器を持たない、故に強大な暴力を奮うだけの力を手に入れた人間。そして故に暴力的な衝動によって厄介事を進んで引き起こす、世間から見ればハタ迷惑な奴らだ。そんな奴らがこの街には相当な数がいる」
「……いいんですか? 部外者に教えて」
「この程度の情報なぞ構わんよ。だが覚えておいた方がいいぞ。お前が何を思って断ったかは詮索せんが、お前はもうコッチ側の人間なんだ」
背中で僕は聞いている。
「何しろ普通の人間はあの場にいることすら不可能だからな。月並みだが、どうせ周りには自然と似た人間が集まってくる。類は友を呼ぶとも言うな。もっとも、友かどうかは知らんが。せいぜい気をつけるんだな。どうせ巻き込まれるだろうがね」
「ご忠告、ありがとうございます」
「感謝の言葉、ありがたく頂戴しておこう」
それを最後に扉がバタン、と音を立てて閉まった。まるで決別を表しているみたいに。
ふう、と僕は声に出しながらため息をついた。だけど叩かれた肩に、また体を強ばらせる。
「本当に、いいの?」
「はい。大学もありますし、こういうのは片手間でできるものでもないでしょう?」
「そっか。そうだね」
本当に納得したのかは分からないけれど、悠さんは言葉の上では同意してくれた。そしてポケットに手を突っ込むと何かを僕の手に握らせてきた。
「これは……?」
「うーん、備えあればうれしいなっ! てところかな?」
わざと言ってるのかは僕には判断しかねるけど、そんな軽い空気とは裏腹に渡されたのは拳銃だった。
デリンジャー。そういう方面に明るくない僕にも分かるほど有名な単発式の小型拳銃。手のひらサイズの見た目よりずっと重いそれを僕は握りしめた。
「いいんですか?」
「いいのいいの! 君は悪用しそうにないしね」
「課長さんにバレたら大変なんじゃないですか?」
「モーマンタイっ! 書類なんていくらでもごまかせるから」
「じゃあ早速課長さんに告げ口してきますね」
「ちょっちょっちょっ! タンマ、タンマで!」
「冗談ですよ」
言うやいなや悠さんは心底ホッとした表情を浮かべた。きっといつも課長さんにいじめられてるんだろう。いや、当人に取ってはイジラれてるの方が正しいのか。ひどく暴力的ではあったけど。
「それじゃちょっとの間だけ眼をつむっててちょうだいな」
僕がポケットにデリンジャーを仕舞うのを確認すると、唐突に悠さんがそんな事を言い出した。言われるままに僕は眼を閉じる。視界が暗く閉ざされて、聴覚が研ぎ澄まされる気がする。そんなワケはないけど。
不意に吐息が耳にかかる。生暖かい、生気を感じさせるそれが悠さんのものであることは明白で、つい緊張してしまう。それが向こうにも伝わったんだろう、小さく笑い声が聞こえた。
「んじゃね、バイバイ。また会うかもしれないけど」
「えっ?」
僕が言葉を続けようとしたけど、それは叶わなかった。
眼を開けるとそこには青空が広がっていて、辺りには息が詰まるほどの多くの人が歩いていた。何が起こったのか分からなかった。分からなかったけど、ここが大学の前だということ、そばに悠さんがいないこと、そして悠さんにあの夜注意してくれた事のお礼を言うのを忘れていたことを、振り返って校舎を見て理解した。
車がひっきりなしに行き交い、人もまた同じ。信号が変わるたびにたくさんの人が横断歩道を渡って、また車が道路を埋め始める。休日でも大学は変わらない。講義は無いけれど、部活生かサークル生だかが元気よく走り、活気だけ見れば普段とそう変わりは無かった。もうだいぶ暑い季節が近づいているみたいで、僕とすれ違う人はみんな薄着になっていて、中には早くもキャミソールで歩いている女の子もいる。
ジリジリと陽が照って汗がにじむ。どうやら五月だというのに、今日は記録的な暑さみたいだった。ジリジリと僕の肌を太陽が焼く。汗がじわりとにじむ。
僕はその場を離れて家へと向かった。どこにも寄らず、誰とも話さず、真っ直ぐに。
スーパーの脇を抜け、橋を渡り、エレベーターに乗り込んで部屋の鍵を開ける。機械的な動きだ。ポケットの中のデリンジャーを少しだけ強く握り締めていた事以外は。
家に帰りつくと僕は真っ先に風呂場へと向かった。そして汗ばんだシャツを脱ぎ、自分の体を鏡に映す。それなりの筋肉とそれなりの脂肪がついた、それなりの体。そこには一切の傷もその他の異変も無くて、見慣れた僕の体があった。
ジーンズのポケットからデリンジャーを取り出す。小さくて無骨という、どこか矛盾じみたそれを僕はゆっくりと自分の首に押し当てる。
安全装置替わりの重い引き金に指を掛けた。心臓の高鳴りが痛いほどに響く。
頭に過るものは何も無い。
そして僕は引き金を引いた。
目が覚めるともう日が暮れ始めていた。重い体を起こして身の周りを確認する。
自分が倒れていたのは記憶通りの風呂場であって、意識を失う前と何ら変わってなかった。一切の汚れも、一切の飛沫も無くて、拳銃の弾だけがよ床に転がっていた。それを僕は眺めるしかできなかった。
僕の手から拳銃が滑り落ちて音を立てる。体から力が抜けて壁に背をつけながらずり落ちていく。それをどこか客観的に感じている僕がいて、現実感に乏しくて、だけどもここは悲しいくらいに現実で。
僕は声を上げて泣いた。
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