第17話 リベンジ
学校が本格的に始まった。
やはり部活には入らない。
たくさん釣りに行かなくてはならないから学校に遅くまで残りたくない。
相変わらずそんな思考のユキであった。
ここ最近、釣れない日が多くなってきた。
出戻りバサーが増えたからだ。
それに加えテレビの放映。
特定外来種として敬遠され、テレビ放映も自粛されていたが、再び放映され始めたのだ。
親父達のハナシを聞くと、以前、今みたいなバスブームがあったらしい。
親父たちが二十歳前後の時の話である。
RVブームが起こり、四駆買ったのでバス釣り始めました!という連中が急激に増殖。一気に釣り場が荒れた。
ごみ問題や違法駐車などで周辺住民とのトラブルが増加。
同時にゲリラ的なバスの放流。
目の敵にされた。
そんなところに排ガス問題。
RVの多くは重たいボディを簡単に引っ張れる、トルクの太いディーゼルエンジンを積む。
燃費はいいが、黒煙を吐く。NOX(窒素酸化物)とSOX(硫黄酸化物)の排出が多いとの理由で規制が厳しくなり、四駆は廃れた、と聞く。
ここ最近、色んな技術が開発され、燃費も向上。
ミニバンタイプのクルマが人気である。
広い室内には荷物がたくさん載る。
釣りに行くのも楽ちんだ。
数年前から海のルアーが流行り、バス釣りしていた人の多くが海に流れたらしい。
スズキ=シーバスは勿論のこと、メバルやアオリイカ、ヒラメ、コチ、クロダイと対象魚の種類も多い。
船を出せばブリやヒラマサ、カンパチ、真鯛などの高級魚も釣れる。
釣って楽しい、食べて美味しいとなると人気が出ないわけがない。
釣り方やタックルのほとんどがバス釣りから流用できるというのも人気が出た理由の一つ。
加速度的に海のルアー人口が増え、釣れた魚は小さいのまで持って帰る。
おかげで一気に場所が荒れて釣れなくなる。
釣れないと楽しくない。
そういった悪循環を経て出戻りバサーが増えた。
どこの釣り場に行っても釣り人は多い。他県ナンバーもしょっちゅう見かける。狭い川にボートも浮いている。
そんな条件が重なり、釣り場における人的プレッシャーが高くなっていった。
以前に比べ、食うルアーのサイズが小さくなった気がする。スピニングタックルの出番が増えたのがその証拠だろう。
しかし、魚が小さくなったわけではない。たまに釣れるとビックリするほど大きかったりする。
そこで出てきたのがベイトフィネスという釣り方で、これがまた役に立つのだ。
※時系列的につじつま合わないところが多々ありますのでご勘弁を!ここ大事(汗)。
本格的なベイトフィネスのリールは高額で、買うのを躊躇する。T3AIRとかアルデバランBFS-XG、レボLTXなどがその代表格だ。
そんな中、伝統のある機種アルファスにAIRブレーキを搭載し、軽いルアーから重いビッグベイトまで対応できるSV(ストレスフリーバーサタイル)というものが発売された。
5gほどのプラグやリグを楽に投げられる。
そして何と言ってもメイドインジャパン!
それなのに高くないのがなかなか嬉しい。
サオはエアエッジ681MLB。
ボーナスシーズンの安売りで買うと総額3万チョイぐらいじゃないだろうか?もちろん新品で。
一目ぼれして買ってしまった。
この間、桃代に告白され初めてのデート。
釣具を買いに行った。
何とも色気のない…。
そこでおそろいのタックルを揃えたのだった。
10ポンドのフロロを巻き、いざ出陣だ。
昼飯を食っていつものポイントに来た。
既に川が田んぼ仕様になり、水位が上がっている。
桃代と再会した時の水位と同じ。
上がって日にちが経っておらず、ゴミがかなり浮いている。
早速おニューのタックルを試す。
桃代は7gのファットAをチョイス。
ユキは2gシンカーにシュリンプ3インチのテキサスリグ。
各々ポイントを選び実釣開始。
買ったばかりのタックル。
ブレーキを調整する。とりあえず、二人ともダイヤルの目盛りの真ん中辺りから始める。
桃代はそのままイケたので、さらに弱めにセット。
3目盛り弱くしたら、飛んでいく途中スプールの糸が浮いた。
一つ強くする。
いー感じに飛んでいく。
リョウガやジリオンと違って、ブレーキが利きっぱなしのような感触がある。
具体的には引きずる感触。この感覚がしなくなるまでブレーキを弱めると、途端にバックラッシュする。
桃代のブレーキ調整は完了した。
ユキはというといきなり軽いバックラッシュ。
糸をキンクさせないように気を付け修復する。
20目盛あるうちの12にセット。投げてみると快適に飛んだ。
最初に釣ったのはユキ。
沖のこぼれたゴロタを狙っていたら食ってきた。
石を越える感触に注意しながらコロッと落とす。
底に着いた瞬間、コツッと吸い込む感触が伝わった。
「食った。」
サオは柔らかいけど感度はいい。
一呼吸待ってアワセる。
今までのサオはHアクションだったのでかなり柔らかく感じる。
一気に沖に走られ、サオが弓なりになる。
主導権を魚に握られる!
寄せるパワーが桁違いに弱い。
糸が10ポンドなので、ジリオンやリョウガみたいに力でねじ伏せることができない。
流石にドラグを使う。
必死こいてスタードラグを緩め、糸を出す。
プロがやっているやり取り中のクラッチオフは怖くてできない。
指がスプールから離れでもしたら、即バックラッシュでサヨナラだ。
糸がゆっくり引き出される。
障害物に向かったのでサオを立てたり寝かせたりして躱す。
なかなかこっちを向いてくれない。
サオを立て耐える。
ようやくこっちを向いた気がした。
すかさずドラグを締める。とはいえフルロックにはしない。強く惹かれたら出る感じだ。
抵抗はしながらも徐々に寄ってくる。
ようやく魚体が見える。
手前まで寄せたとき思う。
抜き上げはしない方がいい。
右手に持ち替え、サオを高く上げ、魚を寄せ、口に指を入れランディング。
丸々肥えたキレイな魚体。
ハリを外し、サオと並べ記念撮影。
タックルに魂がこもった!
指で測ると40cmはない。おそらく35cmぐらいだ。
サオが軟いので、ファイトにスリルがあって楽しい。
桃代はクランクを諦め、トラウト用のスピナーであるブレットン5gに交換。
水門の流れ込みを狙う。
桃代はスピナーが簡単に投げれることに感動しまくりである。
「アルファス、スゲーばい!スピナーがフツーに飛ぶし。」
「リョウガじゃ流石に飛ばんもんね。」
「うん。これはちょっとお気に入りになりそ。」
投げ続けているとゴッ!と何かがアタり、のる。
「なんか食った!バスじゃない!」
結構重量感のある白銀の細長い魚体。ちょっとのやり取りのあと抜き上げる。
30cmはある。
「なんかコイ科の魚…ウグイ?」
「そぉかもね。ここ、そげなんもおったんやね。」
「ウチも知らんやった。」
指が口に入らないので、置いて記念撮影。
「バイバイ!またね。ウチの初体験!」
言った後、何かに思い当たり、ボッ!と勝手に赤面している。
「そーやね。」
ニヤッと笑ってみせる。
「あれは…ないね。」
「でも、オレは嬉しかったよ。」
「次はちゃんとせないかんね。」
「んじゃ、今からここでする?」
「バカ!人に見られるのはもぉイヤ!」
桃代にはまあまあトラウマになっているみたいだ。
「たしかにね。じゃ帰ってする?」
「え~…どーしよっかな~。」
勿体ぶって焦らしているつもり。ホントはしてみたい。
「んじゃ、せんめっか?」
「え~。」
「どっちなん?」
したいけど、ちょっと怖かったりする。
温泉の時はシャレになってないほど痛かったからだ。
「あとで考えよ?」
「そやね。」
そして釣り再開。
同じところに投げると、また同じ魚が釣れる。
どうやら群れでいるみたい。
全部で5匹釣れた。
そのあと20cm無いぐらいの子バスが釣れたが、それを最後に反応がなくなった。
その証拠に、目の前でハヤが安心して乱舞を始める。
「ウチの場合、これ魂こもったっちゆっていーん?」
「いーっちゃない?小さいでもバスはバスやし。」
「そっか。ユキくんがそげゆってくれるならそぉしよ。」
ユキも、場所をチマチマ変えながら釣っていたが、あれ以来なにも釣れず、撤収することになった。
家に戻ってきた。
実質3時間も釣ってない。
夕飯までかなり時間がある。
桃代の部屋で麦茶を飲みながらお菓子を貪り、おしゃべり中。
学校の話、友達の話、宿題の話。
ユキがいいことを思いつく。
「そーだ!さっき言いよったの実行してみよっか?」
「何?」
「えっち。」
「マジで?」
「結構マジかも。」
「でも、ナマはいかんやろ。」
「実は!この前買った。」
「マジで?どーやって?」
「暗い時、あっこの薬局の自販機で。」
ユキの笑顔がキラキラしている。
「エロいね。必死やね。」
桃代がちょっと困った顔で笑う。
「当たり前やん。桃ちゃんとしたいもん。」
あまりのストレートさに思わず嬉しくなった。
「ありがと!じゃ、する?」
「勿論!ゴム持ってくる。」
「ん。待っちょく。」
家にゴムを取りに帰った。
すっごいドキドキしている。
実質の初体験だ。
なんか既に濡れてエライことになっている。
すぐに戻ってきた。
「じゃ、お願いします。」
わざとらしく正座して、深く頭を下げるユキ。
「何それ?」
微笑む桃代。
ベッドに寝かせ、そっと抱きあい、ユキが髪をかきあげる。
お互い鼓動がこれ以上ないくらい跳ね上がる。
そしてキス。
舌を絡めあう。
服の上から胸を揉む。
切ない吐息が漏れる。
トレーナーとタンクトップをまくり上げ、乳首を舐める。
桃代は身をよじりながらもユキの頭を抱きしめる。
段々と下に移っていくユキ。
身体が波打つ。
自分の部屋なので、声を押し殺すのが大変だ。
ユキの手が腹部からパンツの中に侵入してくる。
敏感なところに触れると、ひときわ大きく波打つ。
「くっ…」
声が漏れそうになるのを必死で我慢している桃代。
穴に指を入れ、痛くないか確認する。
「痛くない?」
「ん。大丈夫…みたい。」
快感が強すぎてまともに声が出ない。
下を全部脱がす。
指を動かすといつもの如く、激しく溢れ出れくる。
「入れてみていい?」
「ん。」
ゴムを着ける。
焦ってもたもたするユキ。
微笑ましく見守る。
なんとか着けた。
「痛かったらゆってね。」
「ん。」
硬くなったそれを桃代の濡れた部分に当て、ゆっくりと腰を落とし挿入する。
桃代の腰が逃げそうになる。
緊張してなかなか入らない。
「力、抜ききる?」
「ん。」
深呼吸して力を抜く。
再度挿入。
「いっ…」
まだ少し痛いみたい。
でも…
「入ったね。」
「ん。」
桃代が涙を流し、微笑んでいる。
「やっとちゃんとできた。よかったぁ。」
「うん。ウチも嬉しい。」
「腰、振ってみるよ?」
「うん。」
ゆっくり、ゆっくり…
痛みに顔を歪めながらも耐えている。
そして果てる。
また少し血が出ていた。
「痛かった?」
「うん。少しね。」
涙目で微笑む。
愛おしくてたまらなくなり、おもいっきし抱きしめた。
桃代も抱きしめ返してくる。
少し力を緩め目線を合わせる。
「好いちょーばい。」
「うん。ウチも。でったん好き。」
もう一度強く抱きしめ、唇を重ねる。
幸せだ。
今、この時をもって初体験にしよう。
二人でそう決めた。
そしてお互いますます好きになる。
深く深く好きになる。
もう二度と離れられないくらいに。
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