話其の拾参/似た者同士!?
桃太郎と犬と猿が鬼ヶ島へ向かって歩いている。
「しかし何で急に謝る気になったんだ?」
犬が猿に訊いた。
「俺は、その鬼の顔を立てただけだ」
猿はぶっきら棒に、そう答えた。
「どういう事なんだ?」
犬は猿の真意を量りかねる。
「その鬼が共に行く事を望んだから、貸りのある俺が、その鬼の顔を立てた」
猿はずっとぶっきら棒だ。
「なるほどね」
犬も納得が出来た様である。
「だから俺がお前を気に入らない事は変わっちゃいない。気安く話掛けるのは止めて欲しい」
猿は犬を突き放す様に言った。
「判った、判った。何だか、好い奴なのか嫌な奴なのか、よく判らん奴だな」
犬は苦笑しながら言った。
「ふふふ」
桃太郎が小さく笑った。
「何が可笑しい?」
「何が可笑しい?」
犬と猿が同時に桃太郎に訊いた。
そして犬と猿がお互いの顔を見合わせる。
「ははは」
それを見た桃太郎が今度は大きく笑った。
犬と猿は気まずそうに互いにそっぽを向く。
「あはは」
桃太郎は更に大きく笑った。
「いつまで笑ってるんだよ」
犬が桃太郎に声を掛ける。
「ごめんごめん。なんか、結局は世の中、そんなに悪い奴はいないのかなぁって思ってね」
「何を言ってるんだ?」
猿は桃太郎の言ってる事が理解出来なかった。
「だから、鬼達もそんなに悪い奴ではないんじゃないかって」
桃太郎はそう答えたが、猿は桃太郎が何故、笑っていたのかが疑問だった。
「悪いのは人間の方だろう?」
犬は桃太郎の言葉の方に関心が移っている様だ。
「いや、人間もそんなに悪い奴ばかりじゃないよ」
桃太郎が犬の疑問を否定した。
「お前、人間の恐ろしさを知らないんじゃないのか?」
猿も桃太郎の言葉の方に話を合わせた。
「あはは」
桃太郎は再び大きく笑った。
「さっきから、何がそんなに可笑しいんだ?」
猿にも再び先程の疑問が蘇った。
「だって、お前達、いがみ合いながらも、俺に対しては似た様な事を言ってくるじゃん」
桃太郎はまだ笑いが収まらない様だった。
犬と猿は桃太郎の言葉を聞き、再び互いに顔を見合わせる。
そして、すぐに互いにそっぽを向く。
それを見た桃太郎が再び大きく笑った。
犬と猿は何も言えなくなってしまう。
そして笑い終えた桃太郎が話し始める。
「とにかく、人間もそんなに悪い奴ばかりじゃない。それをお前達だけじゃなく、鬼ヶ島の鬼達にも解って貰いたい」
そうして、桃太郎と犬と猿は鬼ヶ島への旅を続ける。
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