エピソード54/俊之んチからの帰り道

あつし木綿子ゆうこ俊之としゆきの家から由佳ゆかを家まで送った後、今度はそれぞれの自転車を引きながら、歩いて木綿子の家へと向かっている。


淳「長谷川はせがわんチって何処なの?」


木綿子「すぐ、そこの団地なんだ」


淳「そうなんだ」


木綿子「ごめんね。変な事を言っちゃって」


淳「気にしないでいいよ。正直に言えば、山ノ井やまのいから話を聞いた時、ちょっと嬉しかったし」


木綿子「本当!?」


淳「長谷川って結構、俺のタイプではあるんだよね」


木綿子「そうなんだ」


木綿子は少し照れた。


淳「だけど、もう少し待っていて欲しいなって」


木綿子「うん」


淳「前の彼女の事を引きずったまま、長谷川と付き合ったりするのは失礼かなって思うからさ」


木綿子「そんな事はないけど。みんな、そうなんじゃないかな」


淳「でも、山ノ井達もいるし、暫くは、みんなで友達付き合いをした方が、お互いにお互いの事を少しは理解が出来ると思うし」


木綿子「それは、そうだね」


淳「付き合うのは、それからでも遅くないんじゃないかって」


木綿子「うん」


淳「本当は早く彼女が欲しかったりもするんだけどね」


木綿子「そうだよね。私も絵美えみ達を見ていると、早く彼氏が欲しいな~って」


淳「そっか。山ノ井みたいな彼氏がいいの?」


木綿子「それは勘弁かな~」


淳「あはは。因みに、何で?」


木綿子「だって、おかしいよ。あの二人」


淳「そうだよな。俺もそう思うよ」


木綿子「でしょ!?でも、彼氏彼女って関係には正直、羨ましくも思えるんだ」


淳「本当に山ノ井と川村かわむらって仲が良いよな」


木綿子「仲が良過ぎなのよ」


淳「さすが、西校一のバカップルって感じだな」


木綿子「そうそう。でも、一緒に遊んでいると結構、面白いのよ」


淳「そうなんだ」


木綿子「普通は邪魔をしたら悪いかな~って、思っちゃったりするけどさ」


淳「うん」


木綿子「あの二人には、そんな気遣いは無用なんだ」


淳「そっか」


木綿子「それに、見ているだけでも面白いし。いじり甲斐があるし」


淳「あはは」


木綿子「由佳といつも、からかったりもしているんだ」


淳「学校のみんなは山ノ井達に関わろうとはしないけどな」


木綿子「そうそう。それは、それで賢明だとは思うけど、懐に入り込んじゃえば、結構、面白かったりもするんだ」


淳「なるほどね」


そして二人は団地の入口のところまで、やって来る。


木綿子「ありがとう。此処でいいわ」


淳「そっか。それじゃ、またね」


木綿子「うん。またね」


そして淳は団地から離れて、自宅へと帰って行く。


木綿子は淳が見えなくなるまで見送ってから、自宅へと向かった。


もう幾らもしない内に暗くなってしまうだろう。


そんな冬の夕方だった。

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