エピソード51/ご馳走
今日、
そして由佳の部屋で勉強をしていた。
夜になれば、ご馳走が待っている。
由佳の母は皆の夕飯の支度に忙しかった。
そして由佳の父も家へと帰って来る。
由佳の母は夕飯の支度を中断して出迎えに行く。
由佳の父「ただいま」
由佳の母「おかえりなさい」
由佳の父「随分、靴が沢山、あるな」
そう言いながら、由佳の父は家へと上がった。
由佳の母「由佳のお友達が来ているのよ」
二人は話をしながら、リビングへと向かう。
由佳の父「まさか、男の子じゃないだろうな!?」
由佳の母「男の子は
由佳の父「山ノ井君ってのは、確か、由佳の友達の彼氏だったな」
由佳の母「そうよ。
由佳の父「そうか」
由佳の母「それで由佳、いつもお友達の家で、みんなと一緒に勉強をしているみたいだから、そのお礼も兼ねて、みんなにウチで夕飯でも食べて貰おうと思ってね」
由佳の父「それは構わないが、本当に大丈夫なんだろうな!?」
由佳の母「あなた、どこまで心配性なのよ」
由佳の父「娘の心配をして、何が悪いんだ」
由佳の母「心配をするのはいいけど、度が過ぎるのよ」
由佳の父「何が度が過ぎるんだ」
そしてリビングに着くと、由佳の父はソファーに座ってTVを見始めた。
由佳の母は台所に戻って、夕飯の支度を続ける。
暫くすると、由佳の母が由佳の父を呼ぶ。
由佳の母「あなた、夕飯が出来たわよ」
由佳の父は台所に行って席に座った。
由佳の父「今日は随分、豪勢だな」
由佳の母「だって、いつも由佳がお世話になっているんですもの。これくらいの事はさせて頂かないと」
由佳の母も席に座る。
由佳の父「由佳は、どうしたんだ!?」
由佳の母「由佳はお友達と一緒に後でって事よ」
由佳の父「全く」
由佳の母「たまには、こうして私達だけの夕飯もいいじゃない」
由佳の父「いい歳をして、何を言っているんだ」
由佳の母「すみませんね。それじゃ、頂きましょう」
二人は夕飯を食べ始める。
由佳の父「由佳は今、何をしているんだ?」
由佳の母「みんなと一緒に勉強をしているんじゃない」
由佳の父「本当に勉強をしているのか!?」
由佳の母「しているみたいよ。 絵美ちゃん達と勉強をする様になってから、成績も良くなっているし」
由佳の父「そうか」
由佳の母「だから、少しくらいは許してあげてもいいんじゃないの!?」
由佳の父「何を言っているんだ」
由佳の母「絵美ちゃんと山ノ井君を見ていると、何だか、由佳が可哀相に思えるのよ」
由佳の父「高校生のくせに、そんな事はまだ早い。 私はその絵美ちゃんって子と山ノ井君って子の事だって、良くは思っていないんだぞ」
由佳の母「確かに、あなたの仰る事も間違いではないのかもしれないわ」
由佳の父「そうだろう」
由佳の母「でも、それが全てだって訳でもないんじゃないかしら」
由佳の父「どういう事だ!?」
由佳の母「だから、私とあなたは出会うのが遅かったけど、中には若い内に出会ってしまう様な人達もいるんじゃないかって」
由佳の父「それが絵美ちゃんと山ノ井君だって言うのか!?」
由佳の母「そうね。絵美ちゃんと山ノ井君は、そうなんじゃないかしら。 いずれ、結婚をするみたいですし」
由佳の父「もう、そんなに話が進んでいるのか!?」
由佳の母「そうみたいよ。だから、もう、お互いの両親共に公認済みなんだって」
由佳の父「一体、何を考えているんだ」
由佳の母「由佳にだって、いずれは、そういう相手を連れて来て貰わなければ、私達だって困るでしょ」
由佳の父「それは、そうだが」
由佳の母「絵美ちゃんのご両親も葛藤はあったんじゃないかしら。 それでも娘の幸せを思えばこそ、山ノ井君だったらって」
由佳の父「まあ、いい。他所の事は。とにかく、ウチは許さん」
由佳の母「全く。頑固なんだから」
由佳の父「何が頑固なんだ。じゃあ、お前は由佳に彼氏を作らせたいのか!?」
由佳の母「彼氏とまではいかなくても、男友達くらいは、いいんじゃないかしらって言っているのよ」
由佳の父「そりゃあ、友達くらいだったら、構いはしないが」
由佳の母「そう言っておきながら、あなた、やたらと煩く言うじゃない」
由佳の父「娘の心配をするのは親として当然じゃないか」
由佳の母「それは、そうだけど、あなたは友達でさえ許さないって感じに見えるのよ」
由佳の父「そんな事はないぞ」
由佳の母「だったら、許してあげるのね!?」
由佳の父「何で、そうなるんだ!?」
由佳の母「だから、友達だったら、いいんでしょ!?」
由佳の父「そうだ」
由佳の母「きっと由佳、喜ぶわよ」
由佳の父「ふん」
二人は夕飯を食べながら話を続ける。
夕飯を食べ終わると、由佳の父はリビングに戻ってTVを見始めた。
由佳の母は子供達の夕飯を整える。
準備が整ったところで、2階の由佳の部屋へと向かった。
由佳の母が由佳の部屋のドアにノックをして言う。
由佳の母「夕飯が出来たわよ」
俊之達は勉強を中断する。
そして4人は部屋を出て、由佳の母について行く様に台所へ向かう。
俊之「俺、もう、お腹がペコペコ」
由佳の母「それじゃ、沢山、食べて貰わないとね」
俊之「それだったら、任せておいて下さい」
由佳「あんた、少しくらいは遠慮をしなさいよ」
由佳の母「いいじゃないの。遠慮なんてされたら私が困るわよ。 絵美ちゃんも
木綿子「私達は山ノ井君程は食べられませんけど」
絵美「そうだよね」
由佳の母「いいのよ。お腹一杯に食べて貰えれば」
そして俊之達はリビングの脇を通る際に、由佳の父へ挨拶をする。
俊之「こんばんは」
絵美「こんばんは」
木綿子「こんばんは」
すると、由佳の父が俊之を呼んだ。
由佳の父「山ノ井君。ちょっと来てくれないか」
俊之「はい」
俊之は返事をすると、リビングの方へ向かう。
由佳と絵美と木綿子は台所の方へと向かった。
そして俊之が由佳の父の傍に行くと、由佳の父が話しかける。
由佳の父「ちょっと訊きたい事があるんだけど、いいかな?」
俊之「はい」
由佳の父「由佳とは本当に何もないんだな!?」
俊之「え!?」
少しの間をおいて、俊之は笑い出す。
俊之「あはははは」
由佳の父「何が可笑しいんだ!?」
俊之「いえ、何でもないです。ただ、こんな事を言うのは失礼になるのかもしれませんが」
由佳の父「何だ!?言ってみなさい」
俊之「俺は絵美の事が好きなんです。 だから、由佳さんとはおじさんが心配をしなきゃならない様な事にはなりませんよ」
由佳の父「そうか。なら、いいんだ。ご飯を食べてきなさい」
俊之「はい。ご馳走になります」
そう言うと、俊之は台所に行って席に着いた。
他の3人はすでに席に着いている。
テーブルには一人ずつに、ステーキの乗った皿とスープの入った器があった。
そして真ん中に、生野菜のサラダが入った器と魚介類のフライを盛った皿が2つずつある。
その全てが、たんまりと盛られていた。
俊之「お~、すげ~。ステーキじゃん」
絵美「私、こんなに厚いステーキは食べた事がないな~」
木綿子「私もだよ」
俊之「俺なんて、ステーキ自体、食べた事がないって」
由佳「それじゃ、感謝をして貰わなくちゃね」
由佳の母「何を言っているの。あなたの方が、いつもお世話になっているんでしょ」
由佳の母は由佳の脇に立っていた。
由佳「ごめんなさい」
絵美「ステーキなんて、すて~きだね~」
一瞬、台所が静まり返る。
俊之「早く食べようぜ」
木綿子「そうよ」
絵美「何よ~!?」
俊之「思いついても言わない様な駄洒落を言うなよな」
絵美「ぶー」
由佳「それじゃ、食べましょう」
由佳の母「遠慮せずに沢山、食べてね」
「いただきま~す」
子供達は揃って、そう言うと、夕飯を食べ始める。
由佳の母「おかわりは、たんとあるから、お茶碗が空になったら言ってね」
俊之「すみません」
由佳「山ノ井君。お父さんと何の話をしてきたの?」
俊之「いや、俺が
由佳「もう~、お父さんったら。山ノ井君に何、変な事を言っているのよ!」
由佳はちょっと怒っている様だった。
由佳の母「いいじゃないの。お父さん、言っていたよ」
由佳「何て?」
由佳の母「お友達なら許すって」
由佳「本当に!?」
由佳の母「うん」
由佳「って、お友達じゃあねぇ~」
由佳の母「いいじゃないの。細かい事は。とにかく、節度をもったお付き合いをすればいいのよ」
由佳「いいの!?」
由佳の母「後は私が何とかするわよ」
由佳「本当に!?」
由佳の母「うん」
由佳「お母さん、ありがとう。っても、その節度ってのが難しいんだよね」
絵美「それでも、良かったじゃ~ん」
由佳「うん。木綿子も、もうすぐ彼氏が出来ちゃうみたいだしね」
由佳の母「あら。そうなの!?」
木綿子「何を言っているのよ。私はまだ分かんないわよ」
由佳「とにかく、私にも少し希望が出てきたわ」
由佳の母「希望だなんて、大袈裟ね」
由佳「だって、お父さんの事を考えると、今一、恋愛に対して積極的になれない部分があったんだもん」
由佳の母「そうなのね。でも、積極的になり過ぎるのも困るけどね」
由佳「分かっているわよ。とにかく、大進歩だわ」
俊之「おかわりを貰えますか!?」
由佳の母「ちょっと待っていて」
由佳の母は俊之から茶碗を受け取ると、ご飯をよそって、再び俊之に渡す。
そして少し経ってから、絵美と木綿子も普段はしない、おかわりをする。
由佳「あんた達、よく食べるわね」
絵美「だって、美味しいんだも~ん」
木綿子「こんなに美味しい料理は滅多に食べられないからね」
俊之「本当、こんなに美味いもんに遠慮なんてしていたら、後悔をしちゃうよ」
由佳の母「そう言って貰えると、私としても作った甲斐があるわ」
そして俊之だけ次々と、おかわりをしていく。
由佳「山ノ井君、本当に遠慮ってものを知らないのね」
俊之「いいじゃねーか。おばさんだって遠慮をされたら困るって言っていたし」
由佳の母「そうよ。そうやって、沢山、食べて貰った方が、作った私も嬉しいわ」
そして4人は夕飯を食べ終わる。
テーブルにはサラダとフライが幾らか残っていた。
由佳「山ノ井君、もういいの?」
俊之「さすがに、もうお腹一杯だよ」
絵美「俊君が残すなんて、珍しいね」
俊之「残りは全部、俺の分なのかよ」
由佳の母「いいのよ。残りは私が明日のお昼にでも食べるから」
俊之「それじゃ、ご馳走様でした。すごく美味しかったです」
絵美「ご馳走様でした。本当、美味しかった~」
木綿子「ご馳走様でした。本当に美味しかったです」
由佳の母「いいのよ。みんなには、いつも由佳がお世話になっているんだから」
俊之「だってよ」
由佳「うるさいわね」
由佳の母「その内、またご馳走をさせてね」
俊之「いいんですか!?」
由佳の母「どうぞ。また由佳に連れて来て貰うから」
俊之「じゃあ、楽しみにしています」
絵美「本当に楽しみ~」
由佳「これから、どうする!?」
俊之「少し休んで、キリのいいところまで続きをやるか!?」
木綿子「由佳、大丈夫?」
由佳「大丈夫よ」
そして4人は由佳の部屋へ戻った。
少しおしゃべりをした後、勉強を再開して、それぞれキリのいいところまでやってから、勉強を終える。
俊之「それじゃ、そろそろ俺達は帰ろう」
木綿子「そうだね」
由佳「そっか」
絵美「また明日、学校でね」
由佳「そうだね」
俊之達が由佳の部屋を出て玄関へと向かう。
途中、由佳の母も見送りに来る。
俊之達は玄関で靴を履く。
俊之「今日は本当に、ありがとうございました」
俊之につられて、絵美と木綿子もお礼を言う。
絵美「ありがとうございました」
木綿子「ありがとうございました」
由佳の母「また、いらっしゃい」
俊之「はい」
俊之は返事をすると、続けて由佳に言葉をかけた。
俊之「それじゃ、また明日」
木綿子「またね」
絵美「バイバイ」
由佳「バイバイ」
俊之達は由佳の家を出る。
そして先ず、木綿子を家まで送った。
その後に二人で絵美の家へと帰って行く。
俊之は絵美の家に着くと、絵美と一緒に絵美の両親と話をした。
そして、その後に自宅へと帰って行く。
まだまだ寒さも厳しい冬の夜の事だった。
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