三学期

エピソード49/呆れる程のお馬鹿さん達

何日か前に冬休みも終り、3学期も始まっていた。


絵美えみ由佳ゆか木綿子ゆうこが絵美達の教室で、俊之としゆきが来るのを待っている。


由佳「山ノ井やまのい君、今日はアルバイト、休みなんでしょ!?」


絵美「そう言っていたけど」


木綿子「遅いね」


絵美「私、ちょっと俊君のところへ行ってくる」


由佳「いってらっしゃい」


木綿子「早く帰りたいのになー」


そして絵美が俊之の教室へ、やって来る。


俊之は教室の掃除をしている最中だった。


絵美は掃除をしている俊之のところへ行く。


絵美「俊君」


俊之「悪ぃ。俺、今日、掃除当番だったんだよ」


絵美「そうなんだ」


俊之「だから、先に帰っていていいよ」


絵美「私も手伝うから、早く終らせて皆で帰ろうよ」


俊之「そっか。サンキュ」


そして絵美も掃除を手伝い始める。


しかし絵美と俊之は掃除をするというよりも、いちゃつき始めていた。


俊之と一緒に掃除をしていたクラスメイト達は、それを見て、教室から居なくなっていく。


暫くしてから、由佳と木綿子も俊之の教室に、やって来た。


そして廊下で俊之のクラスメイト達から由佳が声をかけられる。


伊藤いとう佐藤さとう。あいつらを何とかしてくれよ」


由佳「何よ!?」


清水しみず「絵美が来たら、いちゃつき始めちゃって、掃除どころじゃなくなっちゃったのよ」


由佳「あんた達、自分で注意をすればいいじゃん」


伊藤「無理を言うなって。あいつらには関わらないってのが常識じゃん」


清水「そうよね。山ノ井君も絵美も、どちらか一人だったら平気なんだけど、二人揃っている時に関わったりしたら、ロクな事にならないじゃん」


由佳「それは、そうかもしれないけど、あんた達、山ノ井君のクラスメイトでしょ」


伊藤「それを言うなら、今は佐藤の方が山ノ井とも親しいじゃんか」


由佳「分かったわよ。私が山ノ井君に掃除をやらせておくから、あんた達は帰っていいんじゃないの!?」


伊藤「そうか!?」


由佳「だって、悪いのは山ノ井君の方なんだしさ」


伊藤「そうだよな。じゃあ、俺達は帰らせて貰うよ。佐藤、サンキュな」


清水「由佳、ありがとうね」


由佳「いいのよ」


伊藤「佐藤が山ノ井達に掃除をやらせておくって言うから、俺達は帰っていいってさ」


伊藤が他のクラスメイト達に、そう告げた。


そして、それぞれ一度、教室に入り、自分の荷物を持って帰っていく。


俊之達はそんな事にも気付かずに、いちゃつき続けている。


由佳と木綿子は教室に入って、そんな二人を呆れ顔で眺めていた。


そして暫くしてから、由佳が俊之達に声をかける。


由佳「あんた達、いつまで、いちゃついてんのよ」


俊之「あれ!?佐藤達も来たの!?」


由佳「絵美が山ノ井君のところへ行ったきり、全然、帰って来ないと思ったら」


絵美「ごめんなさい」


俊之「あれ!?他のみんなは、どうしたんだろう?」


由佳「他の人達はみんな帰っちゃったわよ」


俊之「何、それ!?俺に掃除を押し付けたわけ!?」


由佳「本当に呆れちゃうわね」


俊之「何だよ!?」


由佳「あんた達がいちゃついていて、掃除にならないからって、みんなは帰ったのよ」


俊之「じゃあ、やっぱり俺に押し付けたんじゃん。ひでーな」


由佳「山ノ井君が悪いんでしょ」


俊之「何でよ!?」


由佳「絵美といちゃついちゃって、掃除なんてしていなかったじゃん」


俊之「そうか!?」


由佳「みんなの邪魔をして。だから、山ノ井君の所為じゃん。他のみんなは何も悪くないって」


俊之「そっか」


由佳「とにかく、私達も手伝うから、早く片付けて帰りましょう」


俊之「サンキュ。でも、佐藤にしては珍しく優しいじゃん」


由佳「珍しいってのは余計じゃない!?」


俊之「さすが、俺に惚れていただけの事はあるな」


由佳は下を向いて黙ってしまった。


俊之「どうした!?」


由佳「一瞬でも、あんたの事を好きになった自分が馬鹿だったって後悔をしているのよ」


俊之「今頃、気付いたか」


絵美「あははははは」


由佳「絵美!あんたにだけは笑われたくないわ!」


由佳が語気を強めて絵美に怒鳴った。


怒鳴られた絵美は俊之の後ろに隠れる。


由佳「木綿子。黙って見ていないで、あんたも何か言いなさいよ」


木綿子「私は遠慮をしておくわ。見ている方が面白いし」


由佳「木綿子って、本当に冷たいよね」


俊之「ひょっとして、長谷川はせがわも俺に惚れているのか?」


木綿子「何、馬鹿な事を言っているのよ」


俊之「じゃあ、長谷川は誰が好きなんだよ」


木綿子「何で、そんな事を山ノ井君に言わなきゃならないのよ」


俊之「俺に惚れているのを認めるの!?」


木綿子「そんな訳はないでしょ」


俊之「言わなきゃ、これから、佐藤と同じ目に遭うけど」


木綿子「全く。私は大竹おおたけ君が好きなのよ」


俊之「ほ~。大竹が好きなんだ」


木綿子「これで分かったでしょ。山ノ井君の自惚れだったって」


俊之「長谷川って結構、面食いなんだな」


由佳「そうなんだよね。木綿子って」


絵美「大竹君、カッコイイもんね」


木綿子「だから、私が山ノ井君の事を好きになるなんて事は有り得ないの」


俊之「それは、そうかもな」


由佳「大竹君とじゃ、山ノ井君は勝負にならないわよね」


俊之「うるせーな」


三好みよし先生「こら!お前達、何をしているんだ!?」


突然、三好先生が廊下から俊之達に言ってきた。


俊之「掃除をしているんですけど」


三好先生「掃除って、いつまでやっているつもりなんだ!?」


俊之「すみません。すぐに終らせます」


三好先生「それに、このクラスの者は山ノ井だけじゃないか」


俊之「ちょっと事情があって、このメンバーになっちゃったんです」


三好先生「まあ、いい。早く掃除を終らせて、早く帰りなさい」


俊之「はい」


三好先生は俊之達に注意をすると、教室を離れていった。


由佳「山ノ井君の所為で私達まで、とばっちりだわ」


俊之「悪かったって。とにかく、掃除をしなきゃ」


由佳「ほら。木綿子も手伝ってよ」


木綿子「仕方がないわね」


そして4人は俊之の教室の掃除をする。


掃除を終えると、4人は俊之の家へと向かう。


いつもの様に自転車に乗り、他愛のない、おしゃべりをしながら。

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