エピソード46/木綿子の働くファミレスにて

俊之としゆき由佳ゆか隆行たかゆきの3人は木綿子ゆうこの働くファミレスで話を続けていた。


暫くすると、木綿子が料理を運んで来る。


次から次へと持って来る。


全部、持ってくると、自分の分も持って来て、俊之の隣に座った。


俊之「何だよ!?」


木綿子「一緒に食べてきていいから、昼食を先に済ませちゃえって言われたのよ」


俊之「そっか」


木綿子「まだ、そんなにお客が多くないし」


俊之と隆行はいつもの様に勢いよく食べ始めた。


由佳と木綿子は食べながら話を続ける。


由佳「木綿子」


木綿子「何?」


由佳「お土産、おばさんに渡しておいたから」


木綿子「ありがとう。でも、お母さん、居たの!?」


由佳「うん。丁度、出るところだったみたいだけどね」


木綿子「そっか。って、あんた達、暇でいいわね」


由佳「そうなのよ。お土産を渡しに絵美えみんチに行ったら、山ノ井やまのい君が居てさ」


木綿子「そうなんだ」


由佳「それで、山ノ井君が絵美を冷かしに行こうって言うからさ」


木綿子「じゃあ、私も冷かしに来たんだ」


由佳「正直に言うと、そうなんだけどね」


木綿子「全く、何をやっているのよ。由佳もアルバイトをすればいいじゃん」


由佳「私は冬休みが終わってからにしたんだよね」


木綿子「そうなんだ。山ノ井君はアルバイトは休みなの?」


俊之「うん。ちょっと事情があって、冬休み中は休みになっちゃったんだよ」


木綿子「それで、そっちの子は絵美の弟!?」


隆行「はい。隆行です。宜しくお願いします」


木綿子「私は木綿子っていうの、宜しくね。それにしても、不思議な組み合わせだね」


由佳「言われてみると、そうかもしれない」


木綿子「絵美がいれば、そんなに不思議じゃないんだろうけどさ」


由佳「絵美がアルバイトだったから、こうなったってのもあるんだけどね」


木綿子「それより、あんた達、いつまで此処に居る気?」


由佳「分かんない」


俊之「夕方まで居ようかと思っているけど」


木綿子「何を考えているのよ」


俊之「いいじゃねーか。こんだけ注文をしたんだし」


木綿子「そういう問題じゃないわよ」


由佳「木綿子は仕事、何時までなの?」


木綿子「私は6時まで」


俊之「じゃあ、それまで居てやるよ」


木綿子「居てくれなくていいから、早く帰って欲しいわ」


そして4人は食べながら話を続けた。


食べ終わると、木綿子が食器を片付け始める。


俊之「この皿だけ残しておいて」


木綿子「何で?」


俊之「これ」


俊之がテーブルに置いてあったポテトを持ち上げた。


木綿子「だったら、帰ってから食べればいいじゃん」


俊之「細かい事を言うなって」


木綿子「全く」


そして木綿子は他の食器を片付けると、仕事へ戻った。


再び3人になった俊之達は話を続ける。


俊之「隆行」


隆行「何ですか?」


俊之「香織かおりちゃんを呼ぼうぜ」


隆行「俺、昨日、会ったばかりですけど」


俊之「別にいいじゃねーか」


隆行「じゃあ、ちょっと待っていてください。電話をしてみます」


隆行が自分の携帯で香織に電話をする。


由佳「香織ちゃんって誰?」


俊之「隆行の彼女」


由佳「そうなんだ。隆行、彼女がいるんだ」


俊之「生意気だろ!?」


由佳「本当、生意気~」


俊之「それも結構、可愛い子でさ」


由佳「山ノ井君は会った事があるんだ」


俊之「うん。っても、ちゃんと話をした事は一度くらいだけどね」


由佳「そうなんだ」


俊之「クリスマスの時に、ウチで絵美んところと一緒にパーティーをやってさ」


由佳「その話は絵美から聞いていたけど」


俊之「その時に隆行が香織ちゃんを連れて来たんだ」


由佳「なるほどね」


そして隆行が電話を切った。


俊之「どうだった!?」


隆行「すぐ来るって言っていました」


由佳「香織ちゃんって隆行の同級生?」


隆行「そうです」


由佳「本当に中学生のくせに」


隆行「すみません」


俊之「佐藤さとうだって、中学の時は彼氏がいたんだろ!?」


由佳「そうだけどさ。今はいないもん」


隆行「そうなんですか!?」


由佳「なんか、文句でもあんの?」


隆行「いえ。由佳さんに彼氏がいないってのが不思議に思って」


由佳「でしょ~。本当に不思議なんだよね」


俊之「自分で言うなよ」


隆行「姉貴より可愛いと俺は思いますよ」


由佳「嬉しい事を言ってくれるじゃん。隆行」


俊之「俺は絵美の方が可愛いと思うけどな~」


由佳「せっかく、いい気分になっていたのに、わざわざ気分を壊す様な事を言わないでよ」


そして3人で暫く、話を続けた。


20分くらいすると香織がやって来る。


俊之「こっち」


木綿子が応対をしている香織に俊之が声をかけた。


そして木綿子が香織を連れて来る。


木綿子「この子、山ノ井君の知り合い?」


俊之「隆行の彼女なんだよ」


木綿子「そうなんだ。それじゃ、私は仕事に戻らなくちゃ」


木綿子が仕事へと戻る。


俊之「隆行、席を替わるよ」


隆行「別に、このままでもいいんですけど」


俊之「香織ちゃんは隆行が隣の方がいいだろ」


隆行「分かりました」


俊之と隆行が席を入れ替える。


そして隆行の隣に香織が座った。


隆行が香織に由佳を紹介する。


隆行「姉貴の友達の由佳さん」


香織「立花たちばな香織といいます。宜しくお願いします」


由佳「こちらこそ、宜しくね」


香織「今日は絵美ちゃんは居ないの?」


隆行「姉貴はバイトなんだ」


香織「そうなんだ」


俊之「香織ちゃん、飯は食べた!?」


香織「はい」


俊之「じゃあ、飲み物だけでも頼みなよ。俺の奢りだからさ」


香織「いいんですか?」


俊之「遠慮しなくていいよ」


そして木綿子を呼んで注文をする。


俊之「そんじゃ、香織ちゃんも来たところで、おやつ」


そう言いながら、ファーストフードで買ってきたポテトを空の皿の上にあけた。


由佳「もう冷めちゃっているね」


俊之「贅沢を言っているんじゃねーよ」


木綿子が香織の注文した飲み物を持って来て、すぐに席を離れていく。


そして4人はポテトを摘みながら話をする。


由佳「こんな可愛らしい彼女がいるなんて。隆行、やっぱり、生意気ね」


俊之「本当、中学生の内から、こんなに可愛い彼女を連れていると、その内、バチが当たるぜ」


隆行「バチって、何なんですか!?」


俊之「冗談だって」


香織「俊君は中学生の時に彼女はいなかったんですか?」


俊之「そうなんだよ。俺は中学の時は全然、モテなかったからさ」


由佳「全然って程ではないと思うけど」


俊之「そうなの!?」


由佳「だって、絵美はずっと山ノ井君の事を好きだった訳でしょ。 他にも何人かは山ノ井君の事をいいって言っていた子はいるよ」


俊之「そうだったんだ」


香織「俊君って、モテるんですね」


由佳「モテるって程でもないのよ」


香織「そうなんですか!?」


由佳「余り褒めると調子をこくからさ」


俊之「何だよ、それ」


香織「由佳さんって面白いですね」


隆行「由佳さん、さっき、中学の時は彼氏がいたって言っていましたけど、 どんな感じだったんですか?」


由佳「どんな感じって?」


隆行「いや、だから、中学生の時って、どういう付き合いをすればいいのかって。 ちょっと参考にさせて貰えればと」


香織「私も知りたいな~」


由佳「隆行達はどうしているの?」


隆行「俺達は外で、例えば公園とかで、くっちゃべったりとかしているんですけど」


俊之「それで十分じゃん」


由佳「私は彼の家でよく遊んでいたけどね」


隆行「そうなんだ」


由佳「彼の家、親が共働きだったから、夕方までは誰も居なかったからさ」


隆行「ウチは母さんが居るからなぁ」


香織「ウチもお母さんはいつも居る」


俊之「いいじゃねーか。もう隆行んところの親とは顔を合わせているんだし」


隆行「そうなんですけど。やっぱり、親が居ると、連れて来たりするのは躊躇いがあるんですよ」


俊之「クリスマスの時は平気だったじゃん」


隆行「それは俊君をあてにしていたんですよ」


俊之「何だよ、それは」


由佳「女の子の立場からしても、彼氏の親が居たら、気を遣っちゃうと思うよ」


香織「そうですよね」


俊之「そんなのは最初だけじゃん。仲良くなっちゃえば、こっちのもんだって」


由佳「あんた達の事は参考にならないんだって。ね」


由佳が隆行に相槌を求める。


隆行「そうです。だから、由佳さんに訊いたんですけど」


俊之「何だよ、それ。隆行、俺に憧れているんじゃなかったのかよ!?」


隆行「憧れと現実は別ですよ」


由佳「隆行、こんなのに憧れているの!?」


俊之「こんなのってのは何なんだよ」


隆行「俊君みたいには中々、いかないから、大変なんですよ」


香織「由佳さんは、その彼と今も付き合っているんですか?」


由佳「いや、それは中学の時の話。今は彼氏、いないんだよね」


香織「あ、すみません」


由佳「いいのよ。気にしないで」


香織「でも、由佳さんって、とても素敵なのに、不思議だな」


由佳「香織ちゃんも、ありがとうね」


俊之「贅沢ばっかり、言っているからだって」


由佳「うっさいわね。私に見合う彼氏なんて、そう簡単には見つからないってだけの事よ」


俊之「言い様って、あるもんなんだな~」


由佳「本当に一々、突っかかってこなくてもいいじゃない」


俊之「あはは」


由佳「こんなのは放っておいて。話を続けるけど」


隆行「はい」


由佳「実際のところはさ、ウチのお父さんが、すごく煩いんだよね」


香織「そうなんですか!?」


由佳「うん。男の子の事に関しては、やたらと煩くてさ」


香織「ウチのお父さんも煩そうな感じだけど」


由佳「そうなの?」


香織「まだ、彼氏の話とかした事はないんだけど、私、一人娘だからなのか、お父さんからは溺愛されちゃっている様には感じるんです」


由佳「香織ちゃんも一人娘なんだ。ウチもそうなんだよね」


隆行「なんか、そんな話を聞くと不安になってくるな」


俊之「佐藤んチの親父さんが特別なだけだって思うけどな」


由佳「そうよね。でも、隆行と香織ちゃんも気をつけた方がいいとは思うよ」


香織「そうですよね」


由佳「私は中学の時に付き合っていた彼氏の事、お父さんにバレちゃって、無理矢理に別れさせられちゃった事があるんだ」


香織「そうなんだ」


隆行「あ~、益々、不安になっていく」


俊之「あはは」


由佳「まあ、そこまではないのかもしれないけど、バレるとマークが厳しくなったりはするかもしれないからね」


隆行「そうだよな~」


俊之「マークが厳しくなるくらいなら、いーじゃねーか。 それよりも、親に隠れて付き合ったりする方が良くないと思うけど」


由佳「あんた達は親公認だからいいわよ。でも、普通は中々、そうはいかないもんよ」


俊之「そうか!?」


由佳「だから、山ノ井君の言う事なんて、気にしない方がいいわよ」


隆行「そうですよね。俺もそう思います」


俊之「何だ!?隆行、裏切るのか!?」


隆行「裏切るとか、そういうのじゃないですよ。ただ、俺は香織と一緒にいたいだけなんですって」


俊之「そっか。香織ちゃんは、どうなの?」


香織「え!?私も隆行と同じかな」


由佳「あんた達、いいわね。私なんて、ウチがそんな感じだからさ、今一、積極的に彼氏を作ろうって気になれなかったりもするんだよね」


俊之「何!?同情をして欲しいわけ?」


由佳「本当、山ノ井君って、むかつく」


隆行「男の子の方から告られたりはしないんですか?」


由佳「時々、そういう事もあるんだけどさ。勘弁してって感じの子ばかりなんだよね」


香織「それ、本当に困りますよね」


由佳「香織ちゃんも、そういう事があったの!?」


香織「はい。何度か、ですけど」


俊之「そりゃ、香織ちゃんも可愛いもんな」


香織「そんな~」


香織が少し照れる。


由佳「私も中学の時から1年に2~3回くらいだけどね」


俊之「佐藤って、そんなに告られてんの!?」


由佳「そうよ。でも、今まで付き合ってもいいって思えたのは1人だけだったけど」


俊之「それが川崎かわさきだったって事か」


由佳「そういう事」


香織「さっき、話をしていた中学の時の彼氏ですか?」


由佳「そう」


香織「私も隆行だけだったな~」


由佳「隆行って結構、モテるんじゃないの!?」


隆行「え!?俺ですか!?どうなんだろう?」


俊之「香織ちゃん、その辺はどうなの?」


香織「結構、女の子に人気はあるかな」


由佳「隆行ってルックスは山ノ井君よりも、ずっといいもんね」


俊之「ずっとってのは何なんだよ」


由佳「何!?あんた、隆行よりもカッコイイとでも思っているの!?」


俊之「そこまでは思ってねーけどよ。ずっとってのはないんじゃねーのって」


隆行「俺は俊君、カッコイイと思いますよ」


俊之「男に言われてもな~。香織ちゃんは、どう思う?」


香織「え!?」


俊之「正直に言ってくれて、いいからさ」


香織「えーっと」


香織は少し戸惑ってから、続けて答える。


香織「やっぱり、ルックスだと隆行の方がいいけど、」


俊之「それは、そうだよな」


香織「でも、俊君も悪くはないと思います」


由佳「あははは」


俊之「悪くは、ない、か」


俊之は苦笑をした。


由佳「山ノ井君なんて、そんなもんでしょ」


俊之「うるせーな~」


香織「でも、中身は隆行よりも、ずっとカッコイイと思いますよ」


由佳「あははは。可笑しい~」


俊之「今更、フォローをされてもな~。余計にカッコ悪ぃって」


また俊之は苦笑した。


香織「すみません」


俊之「気にしないでいいよ。でも、それは隆行に謝った方がいいんじゃない!?」


香織「え!?」


隆行「いいんですよ。俺も中身に関しては、俊君に敵わないって思いますから」


俊之「俺って、そんなに中身がいいか!?」


俊之が由佳に訊いた。


由佳「私からしたら全然」


俊之「全然、なのかよ」


由佳「でも、面倒見はいいから、年下の子からは好かれるんじゃないかな」


隆行「本当、俺もすごく話易いし」


香織「私もそう思います。最初は馴れ馴れしいとか思っちゃったけど」


由佳「あはは。香織ちゃんも、そう思ったんだ。本当に山ノ井君って馴れ馴れしいんだよね」


俊之「そうか!?」


由佳「そうよ。山ノ井君、時々、私や木綿子の事を女の子だって事、忘れているでしょ!?」


俊之「そんな事はないけどな」


由佳「絵美の彼氏じゃなかったら、山ノ井君と、こんなに親しく話をしたりはしていなかったと思うんだ」


俊之「それは、そうだろうな。俺もそう思うよ」


隆行「俺達も俊君が姉貴の彼氏じゃなかったら、知り合う事すら、なかったのかもしれない」


香織「そうだね」


俊之「という事は、絵美が中心だって事なのか!?」


由佳「そうみたいだね」


そして4人は夕方まで、おしゃべりを続ける。


ファミレスの方は俊之達が食事を終えた後くらいから、客の方も増え始めて、木綿子は忙しそうだった。


4人は木綿子の仕事が終る前にファミレスを出る。


隆行は香織を送りに行った。


俊之は絵美の家へ、由佳は自宅へと帰って行く。


辺りは丁度、薄暗くなり始めたところだった。

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