エピソード43/お年始
俊之と絵美が俊之の母の実家にやって来た。
俊之が玄関のドアを開けて、二人は中に入る。
俊之「明けまして、おめでとうございます」
絵美「明けまして、おめでとうございます」
家の奥の方から声が聞こえる。
「俊之、来たみたいだぞ」
誰かは分からないが、叔父さんの誰かであろう。
すると、
続いて、俊之の母が出迎えに来る。
俊之の母「絵美ちゃん、いらっしゃい」
晴実「お姉ちゃん、遊ぼ~」
聡史も絵美の方へ近づく。
俊之「晴実と聡史は絵美の方がいいのかよ」
俊之の母「晴実、聡史、遊ぶのは、ちょっと待っていなさい。ほら、あんた達、さっさと上がっちゃいなさい」
俊之が家に上がる。
絵美「お邪魔します」
絵美も家に上がった。
そして二人はリビングに通される。
リビングに来ると、すぐに俊之は他の子供達に囲まれてしまう。
リビングの奥にある和室では親戚の大人達が宴会をしていた。
そして俊之と絵美は和室まで行って、親戚の人達に絵美を紹介する。
俊之は褒められたり、冷かされながら、お年玉を貰う。
親戚の人達は絵美にもお年玉をやろうとする。
絵美「俊君~、どうしよう~」
俊君「いいよ。貰っておきなよ」
絵美「でも~」
俊之「正月に大人は子供と遭ったら、お年玉をやらなきゃならないんだから」
俊之の母「そうよ。遠慮なんてしなくていいから」
俊之の母が絵美に声をかける。
絵美「それじゃ、どうもありがとうございます」
絵美は仕方がなさそうにお年玉を受け取る。
一通り挨拶を済ませると、二人はリビングに戻った。
途端に二人は再び、子供達に囲まれる。
俊之「そんじゃ、そこの公園にでも行くべ」
子供達がはしゃぐ。
「おい。誰か、大人が1人、付いて行きな」
また叔父さんの誰かが言った。
そして俊之と絵美、聡子と光、子供達はすぐ近くの公園へと行く。
俊之はサッカーボールを持って来ていた。
小さい子供は思い思いに好きなおもちゃを持って来ている。
俊之「絵美、チビ共の方を頼むな」
絵美「分かった」
聡子「私も一緒に見ているから、大丈夫よ」
そして俊之と光は保育園児以上の男の子4人を連れてサッカーを始める。
絵美と聡子は晴実の他、女の子2人と聡史を連れて砂場へと行った。
絵美と聡子は子供達の相手をしながら話をする。
聡子「絵美ちゃん、今日はどうもありがとうね」
絵美「いえ。私、子供は好きだし」
聡子「そうみたいね。それに晴実と聡史はもう、絵美ちゃんにべったり」
絵美「晴実ちゃんと聡史君、本当に可愛くて」
聡子「ありがとうね。晴実も聡史も去年、絵美ちゃんに遊んで貰ってから、絵美ちゃんと遊びたがって大変だったのよ」
絵美「そうだったんですか!?」
聡子「それまでは俊之と遊びたがって大変だったんだけど、今日はもう俊之の事なんて目に入っていないみたいだもんね」
絵美「あはは。俊君に焼き餅を妬かれちゃいそう」
聡子「そうなんだよね。俊之も本当に子供が好きでさ」
絵美「俊君も自分で言っていました」
聡子「そっか。それで、しかも俊之、子供を遊ばせるの、すごく上手でさ」
絵美「そうなんだ」
聡子「今日はウチ等だけだから、大丈夫なんだけど」
絵美「他に誰かいると何かあるんですか?」
聡子「うん。もっと人が大勢、集まる様なところで子供の相手をさせているとさ」
絵美「はい」
聡子「見ず知らずの子供達まで、集まって来たりしちゃうんだよね」
絵美「へぇ~」
聡子「それで俊之ったら、そういう子供達も平気で混ぜちゃうからさ」
絵美「そうなんだ」
聡子「そうすると、今度はウチ等の子供達が相手をして貰える量が減っちゃうじゃん」
絵美「はい」
聡子「それでウチ等の子供達が、いじけっちゃったりするのよ」
絵美「そうなんだ~」
聡子「可笑しいでしょ~」
絵美「はい。でも、聡子さんも子供が好きなんですね」
聡子「そうね。私も子供は好きだけど、俊之には負けるかな」
絵美「聡子さんに、ちょっと訊きたい事があるんですけど、いいですか?」
聡子「何?」
絵美「俊君が小さい頃、聡子さんに、よく遊んで貰っていたって言っていたんですけど」
聡子「そうよ」
絵美「俊君って、どんな子供だったんですか?」
聡子「そうね~。すごく可愛かったよ。小さい時は」
絵美「そうなんだ」
聡子「本当に私にべったりでさ~」
絵美「へぇ~」
聡子「そんなんだったから、私も俊之、可愛くて、可愛くて、あちこち連れ回したりもしたんだけどね」
絵美「そうなんだ」
聡子「でも、大きくなるにつれて、どんどん生意気になってきてさ」
絵美「あはは。私の両親も俊君の事、生意気だって言っていました」
聡子「そうなんだ。笑えるわ~」
絵美「高校生らしくないって」
聡子「あはは。でも、そんな生意気なところも私からしたら可愛らしくてさ」
絵美「そうなんだ」
聡子「俊之が中学生になるくらいまでは、よく遊んでやったものよ」
絵美「へぇ~」
聡子「でも、俊之が中学生になると、他にチビ共が出来ちゃってきてさ」
絵美「はい」
聡子「今度は俊之が、そういうチビ共の相手をする事になったんだよね」
絵美「そうだったんだ」
聡子「そうしたら、俊之って子供の相手をするのが上手でさ」
絵美「はい」
聡子「子供達には本当にモテモテで。でも、女の子には全然、モテなかったみたいでさ」
絵美「そんな事はないと思うんだけどな~」
聡子「そうなの!?」
絵美「はい。そんなに、すごくモテるって訳じゃなかったけど、私の知っている子だけでも、何人かは俊君の事をいいって言っていた子がいるから」
聡子「でも、中学生の時って、全然、彼女とかはいなかったみたいじゃん」
絵美「俊君、中学生の時はなんか、近寄り難い感じだったんですよ」
聡子「そうなんだ」
絵美「だから、私も他の子達も俊君の事、気になっていても話しかけたりとか出来なくて」
聡子「へぇ~。私からすると、そういう俊之の方が、すごく意外で変な感じ」
絵美「でも、高校生になったら、すごく気さくで優しい感じになっていたから」
聡子「そう」
絵美「私が友達と一緒に俊君は好きな女の子がいるの?って、訊きに行ったんです」
聡子「そうなんだ」
絵美「そうしたら、俊君が私の事を、ずっと好きだったんだって言ってくれて」
聡子「なるほどね。 私、俊之に彼女が出来たって聞いた時、どんな子なんだろうって、すごく気になっていたんだけど」
絵美「そうなんですか!?」
聡子「うん。それで去年、絵美ちゃんに会ってみて、すごくお似合いだなって思ったんだ」
絵美「えへへ」
聡子「そして、今日、こうして話をしていて、もう俊之には絵美ちゃんしかいないんじゃないかって」
絵美「そんな事はないですよ~」
聡子「またまた、謙遜をしちゃって。
絵美「だって、みんな、可愛いんだも~ん」
聡子「本当にもう、俊之にはぴったりじゃん」
絵美「そうですか!?」
聡子「それに俊之は絵美ちゃんと結婚をするつもりでいるみたいだしね」
絵美「私も俊君と結婚をしたいって思っているけど」
聡子「だったら、謙遜なんて止めなさいよ」
絵美「そんな事を言われても」
聡子「俊之には私しかいないんだから、くらいに思っちゃいなさい」
絵美「それだったら、私には俊君しかいないって方が正しい様な気がします」
聡子「そっか。とにかく、長い付き合いになりそうだから、これからも宜しくね。絵美ちゃん」
絵美「いえ。こちらこそ、宜しくお願いします」
そして絵美と聡子は子供達の相手をしながら話を続けた。
暫くすると、昼食の時間になる。
聡子「それじゃ、私達は先に戻ろう。この子達に先に、お昼を食べさせないと」
絵美「はい」
聡子「俊之~、光~、私達は先に戻っているわよ」
聡子はサッカーをしている俊之達に声をかけた。
光「はいよ」
光が返事をした。
聡子「あんた達、お昼を食べに戻るわよ」
「は~い」
子供達が返事をした。
そして絵美と聡子は俊之の母の実家へと戻る。
俊之の母「聡子、あんたは先にお昼を食べちゃいなさい。その間は私が子供達を見ているから」
聡子「分かったわ」
そう言うと、聡子は台所で手を洗ってから、大人達の宴会に混ざって食事をする。
俊之の母「絵美ちゃんは俊之が戻って来てからの方がいいよね!?」
絵美「はい。そうして頂けると助かります」
俊之の母「それじゃ、それまで私を手伝って頂戴」
絵美「はい」
俊之の母と絵美は子供達を連れて、洗面所へ行き手を洗わせる。
絵美も一緒に手を洗う。
そしてリビングに戻って、子供達に昼食を食べさせる。
暫くすると、俊之達も戻って来た。
丁度よく、先に戻った子供達が昼食を食べ終わる。
そして俊之達も先ず洗面所へ行って手を洗う。
聡子が食事を終えてリビングに戻る。
聡子「絵美ちゃん、替わるわよ」
絵美「はい。お願いします」
聡子が食事を終えた子供達を遊ばせる。
そして俊之達が戻って来ると、残りの子供達がリビングで食事を始めた。
俊之と絵美、そして光は大人達の方へ行き、宴会に混ざって食事をする。
テーブルの上にはお寿司や揚げ物、煮物やサラダ等がたんまりとあった。
俊之はすぐに勢いよく食べ始める。
絵美もそんな俊之につられて食べ始めた。
俊之「でしょ」
俊之は食べながら答えた。
亨「弘の言う通りだ」
光「うるせーな~、兄貴達は」
弘「絵美ちゃん」
絵美「何でしょうか?」
絵美は食べるのを一旦、止めて応える。
弘「光に友達を紹介してやってよ」
絵美はどう答えたらいいのか分からずに俊之の方を見る。
弘の嫁「あなた、止めなさいって。絵美ちゃん、困っているじゃない」
弘の嫁がそれを見て、弘を窘める。
光「絵美ちゃんの友達じゃ、俺、何を言われるか分かんねーって」
亨「何、贅沢を言っているんだ。だったら、さっさと嫁さんを連れて来いよ」
亨の嫁「あなた、光さんだって、色々とあるんでしょうから」
聡子の夫「
弘「そりゃ、そうかもしれねーけど、俊之に先を越されたら恥かしいぞ」
祖父「弘、いい加減にしろよ」
祖母「そうよ。今日は絵美ちゃんも来ているんだから」
弘「分かったよ。ゴメンネ、絵美ちゃん」
絵美「いえ」
光「本当にいつも、いつも、俺を酒の肴にしやがるんだから」
亨「酒の肴にされたくなかったら、早く結婚をしろって」
光「今年は俊之が彼女を連れて来るって聞いたから、俊之の方が酒の肴になると思っていたのによ~」
弘「それは残念だったな」
光「余計に酷くなっているじゃねーか」
俊之「いつも、こんな感じなんだ」
絵美「そうなんだ」
祖母「絵美ちゃん、ごめんなさいね。酔っぱらいばかりで」
絵美「いえ。楽しませて頂いています」
光「俊之、早く食べちゃおうぜ」
弘「光、また逃げ出す気か!?」
光「当たり前だろ。酔っぱらいの相手をするより、子供達の相手をしている方がおもしれーもん」
弘の嫁「そうよね~。光ちゃん、いつもありがとうね」
亨の嫁「本当に光さんと俊ちゃんには、いつも助けられているわ。私からもありがとう」
光「いいんですよ。本当に子供達、おもしれーから。な」
光が俊之に相槌を求める。
俊之「うん。俺も子供と遊ぶのは好きだし」
亨の嫁「それに今日は絵美ちゃんも、どうもありがとう」
弘の嫁「そうそう。私からもありがとうね。絵美ちゃん」
絵美「いえ。私も子供達と遊ぶのは楽しいから」
亨「本当に絵美ちゃんはいい子だね~」
弘「俊之、何処で見つけてきたんだ?」
俊之「何処って、同じ学校の子ですよ」
弘「そうか」
弘の嫁「本当にあなた、今日は飲み過ぎじゃないの!?」
弘「すまん、すまん」
亨「いいじゃねーか。正月くれーな」
亨の嫁「あなたも、いい加減にした方が良さそうね」
祖父「絵美ちゃん。俊之の事をよろしく頼むよ」
絵美「はい。私の方こそ、俊君に頼ってばかりですけど」
聡子の夫「本当にいい子だね~。晴実や聡史が気に入る訳だ」
弘の嫁「そうなの!?」
聡子の夫「そうなんですよ。去年一度、義姉さんのところで遊んで貰ったらしくて、それから絵美ちゃんと遊びたがって大変でしたよ」
弘の嫁「それじゃ、ウチの子達も、そうなっちゃうのかしら!?」
亨の嫁「でも、本当に俊ちゃんには、お似合いよね」
聡子の夫「そうですね~」
弘の嫁「俊ちゃん、良かったわね」
俊之「はい。本当に絵美と出会えて良かったって思います」
弘「俊之、絵美ちゃんと結婚をする気なのか?」
弘の嫁「あなた。いきなり何を訊いているのよ」
俊之「一応、大学を卒業してからって、考えていますけど」
弘の嫁「あら。そうなの!?」
亨の嫁「絵美ちゃんは、どうなの?」
絵美「私は俊君に全部、任せています」
弘「おい。聞いたか!?光」
光「聞いているよ」
弘「お前、益々、焦らないとならねーぞ」
俊之「でも、まだまだ、先の話ですから」
光「俊之の言う通りだよ」
亨の嫁「そうよね。俊ちゃん達、まだ高校生になったばかりだしね」
亨「それでも相手がいるだけ偉いってもんだ」
弘「そうだよな~」
光「うるせーな~。俊之、まだか!?」
俊之「もう、いいですよ。な」
俊之が絵美に訊く。
絵美「うん」
光「それじゃ、行こうぜ」
そして光と俊之と絵美は立ち上がって、リビングの方へ移動をする。
弘「また光が逃げ出したぞ」
弘の嫁「あなた、本当にいい加減にしてよ」
リビングに移動をした光が子供達の相手をしていた聡子に話しかける。
光「聡姉、替わるよ」
聡子「そう!?じゃあ、お願い」
そして俊之の母がリビングに戻って来る。
俊之の母「チビ達はお昼寝をさせて来たから」
光「それじゃ、後は俺と俊之達で子供達の面倒は見るから、聡姉は今日は、こっちでのんびりしなよ」
聡子「こっちにいたって、のんびりなんか出来ないけどね」
光「そっか」
聡子「でも、頼むわ」
光「それじゃ、また公園へ行って遊ぶか」
男の子供3人と女の子供1人が再び、はしゃぐ。
そして光と俊之、絵美、子供達が公園へと向かう。
天気はよく晴れていたが、寒さはまだ冬の真っ盛り。
でも、子供達には、そんな事は関係ないとばかりに元気溌剌としていた。
光と俊之、絵美はそんな子供達と楽しそうに遊んでいる。
そんな正月の午後の風景であった。
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