エピソード30/アルバイト

今日もまた、絵美えみ由佳ゆか木綿子ゆうこの3人が俊之としゆきの家に来ていた。


木綿子「なんか、最近、山ノ井やまのい君チに入り浸りだね」


絵美「そう言えば、そうだね」


由佳「たまにはウチに来ても、いいんだけどさ~」


木綿子「まだ暑い内は由佳んチも結構、行っていたけどね」


絵美「由佳んチはクーラーがあるからね~」


由佳「何、ウチはクーラーだけの価値なの?」


絵美「あははは」


木綿子「そういう訳じゃないけど」


由佳「なんか、山ノ井君チ、居心地がいいもんね」


木綿子「そうだね。私達以外、誰も居ないからなのかな」


由佳「ウチじゃ、私の部屋には居なくても、家にはいつもお母さんが居るもんね」


絵美「ちょっとの違いなんだけどね」


木綿子「やっぱり、同じ部屋に居なくても、同じ屋根の下に誰かが居たら、少しは気を遣っちゃうもんね」


由佳「こんな事、山ノ井君が聞いたら、何て言うかな?」


絵美「他に誰も居なくても、他人の家だったら、少しは気を遣えよって言いそう」


由佳「あはは。本当にそう言いそう」


絵美「でね。俊君はOKだって」


由佳「そうなんだ」


絵美「それで明日は俊君、アルバイトが休みだからさ」


木綿子「何!?明日から勉強を始めるの?」


絵美「駄目!?」


由佳「確かに明日からってのは、余り気が進まなかったりもするけど」


木綿子「そうだよね~」


由佳「どっちみち、大してする事はないし」


絵美「あはは」


木綿子「結局、そういう事になっちゃうんだよね」


絵美「それとさ~」


由佳「何?」


絵美「私、アルバイトをしようと思っているんだけど」


由佳「そうなんだ」


木綿子「絵美、私もそれ、考えていた」


由佳「木綿子もなの!?」


木綿子「だって、ウチは由佳んチみたいに金持ちじゃないし、小遣いも少ないから、アルバイトでもしようかな~って」


由佳「私だって、そんなに沢山は小遣いを貰っていないって」


木綿子「それでも私よりは、ずっと多いじゃん」


由佳「私だって、もっと小遣いは欲しいくらいだけど」


木綿子「何、贅沢を言っているのよ。絵美もそう思わない!?」


絵美「うん。私もそう思う」


由佳「じゃあ、絵美も小遣いが足らなくて、アルバイトをするの?」


絵美「それも、あるけど」


木綿子「けど!?」


絵美「来年の夏休みにさ、俊君と沖縄へ行きたくてさ」


木綿子「何それ。小遣いの為だけにアルバイトをしようとしていた私がアホらしいじゃん」


由佳「あはははは」


木綿子「何、笑っているのよ」


由佳「ごめん、ごめん。でも、沖縄か~、羨ましいよね」


木綿子「本当」


絵美「えへへ」


由佳「だったら、私もアルバイトをしてお金を貯めて、ついてっちゃおうかな」


木綿子「それ、いいね~」


絵美「あはは。私はそれでも構わないけど、さすがに、それは俊君が嫌がると思うよ」


由佳「分かっているわよ。冗談に決まっているでしょ」


木綿子「こっちだって、沖縄に行ってる間中、見せ付けられたら、たまったもんじゃないわよね」


由佳「そうそう」


絵美「えへへ。それでアルバイトなんだけどさ」


木綿子「うん」


絵美「木綿子も一緒にやらない!?」


木綿子「一緒にって、絵美は何のアルバイトをしようと思っているの?」


絵美「私はファーストフードでも、やってみようかな~って」


由佳「何で?」


絵美「俊君が私だったら、ファーストフードが似合うって言っていたから」


由佳「また、俊君!?」


絵美「ゴメンネ~」


木綿子「確かに、絵美だったら似合うと私も思うな」


由佳「それは、そうだね」


木綿子「でも、私はちょっと勘弁かな」


絵美「何で?」


木綿子「私はファミレスで働いてみたいな~って」


由佳「そうなんだ」


木綿子「だって制服が可愛いじゃん」


由佳「本当にあの制服は可愛いよね」


絵美「じゃあ、私もファミレスにしようかな~」


由佳「私も働こうかな~」


木綿子「由佳もアルバイトをする気なの?」


由佳「だって、絵美も木綿子もアルバイトをするんじゃ、私だけ仲間外れになるみたいじゃん」


木綿子「でも、そうなると益々、同じ所で働くなんて、難しくなると思うよ」


絵美「俊君も同じ事を言っていた」


由佳「そっか~」


絵美「例え、同じ所で働けても、同じ時間には働けないって」


木綿子「そうそう。それで絵美、時間はいつにするつもりなの?」


絵美「私は日曜日、限定」


木綿子「私も最初は、それくらいがいいかな~」


由佳「それじゃ、私もアルバイトをしなくちゃならないじゃん」


絵美「何で?」


由佳「だって、二人がアルバイトをしちゃっていたら、どっちみち私とは遊べないでしょ」


絵美「あはは。そうだね」


由佳「何、笑っているのよ!?」


絵美「私も俊君が日曜日はアルバイトだから、日曜日にしようって」


木綿子「なるほどね。でも、みんなで時間を合わせようと思ったら、一緒に働くよりも別々に働いた方がいいんじゃないかな」


絵美「だったら、私はやっぱり、ファーストフードにしようかな」


木綿子「絵美はコロコロ変わるわね」


絵美「ははは」


由佳「じゃあ、私は何処で働こうかな~」


絵美「俊君が言っていたので、もう1つはコンビニがあるけど」


由佳「あ、それ、いいかも」


木綿子「いいんだ」


由佳「だって、コンビニって仕事は楽そうじゃない!?」


木綿子「そうかな~。楽かどうかだったら、ファーストフードの方が楽な気がするけど」


由佳「そう!?」


木綿子「ファーストフードはご飯時だけじゃない!?忙しいのは」


由佳「なるほどね」


絵美「そっか~。そうだといいな~」


由佳「でも、コンビニも暇そうに見えるけど」


絵美「私もそう思うな」


木綿子「まあ、似たり寄ったりかもね」


由佳「そっか」


絵美「コンビニも特定の時間だけは忙しいのかな!?」


木綿子「そうだと思うよ」


由佳「確かに時々だけど、レジに人が並んでいたりはするもんね」


絵美「ファミレスは大変そうだよね」


由佳「そうだよね」


木綿子「でも、そんなには変わらないと思うよ」


由佳「ファミレスって、ご飯時以外でも結構、人が居たりする気がするけど」


木綿子「人が居ても、そんなに多くなければ、そんなに大変じゃないと思うよ」


絵美「でも、混雑している時は本当に大変そう。ファミレスって」


木綿子「それは何処も一緒だって」


絵美「そっか~。ファーストフードもそうなのかな~」


木綿子「まあ、やってみれば分かるわよ」


由佳「ねぇ、二人はいつからアルバイトを始める気なの?」


木綿子「私はすぐにでも、やろうかな」


絵美「私は再来週からがいいな」


木綿子「そうなんだ」


絵美「来週の日曜日は俊君とデートをするんだ」


木綿子「なんか、働く気がしなくなってきた」


由佳「あははは。でも、そうだよね~」


絵美「だったら、由佳と木綿子も早く彼氏を作りなよ~」


由佳「うっさいわね。あんた、最近、いい気になってない!?」


絵美「そんな事はないよ~」


由佳「絵美に彼氏がいるってだけでも許せないのに、勉強でも私達を抜いちゃってさ」


絵美「勉強は私が頑張ったからだも~ん」


由佳「やっぱり、このままじゃ、絵美の性格が、どんどん捻じ曲がっていっちゃうわ」


木綿子「あははは。本当、私達が絵美の目を覚まさせてあげないとね」


由佳「本当、本当」


絵美「何、それ~」


由佳「明日から、しっかり勉強をするわよ」


木綿子「ははは」


絵美「それより、アルバイトはどうするの~?」


木綿子「私はファミレスにするよ」


由佳「じゃあ、私はコンビニ」


木綿子「絵美はファーストフードでしょ」


絵美「うん」


木綿子「だったら、後は自分で探せばいいだけじゃん」


絵美「木綿子って冷たいね」


木綿子「そう!?」


由佳「確かに木綿子って、そういうところはあるけどね」


木綿子「そうかな~」


由佳「でも、木綿子の言う事も、もっともだったりはするし」


木綿子「でしょ~!?」


絵美「ふ~ん」


木綿子「何、拗ねてるのよ!?」


由佳「やっぱり、いい気になっているんだ」


絵美「いい気にはなってないよ~」


木綿子「あははは」


由佳「本当に絵美って、いじり甲斐があるよね」


木綿子「うんうん」


絵美「もう~」


由佳「まあ、いいじゃないの。絵美には山ノ井君がいるんだし」


絵美「関係ないじゃ~ん」


由佳「細かい事は気にしない」


木綿子「そうそう」


絵美「ぶー」


由佳「それじゃ、私達はそろそろ帰るね」


木綿子「そうだね」


絵美「そっか」


由佳が立ち上がる。


木綿子「絵美は家事をしなきゃならないんじゃないの!?」


木綿子が立ち上がる。


絵美「別に毎日はしなくてもいいんだけど、由佳達が帰るんなら何処か掃除でもする」


絵美が立ち上がる。


3人はリビングを出て、玄関へ向かった。


由佳「そんじゃ、またね」


木綿子「また明日」


絵美「バイバイ」


由佳と木綿子は玄関を出て、自転車に乗り自宅へと帰っていった。


絵美はリビングに戻って、リビングの掃除を始める。


秋の夕陽の光が、リビングの窓から部屋の中に差し込んでいた。

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