第2話 厄介な道
世の中にはたくさんの道があり、家があり、森や線路もある。
大抵の場合は特に気にしなくてもいいのだが、時にはさけて通った方がいい道というのもある。
そういう道は一度できてしまえば僕にはどうしようもない。
仮に僕が何かしても、その時はいいとしてもきりがないし、別に依頼でもないかぎりほおっておくのだ。
今回はそんな道について話そう。
僕が初めてそこを通ったのは13歳の春だった。
中学で知り合った友人【ハルちゃん】の家に初めて呼ばれた日のことだ。
前にも言ったが、僕は目がいい。
見たくもないものが見えるので、普段はメガネをして見えなくしている。
その友人の家は道路を曲がり、細い獣道のような庭を少し入っていくとある。
木や竹に囲まれている広い庭の家で、周りからは見えないような所に建っていた。
普通の玄関だと思った。
ピンポーン
僕たちが玄関に入ってすぐチャイムが鳴った。
「ああ、よくなるけどきにすんな」
ニコッと笑ってハルちゃんは何でもないかのように部屋へ案内してくれた。
僕は部屋に入って違和感を感じた。
部屋の中を見渡すとそれはすぐにあった。
お札だ。
しかも特別なお祓いでしか使わないようなものだった。
僕の家で見た事があるそのお札は、霊そのものを寄せ付けない特殊なものだ。
呪物の封印や、悪霊から家をまもるために玄関にはってあるのはわかる。
こんなものが部屋に張ってある家など見た事がない。
その後他の部屋を見る事があったのだが、全部屋に貼ってあるのだ。
僕は不思議に思った。
そして、ハルちゃんにいったのだ
「変な事をいうようだけど、この家は普通じゃないよ。
お祓いとかしたことあるのかな?」
「まあな。
俺はずっとすんでるからあんまり気にならないけどな。
音はしょっちゅう聞こえるけど見えない事が多いよ。
もしかしておまえもみえんのか?」
「まあ少しは見える事もあるかな。
これでも僕の家は拝み屋なんだ。
僕も少しはわかるよ」
「まじで!?
んじゃあさ!
俺たちで調べようぜ!!」
「ほほう!!
おもしろそうじゃないか」
僕達は悪のりしてそんな遊びをはじめたんだ。
「なにからはじめる?」
ハルちゃんはワクワクしながら僕に聞く。
「原因を探ろうか。
家か土地に取り憑いてるのか、はたまた人か。
なにか知ってる事はある?」
僕は得意げに話した
ハルちゃんは思い出すように語る。
「この家は俺のじいちゃんがたてたんだ。
なんでもこの辺りは大きな屋敷だったんだけど、金がなくなって土地を売ったんだ。
それでじいちゃんが買って家をたてたんだ。
でな?家の周りを畑にしたくて掘ったらなんと!
人骨やら昔の小銭がでてきたんだ!
しかも調べたらこのあたりは昔墓だったんだよ!!」
「なるほどね、墓か、それは厄介だな」
「でもそれだけが原因じゃないとかってばあさんがいってたな」
墓ってだけでも十分なものだが、まだあるのか。
「調べにいこう」
僕たちは家の周りを散策することにした。
まずは庭をみるために外にでようと玄関に向かったときだった。
玄関の曇りガラス越しに、人影がみえたのだ。
それは赤い影のようなもので、メガネをかけた状態でもみえた。
ピンポーン
チャイムが鳴る。
「またかよ」
ハルちゃんには見えていないようだった。
「まって、なにかいる」
ピピピッピピピピピピピンポーン!
「おわあ!!」
ハルちゃんが驚いて僕を見た。
僕はじっと影を見つめつずけた。
やがて、スッと赤い影は消えていった。
「なんて家だよ、まったく」
気を取り直して僕たちは外に出た。
まず庭をみるために家の裏へいこうと角を曲がったときだった。
急に視界が真っ赤になった。
ゾワッと僕の背筋は凍る。
いる!!
僕は視界を上に向ける。
顔は見えないが真っ赤な女が僕を見下ろしていた。
口元が大きくつり上がり笑っているようにも見えた。
「おい!!失せろ!!!」
後ろからハルちゃんの声がした。
フッとそれは消えていった。
「あのおんなピンポンしやがったやつだな?
いっつもうるせえんだよ」
みえていたのか?
あんな恐ろしいものより音で驚いていたのか?
僕はハルちゃんのことがすこし面白くおもえていた。
さっきまでの恐怖心は薄れていった。
「不思議なやつだよ、君は」
「なんだ?なんかいった?」
「なんでもないよ!それよりこれ」
僕は庭で不思議なものを見つけた。
井戸だ、しかも二つだ。
その近くに二つの平らな石。
「これが?井戸じゃん」
「おかしくないかい?
このせまい土地に井戸が二つある必要が?
きっとこの辺りは昔区切られていたんじゃないか?
それにこの石の位置はもしかして」
そこで僕はあることに気づいた。
この庭を進んで道路があるのだが、そのさきは森へと続いているように道があったのだ。
その森の中には何が?
「いってみよう」
僕はハルちゃんと森へと向かった。
獣みちのような道をすすむと線路が見えた。
僕の家の近くにある駅から出ている電車もここを通っていたのでここに線路があることはしっていた。
だけど、線路をまたいで森へと入ったときだった。
急に静かになった気がした。
「こんなとこあったんだな」
そういうとはるちゃんは森へと進んだ。
「これか、なるほどね。
お手上げだ」
森の中には鳥居が並んでいた。
その鳥居を進むとまた道へとぬけたのだ。
その先をしばらく歩くと新しい鳥居があり新しめの神社があった。
「きっとハルちゃんの家の前にはその昔、神社があったんじゃないかな?
庭の石は社の足場だと思うよ。
それに、すこし離れた、今は公園になっているところは首切りの処刑場があったんだ。
そこと線路はつながっている。
きっとそれらを鎮める為にこのあたりにはなにかしろの墓や神社があったんだと思うよ。
今ある神社から君の家までは霊の通り道であり、一つのたまり場だ。
厄介すぎておてあげだよ。
お札が強力だし大丈夫だと思うけどね」
僕たちは来た道をもどりながらわかった事をまとめていた。
線路の手前でハルちゃんが呟いた。
「そういうことか
どうりでここで死ぬやつが多いとおもったんだ」
「え?」
はるちゃんは僕の足下をゆびさした
「がんちゃんいるとこ、よく人がひかれるんだよ」
すこし錆びている線路の石にまざって人の爪が見えた。
「見てた人が救急車よぶんだけどよ、いっつも死体がすくねえんだとよ」
「そ!それはきをつけないと」
ハルちゃんの後ろに、僕はまた、あの赤い女をみたことを彼には言わない。
僕たちをずっと見つめ笑う女はそこからうごかない。
夕暮れの中を家路についた。
あの女はあれ以来見ない。
しかし、僕たちが行った次の日新たに自殺者がでた。
救急車が二台きたが、遺体は一つだったという噂をきいた。
普通に見える道でも、君に心の隙間があれば危険な時もある。
知らない道へ踏み入れる時は
必ずだれか、生きた人間と行くようにすすめる。
ピンポーン
誰か来たようなので、今日はここまでにして
また次の夜に話すとしよう
帰り道は十分注意してくれ
知らない道へ好奇心で入っても
厄介なことしかないのだから
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