第6話新しい拠点2
スレイン、アリス、グレン、シークの4人はシークの家を出発する。目指すはサイラスの北の国境沿いにある山賊が住み着いた砦だ。
シークの家から徒歩で約5日ほどの道程にある。
シークはここでもPTとしていかんなく力を発揮する。しっかり、旅程を組んでいたのだ。どこどこまでに夕方まで着けば、大丈夫などまさにPTにかかせない存在であった。
道程の途中、アリスは相変わらずお嬢様でPTを悩ますことが数多くあり、多少遅延することも少なくない。
その度にシークは旅程を組み直すので苦労も絶えないだろ。
グレンはグレンで酒と女遊びが基本の生活のため、シークの苦労の一端をになっていたのも事実だろう。
そんなちぐはぐなPtも、1日遅れで目的の砦に到着する。
砦の名前はかつてトルラン砦と呼ばれていた。
小さな砦はあるが、外壁はそれなりにしっかりしていて、山賊に補修までされているであろう跡が見受けられ、よそからの侵入はなかなか難しいと思わされた。
「皆さん、なるべく大規模な攻撃はしないようお願いします」
シークは砦攻めの作戦会議の議長をする。
シークに任せていれば大丈夫だろうという皆の総意からなし崩し的になったものではあるが。
「どうして?」
「砦に住むのですから、なるべく破壊しない方向でいきましょう。しかし、山賊は逃すと厄介です。逃がさないようにしましょう」
皆は頷く。
それを確認してシークはPtの配置を決める。
「前衛はグレンさん、中衛は私とアリスさんでいきましょう。後方はスレインさんスレインさんの攻撃は数も打てますし、逃げた敵を処理してもらいます」
スレインは頷く。
作戦はシークの案そのままに決定されることになった。
PTは野宿をし、朝日が昇る前に襲撃をすることになった。
スレインはライトボールをつくる、手の平にではなく、大量のライトボールをつくる。
行けとスレインは声をかけ、ライトボールは見張りについている山賊に群がる
悲鳴がこだまするなか、作戦は開始される。
見張りを処理し、中に入る。見張りがいたせいで悲鳴が聞こえて今起きたばかりの山賊が続々と現れるが、グレンの強烈な拳が次々と薙ぎ払っていく。
アリスは剣で各地の部屋を探索し、処理してから頭領の部屋を目指す。
シークはアリスの捜索範囲の逆を捜索し、また同じく頭領の部屋を目指す
次々と悲鳴が聞こえる中、PTは次々と制圧する。
まっすぐ進んでいたグレンが先に頭領の部屋にたどりつき、対峙した。
「なんだおめえらは、ここをどこだと思ってるんだ」
頭領の焦る声が聞こえる中、グレンは冷静な表情で頭領を見る。
「すまねえが、ここは俺らのものになったんだ、消えてもらうぜ」
頭領のシミターが振られる中、グレンはゆっくりと進む。
「ボスやシークに比べれば、雑魚すぎるぜ」
頭領の振られるシミターを右手で掴み、魔力を込める。
シミターは簡単に剣の形をとれなく溶ける。
「弱いな!」
そしてグレンの拳が頭領の顔面を殴る。
頭領は壁に強打し、意識をなくす。
頭領が倒れたとほぼ同時に各地の制圧、逃げた山賊の処理も完了。
頭領を殺さなかったのは情報を引き出すためだ、これもシークの作戦のうちの一つだった。
制圧が完了したPTは遺体の処理、食料の場所、金貨の場所を把握し。あらかた終わったときにはすでに夕方を回っていた。
「では、部屋の割り当てを行います」
いつもの作戦会議である。
しかし、皆の顔は多少なりとも疲労の色がみえる。
「細かいことは明日やるとして、食料は今日は干し肉などできあいものにしましょう。今日はさすがに皆さんもお疲れでしょうから、寝床を決めて休みましょう」
「でも砦にいなかった山賊がもどってきたらどうしますの?」
アリスが疑問を言う。
シークはそれも想定内という表情で頷く。
「私は元は狩人です。気配の探知はお手の物です。なので、1階は私とグレンが寝床とします。まず2階にあがらせることはないでしょう。また砦は門を閉めときます。城壁から砦にはいらないよう扉も施錠します。例えはいってきても音で私はわかるので大丈夫です。そいう細工もすでに完了しています。2階はスレインさんの寝床とします。3階はアリスさんの寝床です。ここが一番安全でしょう」
淡々とシークは話す。
さすがシークだ、そう思わせる計画に皆は頷く。
「それにアリスさんに万が一があったら、スレインさんが怖いので」
シークは独り言を言う。
「ん?私の名前いいました?」
シークは焦る。
「い、いいえ、独り言です」
そう、と興味をなくしたようにアリスは視線をはずす。
「で、では、今日は解散でよろしいですか?スレインさん」
シークはスレインに問う、実際のところ決めるのはアリスなのだから聞くならアリスなのだが、そうしないとアリスは機嫌が悪くなると勉強した。
「アリスそうしようか?」
「わかりましたわ、兄様。では解散しましょ」
アリスの声で皆が寝床に向かう。
翌朝、朝食を軽くとり次の作戦練ることになった。
「拠点もできましたし、次は誰を倒しましょう兄様?」
そうアリスが話したとき、シークから待ったがかかった。
「それも重要なのですが、まずは拠点をしっかりしないといけません。この人数でまず拠点運営はなかなか難しいです。また当分は砦内の金貨などで賄えますが。いつかはなくなります。食料もしばらくは大丈夫ですが、買いに行かなければ大変なことになります。足場を固めてから、当初の目的に映る方がよろしいかと思います」
「そうですわね・・・・」
「人数なら俺にあてがあるぜ」
「ほう、信用できますか?」
「おうよ、俺の元クランのメンバーなら付いてきてくれるぜ」
「なるほど・・・、では人はグレンさんに任せて食料の買出しについてですが、ここから近くの村でも1日は最低かかります。この問題はどうしますか?」
スレインが口を開ける。
「僕にまかせてもらえないかな?僕の能力を使えば1度覚えた場所ならすぐ移動可能だよ」
「そんなことまで可能なのですか・・・、転移魔法のようなものでしょうか。ならばスレインさんにお願いすることにして」
アリスがそれに激怒する。
「兄様を買出しに行かせるっていうの?兄様はここのボスなのよ?そんなことさせるわけにいかないわ!」
肩を震わせ、いまにもシークに掴みかかろうとするほどの剣幕で叫ぶ。
シークは困った顔をする。
「確かにそうですね・・・・、では馬などを買って移動手段を速くすればある程度は解決しますね。しかし徒歩の場合だと往復2日、買い物をする時間をいれて3日、馬なら2日くらいでしょうか」
「それでいいじゃない!」
「アリス、僕が行くよ。人手がその間いなくなるとシークの計画が狂うかもしれない」
これにはアリスを含めて驚いた。
今まで、アリスの意見だけを聞いていたスレインが初めて自分の意見を口にしたのだから。
「でも・・・兄様を買出しなんて・・・」
それでもアリスは納得しない。
「ではこうしましょう、移動だけスレインさんの能力を貸してもらって、買出しは別のものにやらせるということでは?」
アリスはまだ納得しない態度をみせる。
スレインはシークの意見に頷く。
スレインを見てアリスはしぶしぶ納得する。
「わかりましたわ、納得できませんが、兄様がそこまで言われるのなら」
「ありがとう、アリス」
「い、いえ」
2人を見てグレンとシークは冷めた顔で見る。
なんていう茶番だと・・・・。
シーク主導で次々と計画が実行された。
人も集まり、シーク一人監視をする必要もなくなった。
金銭面も若干だが改善された。
買出しに行く村を護衛するという名目で、資金を些少ながら提供を受けることができた。そのかわり人数を多少割くことにもなったが。
少しずつだが砦は砦らしい機能が果たせるようになってきた。
月日は流れ、スレイン19歳になった。
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