メタスキーマ随筆集

メタスキーマ

死語の世界

コンピュータソフトウェア開発業界で、非正規労働者としてプログラマー・テスター職に従事している。先日、設計書を書く時、何の気なしに「敷衍」という言葉を使ったら、レビューで「そのことば、知らない人が多いので別の言葉に書き替えて」と言われた。レビュワー自身がその言葉を知らず、チーム内のメンバーに尋ねてみると、10人が10人、知らぬと答えたので、書き替えた方が良いかなと思ったそうだ。


普通の文章であれば、「辞書にはまだ載ってる言葉だから大目に見てよ」で済むかと思うが、設計書であるから、主たる読者であるチームのメンバーにわからなくては話にならない。早速、修正を施した。


ソフト屋の平均年齢は若い。20代・30代が主力だ。1966年生まれの自分の言語感覚で無造作に言葉を使っていると、こういった齟齬が、まま生じるのだ。


年代的差に起因するものとは別に、生きてきた世界の違いから、こちらにとって普通の言葉が相手にとって初耳だったりすることもよくある。創作サイトでのやりとりで、ドラマツルギー、隘路という言葉について同年輩の方から初耳と言われて意外に思った経験がある。また、作詞投稿サイトで詞中にアフォリズムという語を使ったところ、「その語を知らぬ訳ではないが、その語の使用は、やや読者を選んでしまう懸念がある」という講評をいただき、へー、と思ったこともある。


とまれ、ビジネス文書の世界では、知らずに使った死語が思わぬ機会損失につながるおそれもある。読者層に見あった用語法を心がけねば、と改めて思った。


あなたも知らずに死語の世界に踏みいっていませんか?(笑)。

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