それでも俺は哭き続ける
しゃぶしゃぶ
第1話 学校は、楽しいですか
昔は、仲が良かった。
思い出すのは都合の良い記憶と、突然訪れる別れの記憶。
ある奴はそいつとの交流をはたと止め。
ある奴はそいつと接触を図り。
またある奴は、そいつとこれからどう付き合っていけばいいんだと打ちひしがれる。
だが、時が過ぎてゆくことによって子供の時の思いは次第に整理が付き、どうでもよくなって、忘れてしまう。
はずなのに。
吹っ切ることが出来ぬまま。
事もあろうか、未だに俺達の心を蝕み、壊していくのだ。
これは、夢見続けた四人に起きた、絶念のお話。
◆◆◆
普通の学校。
仲間達と一緒に勉学や部活に励む場。
何気無い日常を楽しむ場。
時間を無為に過ごすだけの場。
どれかというと断然三番目であると感じている俺、
今は“朝の活動”という普段なら読書をして過ごす時間なのだが、県からアンケートの用紙が出ているため、それに答えている。正直早く本の続きを読みたい。昨日の朝の活動で本を読んでいたら、これからという所でホームルームの時間になってしまったのだ。
県には申し訳ないが、アンケートは適当に答えさせてもらおう、と適当に丸を書き込んでいく。
ふと、ある文章が目に留まった。
“学校は、楽しいですか。”
……。
どれだけ無責任な言葉であろうか。無意識に、しかしはっきりと眉に皺が寄る。無責任な言葉に怒りが募る。
“まったくそう思わない”に渾身の力を、怒りを、憎悪を込めて丸をつける。
シャーペンの芯がパキッという音を立てた。
どうやら表はそこで終わりだったようで、続きがあるかと裏をめくってみるが、白紙だ。
少し苛ついてしまった心を落ち着けようと、本を机の中から取り出す。
「はーいアンケート用紙回収してー、ホームルーム始めるよー!」
無慈悲な先生の声が耳に響いて、俺は苛ついたまま本をそっとしまった。
本は、休憩時間に読むか。
「えー、んじゃあ今日の時程はこんなんだけど……」
今日の事が伝えられだしたので少し耳を傾けようかと思ったが、面倒臭い。
俺は頬杖をついて窓の外の景色を見る。
友達が、いない訳じゃない。
学校自体を嫌っている訳ではない。
だが、俺は、学校が、嫌いだ。大嫌いだ。
正確には、学校に来る
俺は、絶対に怒らない完璧超人じゃねぇんだよ。
「はぁ……」
荒く息を吐く。ついでに誰にも聞こえない声で「糞が……」とも呟いておく。
チャイムの音がした。
「では、今日も一日頑張ってください。学級委員さん、号令を」
―――いつやってもあの時が頭を巡る。
「……起立」
俺の一言で、全員が席を立ち、机の横に動く。
教室に、椅子をひこずった時のガラガラという音が蔓延する。
うるせえ。
「気をつけ、礼」
「「「「あざっしたー」」」」
やる気のない声が教室を埋めると、そこで緊張の糸でも千切れたかのように話し声が広がる。
ため息を吐く者。
宿題に明け暮れる者。
鬼ごっこではしゃぎ回る者。
まるで幼稚園のようだ。これだけ見たら、とてもここが高校だとは思えない。
(よくやるよ、全く…。疲れないのか?)
そんな思いを胸に秘め、俺は本から栞を取り出した。
俺は、静かに過ごす方が好きなのだ。
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