異変(5)


   55


「どうしよう……ここはどこ? いつの間にか虎宇とはぐれちゃった……!

 さっきまで森だったのに急に海に来ちゃったし……早くみんなと再会しないといけないのに……!」

 京終莉玖は、海辺へ来ていた。

 元々は、楠虎宇と共に近辺の散策をしていただけだった。しかし彼は好奇心を優先しすぎた。自らがおかれている状況も省みず。

 夢中になって『もっと、もっと。』と島の中を捜し続けた結果――

彼は”こう“なった。

 先程まで自分の近くに居た存在を失った京終は、精神的に衰え始めていた。

「……くそ。どうしたらいいんだよっ……!」

 京終は歩いていた。走れることは走れるのだが、今はそんな調子にはなれない。といった感じの様子だった。

「虎宇ー!どこだよー!返事してくれよー!」

「莉玖。莉玖じゃないか!」京終の背後から、急に声がした。京終ははっとして後ろを向いた。

 後ろに響いた空気の振動に気がつき、自分の上半身を半反対側に逸らした。

 するとそこにいたのは――

「どうした。何があった?」

「く、黒神……!」

 黒神白夜だった。

 京終莉玖は、黒神白夜達に出会った。

 京終は、信頼できる仲間との再会に思わず安堵の息をもらした。

「京終くん! ここにいたんですか!?

 よかった! もう会えないかと思っちゃいましたよ……」

「辰巳さんも! 無事でよかったよ!」

 黒神達は、お互いの再会を激しく喜んだ。

 声や行動には顕著に表していなかったが、それでも心の中では必要以上に歓喜し、そして狂喜した。

 ”三人“は「綺麗な赤」に染まった浜辺に座り、話しをしていた。

 だがそれは決して楽しく明るいものではない。寧ろ重く暗いものだ。

 黒神の口からは、京終の思考の中の予想にはなかった事実ことばが放たれた。

「莉玖。 実は俺ら、元は二人じゃなかったんだよ」

「……えっ」

「本当は瀬南も一緒に居たんだ。だけど……」

「?」

「気がついたら居なくなってたんだ」

「え……っ……?」

 ――黒神は、京終に再会であう前の事を話し始めた。

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