異変(4)


   53


 何かが、変だ。

 さっきまで何ともなかった。それなのに、今は何かが変だ。

 疲れた訳じゃない。苦しいわけでもない。

 寧ろ逆だ。

 疲れが失くなっていく。気分が段々爽快になっていく。

 白夜と蘭ちゃんの二人は、大分疲れが見えてきたようなのに――

 今の所、僕は全く疲れを覚えない。体が軽く、よく動くようになってくる。

 どう考えてもオカシイ。

 おかしい、オカシイ?


 ――可笑しい。


 感情が高ぶって、笑いが込み上げてくる。

 なんで、なんだ? 意味が分からない。

 ――それにしても、今日は陽が落ちるのが遅い。そろそろ夕暮れぐらいの時間帯なのに、まだまだ明るい。真っ昼間、というより朝真っ盛りという感じだ。

 まあ、今、夏だから。そこはおかしくとも何ともないか。

 僕は、僕は。僕は――

 ……あれ? 一体僕は何を考えたんだっけ……? 思い出せない。

 とりあえず今は、島を抜け出す方法を考えなきゃ。

 ああ。喉が渇いた……すぐになにか呑み干したい気分だよ……

「は、はあ……く……ふひひ。ひ」

「……瀬南……?」

「え? なに、白夜?」

「大丈夫か? 疲れたんならここらで休むけど……」

「別に疲れてないけど……何でそんな事急に訊くの?」

「いや。瀬南の事が心配だからさ……なんかごめん」

「別にいいんだよ、そんな事。だって僕達友達じゃないか?」

「……ああ。そうだな……」


 瀬南……いったい何があった……

あいつ、気付いてないのか……?

 瀬南。お前がさっきから変に笑っている事に。

 瀬南があんな気味の悪い笑い方をするのは初めてだ……。挙動もややおかしい。

 足がふらついてるし、腕も時々変な動きをしている。そもそも、こんな状況で笑っていられるものではない筈なのに……

 どういうことだ。お前に何があった……?

 教えてくれと言っても、言ってくれないだろうな。それ以前に、瀬南は自分自身の様子に気がついてない感じだ。

 何せ過酷な状況だ。気が狂ってもおかしくはないが、瀬南に限ってそんな事……

 今は、様子を見るしかないみたいだな。

 今、俺ができる事は、二人を守る事。だからな……

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