冷たい殺人鬼
絶望&織田
第1話 冷たい臓器
とある国に評判のアイス屋を営む『風雪』という男がいました。
風雪には「粉雪」という娘がいて。
粉雪は重い病気にかかり。
臓器の移植が必要でした。
しかし、ドナーはなかなか現れません。
日に日に、粉雪は衰弱してゆき。
医者は風雪に、命の保証はできない、と言いました。
風雪は意を決して。
心を鬼にしました。
風雪は仕事場で使う冷凍車のハンドルを握り、町へと出かけます。
子供と見るや。
車を止めて。
子供に話しかけます。
「坊やアイスをタダであげるよ」
美味しいと評判だったアイス屋です。
子供は喜んで、風雪に飛びつきます。
風雪は、こっちだよ、と手招きします。
冷たい冷凍車の扉を開けて。
冷めたい風が流れて。
風雪の流れた涙も凍ってしまいました。
殺した子供の遺体を乗せて。
冷凍車は町中を走り回ります。
日が傾く頃。
車体が沈むほど。
風雪は手を赤く染めました。
車には──。
「おじさん、アイスちょうだい」と、ねだる常連の子供。
「粉雪ちゃん大丈夫?」と駆け寄って来た粉雪の友達。
「おじさんの粉雪ちゃん、ビョーキなんだろ……?この花、渡してくれない?」と、頬を赤く染めた粉雪のボーイフレンド。
風雪が殺した子供達は皆、好意的で。
風雪が、タダでアイスをあげる、と言っても。
皆が、お金を出しました。
──治療代(粉雪の)にして、と言って。
風雪は暗くなった道をライトで照らしながら。
震えていました。
雨が降ってきました。
ワイパーで拭っても拭っても。
視界は曇りました。
ハンドルを握る手は寒気で震えました。
車内をいくら温めても。
風雪の震えは止まりませんでした。
心身ともに冷えきってしまって。
風雪の震えは止まりませんでした。
ミラーに映った風雪の顔は、涙や鼻水でクシャクシャになりながら。
満面の笑みを浮かべていました。
──きっと、これだけいれば。
──娘は助かるだろう。
父親は心の奥底で思っていたのです。
同時に。
そこまで、冷たくなった自分に震えてしまっていたのでした。
車は何度も何度も、道を逸れながら。
粉雪が待つ病院に向かいました。
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