第16話「ドSのクルセイダー」
アプリを仲間に入れた俺達はそのまま彼女の実力を見るのもかねて、道中出てくるゴブリンを倒しながら噂のダンジョンに向かっていた。
「ゴブリンだ! 皆来るぞ!」
「はっ! ゴブリンごときこの私の炸裂魔法で――」
「るりりんのバカ! 炸裂魔法は撃てる数が限られてるんだから無闇に使おうとするな! 合図は俺が出すから、るりりんはそれまで詠唱をして待機してくれ!」
「はぁーい……」
おい、るりりん。炸裂魔法撃てないからっていじけるなよ……
「キャアアアア! マサヤさん助けて! お願あああああいしますううううう! ゴブリンが! ゴブリンがこっちに向かってくるの!」
見ると、俺がるりりんの炸裂魔法を止めさせている間にマリアが五匹のゴブリンに追い掛け回されていた。
よし、ここは盾であるクルセイダーのアプリの出番だな。
「アプリ、頼む!」
「フ、任せてくれ! 『デコイ』」
すると、アプリはマリアを追いかけているゴブリンに小石を投げてスキル『デコイ』を発動させた。スキル『デコイ』は簡単に言えば囮になる能力だ。使用している間敵のモンスターはデコイを使用している奴にだけ攻撃するようになる。
「ちょっと、私が助かったのはいいんだけど、アプリってアレだけのゴブリンを相手にして大丈夫なの?」
「意外と大丈夫そうだぞ。ほら」
アプリの戦闘を見てみると、アプリは五匹のゴブリンを『デコイ』で引き付けているため、五匹から同時に襲われているが、アプリは攻撃の全てを体の動きや剣裁きで受け流していた。
「どうだ。これが私の盾としての戦い方だ! クルセイダーは硬くなくてはいけないなど、古い考え方だ。今の時代に求められるクルセイダーは『硬さ』でなく『柔らかさ』だ!
どんな攻撃も受け続ければ消耗してしまう! だからこそ、最小限の動きで全ての攻撃を引き付け受け流せば例え『硬く』無くてもクルセイダーはやっていける!
これが! 女性として無駄な筋肉は付けたくないが、騎士として戦いたいと思う私が編み出した『クルセイダー』だ!」
なるほど『硬さ』は無いがどんな攻撃も受け流す盾のクルセイダーか。確かに実力はあるみたいだな。
すると、アプリはゴブリンの攻撃を受け流しながら段々と反撃をするようになってきた。
「フ! ぬるい! そんな攻撃が私に当たるか! ほら! こっちの攻撃はドンドンお前達を切り刻んでいくぞ! ははは! 安心しろ。一撃で始末なんかしないさ……私はお前達の攻撃を受け流すごとに少しずつ反撃してやる。さぁゴブリン共かかって来い!
一撃、一撃と攻撃を与えられないまま身を切り刻まれる屈辱と苦痛をその身に刻みつけてあげようじゃないか! あっはははは!」
ん、あれ? 何かアプリの様子がおかしいぞ? 何か攻撃をするたびにアプリの表情がよくなっているような……
「てか、あの人……戦い方がエグイですね」
「うわぁ、本当ね……アプリたらゴブリンの攻撃をギリギリでうけ流しながら、自分の攻撃もわざとギリギリを狙って攻撃しているわよ」
すると、アプリが攻撃の手を緩めずに俺達に向かって笑顔で説明してくれた。
「ああ、すまない……実は私はモンスターを退治するのがどうも苦手でな……本当は一撃で仕留めなければいけないと分かっているのだが、どうしても敵が苦しむ姿を長く見たいと思ってワザと死なない程度に痛めつけて攻撃してしまう癖があるのだ!」
あ~~なるほど……つまり、ドSなんですね♪
「おい、るりりん。ちょっとあのゴブリンの群に向かって炸裂魔法を撃ってくれ」
「了解しました!」
「ちょ! おま、待ってまだ私が――」
「プロージョン!」
うちの新メンバーのクルセイダーは、るりりんの炸裂魔法もなんとか受け流して見せたとさ。
戦闘が一区切り付いたので、俺は休憩のついでにアプリへ質問をした。
「アプリはクルセイダーなんだよな? 何でそんな言い職業の冒険者がこんな見習い冒険者の町にいたんだ?」
「それか、それはだな……」
どうやら、アプリは騎士に憧れているらしく一人前になるまでこの見習い冒険者の町でソロとして活動をしていたらしい。
それを聞いたるりりんがアプリに質問した。
「なるほど、でもなんでいまさらパーティーを組もうと? 今までも組もうとしなかったんですか?」
「実は今までも何度かパーティーを組もうとした事はあるんだ……しかし、私は意外と人見知りが激しくてな……私と同い年くらいの女性のメンバーがいるパーティーが無くてパーティーに入るのをためらっていたんだ」
なるほど、確かに冒険者って俺らみたいに10代~20代くらいの若者パーティーって珍しいよな。大体の冒険者は荒くれ者のおっさんみたいな連中の30代くらいの奴らが多いと聞く、その上に女性がいるパーティーと言ったら数はすくないだろう。
アプリは見た感じ20代……ぜ、前半? くらいに――
すると、続いてマリアが思った事をバッサリ言いやがった。
「でも、アプリって見た感じ年齢20代後半でしょ? 私達全員10代なんだけど、同い年っていうには厳しくない?」
このバカ! 俺も話を聞いたときには(え、でもうちらのパーティーとも年齢離れているよね? あきらかに……)って思ったけど、口には出すなよ!
すると、アプリの口からとんでもない告白が飛び出た。
「おい、ちょっと待て! こう見えても私はまだ19歳だぞ! 歳はお前達とそう変わらないはずだ!」
「はぁあ!」
「ヴぇ…………」
「嘘ぉおおお!」
予想外の告白に俺とるりりん、マリアの三人はそれそれ信じられないと言う風に驚きの声を上げた。
「な、何だその反応は! た、確かに……私は少し大人に見えるかも知れないが……」
いやいや、少しどころじゃないんだよ……確かに言われて見ればギリギリ……十代に見えなくも……無いのか?
しかし、アプリは見た目が美人系お姉さんって感じだからどうしてもかなり、それも二十代後半くらいに見えてしまうんだよな。
てか、アプリが美人過ぎるから余計に年上に見えるんだよ。銀髪で身長も高いしボンキュボンで胸もでかくてスタイルもいい! そう、例えるならばハリウッド女優みたいなプロポーションなのだ。仲間のるりりんとマリアも十分に美人の部類に入るがこいつらはどっちかと言うと可愛い系の美人なのだ。だから、アプリはその差がギャップとして年齢に出ているのかな?
「まぁまぁ、年上に見えるってことはそれだけ大人っぽいって事だし――」
「プププのプーッ! そんな見た目なのに10代? 嘘でしょ? プププーッ! しかも、19歳って殆ど20代じゃないの? なのに、それでも10代であろうとするとか往生際が悪すぎ……プププーッ!」
っと、俺が必死にフォローしようとした所をマリアが台無しにした。
「よし、いいだろう……私がクルセイダーとしてどれほどの実力か……まずはこの口が減らないプリーストを叩きのめして証明してやる!」
「ああ! このトライアル唯一のアークプリーストでピチピチのマリア様とやろうっての? いいわ! 相手をしてあげる……かかってきなさいよ。この年増クルセイダーがぁああ!」
「と、年増クルセイダーだとぉおおお! 私だってまだピチピチだぁあああ!」
「あ、おい、待てお前ら……まだダンジョンにすら入ってないんだから喧嘩するなよ」
「マサヤ、彼女達もあんな感じですし、このパーティーはダメです。もう、ダンジョンは諦めて今日は帰りましょう」
「るりりん、何バカな事を言っているんだ。炸裂魔法がダンジョンで使えないからって帰ろうとするな。さぁ、行くぞ!」
「ああ、嫌だ! ダンジョンで役立たず扱いされるのが目に見えているのにどうして行かなきゃならないんですか!」
「それは俺達がビンボーだからですぅうう!」
まったく、何て落ち着きの無いパーティーメンバーだ。職業だけは「アークウィザード」「アークプリースト」「クルセイダー」とそろっているのに…………
「いや、でも……女の子のバランスも『ロリっ子』『同い年』『お姉さん系』でそろっているな……」
「おい、マサヤ……今、私をその選択肢のどれに入れたのか教えてもらおうか?」
「あ! おいバカ! るりりん、こんな所で無闇に炸裂魔法を使おうとするな!」
こうして、俺達のパーティーに「クルセイダー」が仲間に入りました。
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