第12話「面接」




 新しいパーティーメンバー募集のチラシを見てやってきたマリアの美少女の仮面とイメージが完璧に壊れ(ああ、やっぱり頭のおかしい求人には頭のおかしい奴しか集まらないのかなぁ?)っと、嘆きながら俺はなんとか再び入れさせてもらったギルドの酒場でマリアのパーティー面接をしていた。


「えーでは、マリアさん」

「はい!」

「貴方はこのパーティーに入りたいと思った志望動機はなんですか?」


「お金です!」


「「は?」」


 突然のマリアの言葉に俺とるりりんは同時に呆けた声を出してしまった。


「え、金? 金って……何? お金のために冒険者パーティーに入りたいと思ったの?」

「そうよ! だって私がこの世の中で愛しているのは1番に『アクア様!』そして、2番目が『お金』だもの! 私がお金が大好きなのよ!」

「しかし、お金が好きと言って私達のパーティーを選びますでしょうか?」

「それには三つ理由があるわ!」

「そうそう、それは?」


 俺がマリアに理由を尋ねると、彼女は指を一本づつ立てながらその理由を説明してくれた。


「まず一つ、あのパーティー募集の『我求む! ~』のくだりがカッコよかったからよ!」


 なんと! あのるりりんの中二病センスに惹かれる人間がいたのか!


「ほら、マサヤ! 見てください! 私のあの文章はやっぱり完璧だったのですよ!」

「いやいやいや、お前、さっきの騒動でこのプリーストが少々まともじゃないのを理解しているだろ? つまり、これは逆説的にあの文章を考えたお前もこの残念臭がただようプリーストと同レベルってことよ?」


 まぁ、でも一つ目の理由は分かった。なるほど、あんな文章でも来る奴はいるのな。


「二つ目は、募集要項に『完全出来高制』ってあるし『能力に応じて報酬の増加もあり』って書いてあったのが大きいわね!」


 それを聞いた瞬間、俺はるりりんに向かって大きい顔をしながら言った。


「ほら、見ろ! 聞いたか、るりりん? やっぱり、俺の考えた文章が良かったんだよ!」

「マサヤ、私はさっき貴方が言った言葉をそっくりそのまま返しますよ?」

「ぐふぅ!」


 凄いブーメランが俺に突き刺さった。


「でも、何よりもこのパーティーを選んだ理由はアレが一番でかいわね……」


「「アレとは?」」


 この返答によっては俺と、るりりんのどっちがより残念だったのかがはっきりする! 一体一番の決め手になったのはチラシのどの部分なんだ! てか、俺とるりりんのどっちが考えた部分だ!


「アクシズ教徒のプリーストって言っただけでどのパーティーも入れてくれなくて……」


「「あぁ…………」」


 それは納得だわ。正直、俺もあのアクアとかいう駄女神を信仰しているとか聞いただけで正直かかわりたくないしな。


「では面接はこれで終わりと言う事に、合否の連絡は後日改めて――」


 俺がそうそうにこの場を切り上げてこのやっかいそうなプリーストからおさらばしようとすると、マリアがその気配を敏感に感じ取ったのか突然俺の体にしがみ付いてきた。


「待って! いや、待ってください! このまま終ったら私これ絶対に不合格コース確定よね! ねぇええ、お願いします! 本当に待ってください! もう、殆どのパーティーに断られて入れてくれるパーティーが無いのよォおお」


「えええい、知るか! HA☆NA☆SE!」


「いやぁあああ! もう、ホントこのパーティーしか残ってないの! もう『では返事は後日改めて……』とか言われて二週間近く返事を待っても音様一つないのは嫌なのぉおおおおお!」


 俺とマリアが騒いでいると、ギルドの職員に目を付けられているのに気付いたるりりんが俺達を落ち着かせてくれた。


「まぁまぁ、二人とも少し落ちついてください。少し尋ねますがマリアはどうしてそんなにパーティーに入りたいのですか?」

「だから、それはお金が大好きだからよ!」

「いや、てかお前仮にも教会のプリーストなんだろ? それがこんな場所で金、金、連呼していいのか?」


「そんなの問題ないわ! 何故ならアクシズ教は同性愛者も人外娘もロリコンでもニートでも、アンデットや悪魔以外なら、そこに愛があり犯罪でない限り全てが許される教えなのだから!」


「な、何かすげぇ教えだな……アクシズ教って」


 それを聞くとなんかまるで、どっかの合衆国みたいだな……移民でも何でも受け入れてとりあえず国民(信者)を増やす的な?


「でしょでしょ? だから、これを気に貴方もアクシズ教に入信したらどうかしら?」

「いいや、結構です!」


 そう言って俺はマリアが押し付けてきたアクシズ教団入信書を破り捨てた。


「なるほど、マリアがお金が大好きでそれがアクシズ教で許されているのも分かりました。しかし、私が聞きたいのはそれだけでなく、貴方がそんなに必死にパーティーに入りたいのは何かお金を集めなければいけない理由があるのではないですか? っと、言う事なのですが」


 るりりんが改めてそう言うと、マリアは「よくぞ聞いてくれたわね」っと言ってそのお金が必要な理由とやらを語り始めた。


「それはね……『神託』が下ったからよ!」

「「神託?」」

「ええ、あれは昨日の朝だったわ……その日、突然私の頭の中に――……


『私はアクア。そう、アクシズ教団の崇めるご神体、女神アクアよ! 汝、もし私の信者ならば……! ……お金を貸してくれると助かります』


 ――って、声が届いたのよ」


「どこの世界に、神託を使って信者からお金を借りる女神がいるんですか!」



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