捨てる神あれば拾う神あり
キャベツ太郎
第1話 男子高校生と神
突然だが、神様の存在を信じるだろうか。
当然神様を信じるという人も信じないという人もいるだろう。
俺は神様を信じる派だ。
そんな俺が願うことはいつもだいたい同じである。
神様。このとんでもなく悪い目付きを直してください。
俺は生まれつき目付きがとにかく悪かった。自分でもびっくりするほどに。なにせ、鏡に写る自分を見てどこの人殺しだと思ったこともある。自分だった。
しかし、この時だけは違うことを神様にお願いしていた。
神様。この場から逃がしてください。
一日の授業を終え、自転車置き場へと向かった俺の目の前には気絶した男子高校生。そして、その横には可愛らしい幼女が明らかにやってしまったみたいな顔をして立っていた。
何だこの状況は。気が動転しそうだったが、何とか持ち直す。
とりあえず、気を失っている男の方は俺も顔くらいは知っていた。
というよりこの学校に通っているものでこの男を知らない者はいないだろう。
鳴海駆。
生徒会長であり、バスケ部のキャプテン。
おまけにイケメンで父親は県議会議員ときたら、神様のこの男への目のかけように軽く引くかもしれない。
大丈夫。俺はドン引きだ。
とまあこのように文武両道を体現するような男なのだがそんなことはどうでもいいのだ。こいつがすでに人生楽勝なのは誰の目にも明らかだが、そんな話は誰も聞きたくはないだろう。特に俺が聞きたくない。
そして、鳴海が気絶していることと同等かそれ以上に謎なのは隣の幼女である。 小学生くらいだろうか。
傍らに立っているということはこの幼女が鳴海を気絶させたと考えるのが自然になるのか...?
明らかにやっちゃたみたいな顔してるし。
完全にどうしたらいいか困惑してるし。
しかし、そんなことが可能なのか...?
鳴海は仮にもバスケ部のキャプテンを務める男だ。
体格はなかなかのものだし、喧嘩をすれば普通に強いに違いない。
それを失神までさせることができるだろうか。
この小さくて可愛らしい幼女が。
男の俺でも気絶させるのは難しいはずだ。
というより普通にボコボコにされる自信がある。
だとすると、不意打ちだろうか。
あわよくば、ミスタードーナツ好きの吸血鬼であってほしい。
我があるじ様とか言ってほしい。
いつの間にか思考が西尾維新だった。
このままでは俺の頭の中がシャフトによってアニメ化されかねない。
そんな俺の夢はアニメ化による収入で何を買おうか考えるところまで膨らんでいたのだが、その妄想は幼女の声によって呆気なく打ち砕かれた。
「ここからの後処理頼んでもいいかな?」
幼女は満面の笑みでそう言った。
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