出題編2. 事の発端

 人形隠しという都市伝説をご存じだろうか。


 最近インターネット上で流行っている都市伝説のひとつで、いまやぼくたちの学校で知らない者はひとりもいない。千夏ちなつの身に降りかかったある事件の発端はこの人形隠しであった。


「人形隠し 都市伝説」とフォームに打ち込み、Geeglo検索を行うとその手のサイトが何件も表示される。ぼくはそのうちのひとつをクリックする。


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【人形隠し】危険度 10/10 

 ☆参加人数☆

 2人以上


 ☆やりかた☆


 1.あらかじめ、人形を人数分用意して学校に集合します。

   人形の大きさや形状は特に関係ありません。


 2.それぞれ自分が普段使っている机の上に人形をひとつずつ置いてください。

   人形は教壇や黒板のある方向に向けて置いてください。


 3.人形を置き終えたら参加者全員で目を閉じてください。


 4.「高塚こうつか橋のおひな様。代わりの身体を差し上げます。」と唱えます。


 5.目を開けてそのまま学校を出ます。

   家に帰るまで、決して誰もしゃべってはいけません。


 6.翌日、学校へ行ったときに机の上から人形がいなくなっていると成功です。

   人形が残っていた場合はその日のうちにその人形を燃やしてください。


 ☆効果☆

 人形がいなくなっていた机の主にはとても幸せなことが起こります。


 ☆注意☆ 

 この儀式は学校で行う必要があります。

 先生やおとなの人に見――



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 ……細部の違いこそあれど、どのサイトにも似たような手順が示されているのを認め、ぼくはスマートフォンを操作する手を止める。


 ぼくの学校ではこのひと月中に、少なくとも二度この人形隠しが行われている。

一度目は一年生のクラスで行われたらしく、翌朝訪れた事情を知らない生徒が担任へ人形が机の上に並べられている異常事態を報告したことで発覚した。人形はひとつも欠けることなく机の上に置かれていたそうだ。

 この一件で全校生徒に対して「人形隠し」の存在が広く知れ渡ることとなった。


 二度目はつい先日ぼくのクラスで行われた。もちろん、ぼくは参加していない。

 クラスの中でもオカルト好きな人たちが集まって、数名で開催された人形隠しは


 用意したという結末を迎えていた。

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