ツンな彼女は憑かれてる

行方かなた

解決の果てに

「たとえ、ふたりをの命を助けるためでも、ひとりの命を犠牲にするのは悪よ」


 そう言って、彼女は肩まで伸びた黒髪をかきあげた。

 ―――トロッコ問題。臓器くじ。数々の思考実験によって人間は命の価値を推し量ろうとしてきた。

 ―――カルネアデスの板。自らの命は他人の命より重い。貴賤を問わず死は平等に人間を捉える。

 ぼくは問いかける。


「じゃあ、ふたりの幸せを得るために、ひとりの幸せを犠牲にするというのは悪だろうか」


 ぼくは悪だと思う。彼女は何も答えなかった。

 だれもいない公園にふたり。街燈に誘われた蛾の翅はジジジと不快な音を奏でていた。


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