研究部の真実 4

 昼休み、俺は講義室1に来た。机の中の資料をめちゃくちゃにした人を調べるためだ。既に机はもとに戻っていたが、高瀬先輩は1人フラッシュカードを見つめていた。やはり先輩も同じ気持ちなのだろう。俺は高瀬先輩の近くに駆け寄った。

「先輩、俺、研究部の机を荒らした人を突き止めます。俺にも何かできることがあるなら、言ってください」

 高瀬先輩は顎を手に置いて数秒考えていたかと思うと、何か思いついたように話した。

「そういえば、まだ蓬莱先生については何も知らないんだよね」

 俺はつい「え……はい」と間抜けな返事をした。

「なら、蓬莱先生のことを知っている先生方に聞きに行くのはどうかな。蓬莱先生が作った冊子が消えているわけだから、何か先生方なら知っているかもしれない。増田教頭先生にその時にいた先生の名前を聞いたということは、蓬莱先生に関して後日話を聞きに行くつもりだったんだよね?」

「そうです」

「なら、今回の件と合わせて聞きたいから、同行していいかな?」

 俺は少し考えてから、「いいですよ」と返事をした。高瀬先輩に聞かれて困るようなことはないはずだし、よく考えてみたら2年生や3年生の所属の先生のことは知らないから、教えてくれる上級生と話を聞きに行くのが一番いい気がした。

 俺たちはさっそく講義室を出た。俺たち2人は3年生の教室のあたりに来た。高瀬先輩が眼鏡をかけたスーツ姿の男性に「野島先生」と声をかける。手招きされたので近くに寄った。

「ええと、君たちは……」

「研究部です。もっとも、彼は仮入部中ですが」

 高瀬先輩が「野島先生」と声をかけた先生に向かって話している。どうやらこの先生が野島先生のようだ。俺は一歩前に出て話を始めた。

「蓬莱元気と言います。実は、蓬莱先生のことについて話を聞きたいんですが」

「あー、そうでしたか。しかし、私は、特別関わりがあったわけではありませんので。蓬莱先生の息子さんで。いや、でも、私ほとんど話らしい話もしたことがなかったので何も答えるようなことはありませんねー、学年も違いましたし。お役に立てませんで」

「本当ですか?」

「ええ」

 軽薄な言い方には内心イライラしたが、本当に関わりがないのならそれ以上聞くこともないだろう。

「ところで、何か蓬莱先生のものを持っていたりしていませんか?」

「えっ!」

 高瀬先輩が聞くと、野島先生は後ずさりをした。

「どうかしましたか?」

「いや、何も」

 俺が聞いても野島先生は答えない。

「あの、なければいいんですけれど、例えば蓬莱先生が写っている写真とか、蓬莱先生の名前が載っている広報紙だとかがあればいいな、と思ったのですが」

 高瀬先輩の言葉を聞いて、野島先生はハッと息を飲んだ。

「いや、そういうことならそう言ってください。確かにそういったものなら持っている可能性はありますが、いやしかし捨ててしまっているんじゃないかと」

 野島先生は何か取り繕うような話しかたをした。少し冷や汗も出ているようだ。

「あの……」

「これでいいなら失礼しますよ」

 野島先生はすたすたとどこかへ行ってしまった。


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