研究部を探せ 5
本来なら鍵を借りに行くのは1人でいいのだが、何となく3人で職員室に行くことになった。
「仕方ないか。元気じゃ方向音痴のせいで日が暮れるし、あまり気の進まない僕が取りに行くのも何だし、かといって女の子1人にするのもね」
気を遣わなくていいのに、と澄香は言う。
「そういえば篤志はもう入る部活は決めたのか?」
話のネタもこの3人だと共通の話題はそう多くはない。それに、入りたい部活をすっぽかしてわざわざ俺たちに付き合ってくれたならいくら友人とはいえ申し訳ない。
「いや、と言うかあらかた見たけれど部活に入る気はそんなにないから。だから本当は帰ろうとしたけれど、1年生のあまりいない場所に元気がいたから声をかけてみたわけ」
そうか、と相槌を打った。篤志はそれから無言で歩き出した。職員室はもうすぐそこだ。
まず俺が「失礼します」といって職員室に入った。ざっと見まわしたところ知らない先生ばかりで、増田教頭先生もいなかった。
その中で「おう、どうした」と立ち上がったのは学年主任の田村先生だ。下の名前は
「田村先生、多目的室の鍵を貸してください」
こういうと、何人かの先生が顔を上げたり、肩をピクリと震わせた。
「多目的室って、鍵掛かってないぞ。しかもそこで何をするんだ」
田村先生はそういいながらこちらに来てくれた。
「俺たち研究部を探していて、多目的室が研究部の部室だとわかったのですが、鍵がかかっていて中に入れないんです」
田村先生は頭をポリポリ掻きながら「おいおい」とつぶやいた。
「研究部って、そんな部活――あったか」
田村先生は近くの席の先生に聞いている。その先生はそうですね、とやんわり答えた。田村先生はこっちを向いてまあいいか、と言った。
「研究部のことを見たいというのはともかくとしてもよ、多目的室が閉まってるってならちと見に行かなけりゃな。とりあえず鍵、鍵……」
田村先生は金庫の扉のようなものを開いた。どうやら鍵がそこにあるらしい。田村先生は扉を開いたまま3秒間停止するとすぐに扉を閉めた。パッパと手を叩くと自分の胸、腹、腰と順番に叩いて行き、ズボンの右ポケット、そして左ポケットの中に手を突っ込んだまま硬直した。そして「とりあえず見に行くか」と広げた手を出して職員室から俺を追い出すように田村先生も出た。そして先生はどーこ行ったっけなー、といいながらすたすたと歩いて行ってしまった。
「先生?」
「鍵はどうしたんですか?」
俺たちは後を追って矢継ぎ早に質問した。
田村先生は君たち、と前置きすると、「このことは内緒だからな」と口止めをされることになった。
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