第6話 

「完敗だ。俺のラーメン7杯が起こす奇跡の虹の物語を攻略したのはお前が始めてだ。礼を言わねばならんな。これから俺は初心に帰って、基本に忠実に、旨いラーメンを作ることを目指すことになるだろう。そして、その結果として、キワモノメニューしか無くて、客が全然来なくてつぶれそうだったこの店も、にぎわいを取り戻すだろう……」


 達也に握手をもとめるおやじ。達也はその手を強く握り返し、


「おやじ、楽しかったぜ! 麺は万里を超え、スープはここにあり だっ!」


 そう叫ぶと達也は心の中で(そして具材は重力に惹かれた魂なんだよ)と唱えた。


「そ、それは、伝説のラーメン評論ファイター、麺宮寺達也が、旨いラーメンを食ったときに放つというお約束の台詞!! 

 まれに、美味くもなんともないラーメンを食った時にも放つ台詞!!

 あ、あんた……まさか…………!?」


「ごちそうさん、お代はここに置いとくよ」


 そういい残すと伝説のラーメンファイター、麺宮寺達也は、ラーメン屋を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る