第2話

 閑話休題。


 かくして、おやじと達也の異種格闘ラーメン対決が始まった。


「ではまず、一敗目! このらあめんからだ!

 第一の迷宮! 橙色のラビリンス!」


 おやじが始めに出したのは何の変哲もないラーメンだった。

 醤油ベースのスープに具は、メンマと煮卵。それにチャーシュー。

 白髪ねぎがとっぴんぐされている。


 あまりの変哲のなさに。

 若干拍子抜けしながらも麺をすすった達也であったが……、


「こ、これは……。この甘酸っぱい柑橘系の香り。さては麺に蜜柑が練りこんであるな!」


「よくぞ、見抜いた。そうだ、蜜柑だよ。給食でオレンジライスという異色のメニューを味わった、特定地域の特定世代にのみ存在するトラウマに向けた、アンチテーゼだ。

 アンチテーゼの意味はよくわかってないがな。

 本来であればスープのこってりさを打ち消すためだとか、風味にアクセントを加えるためだとか、創意工夫のもと、使用する蜜柑だが……」


「た、たしかに、この蜜柑の風味。なんの役にも立ってない、しかも若干、それさえなければかなり旨そうなオーソドックスな醤油ラーメンを台無しにしている!」


 達也の意識は天を駆ける。龍にまたがり、オレンジ色の空間を疾走する。

 そう、あれだ。グルメ系アニメとかでよくある描写だ。


 ほうぼうに散らばって宙を舞う蜜柑に頭を打ちつけながら、龍の上でラーメンを食う達也。

 そんなアクロバティックなシーンではあるが、詳細については触れない。

 なお、字数の都合で以下のラーメンでは同様のシーンは割愛。

 でもって、そのラーメンを完食する達也。


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