カラザ

々々

プロローグ



 空の色は灰色がかった藍色で、今日は若干仕事が多そうだなぁと溜息を吐く。


 空塗りの連中め、最近はこんな空模様ばっかじゃねえか。

 なんて毒づいたところでどうしようもない。

 第一彼らだって自分たちの意思で空の色を決められるわけじゃないし、そもそも今は雨季の真っ盛りだ。

 自分にとっては一番の稼ぎ時なわけだし仕方がない。目をつぶることにしよう。


 そう自分に言い聞かせつついつもの梯子に手を掛けると、ひょいひょいと上へと登って行く。

 さすがにもう慣れきったものだ。

 去年の今頃は大変だったなぁ。なんてことを思いながら、登る登る。


 梯子登りはペースが大切だ。とは、先代の口癖。


 特に若いうちは最初っから飛ばしすぎて上につく頃にはへばってる奴が多すぎて困る。

 早く上に行くのも大事だが、それよりも確実に登ってそのあともしっかり働く。

 それができてようやく一人前だ。

 登るだけでいいんならその辺の人形連中でもできるんだからな。

 わかったか? ぼうず。


 当時は、そんなもんか。と軽く考えていたけど、こうして一人前の雲蒔きとして働き始めてから、その言葉の意味がよくわかるようになった。と、思う。

 仕事場が〝カラザ〟周辺に移ってからは先代に会う機会がなくなってしまったのが少し残念。

 まあ、あっちはあっちで元気にやってるとは思うけど。


 そんな事を考えていると、ようやく梯子の中腹くらいにきていた。

 眼下には、見慣れた牧歌的な光景が一面に広がっている。


 何度見ても、平和な心和む景色だ。

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