静かにします。良い子になります。だから、もう、殴らないで。

蒼虎詩吟

第1話 さんがつ、にじゅうよっか



これは、私がこの世に生を享けた日付——。






私には、三歳年上の兄がいる。

血の繋がった、世界で一人だけの私のおにいちゃんだ。


私の家庭は母親、父親、兄、私だった。

母親は一日中家にいる。



父親は夜遅くまで働き家には深夜に帰ってくる。

ごく普通の家庭だった。少なくとも、小さいころの私はそう思っていた。


私の兄は、優しい人だったと思う。そんな兄の後ろを私はよく追いかけていた。


だが、私は兄のことが嫌いだった。


私の母親は兄のことを大切にしていた。

私のことなど眼中になく何時も何時も、私は一人だった。

母親に構ってもらえる兄が羨ましかった。

頭を撫でてもらって、話しかけてもらって、褒めてもらって、名前を呼んでもらって…


羨ましかった。


少しでも母親に好かれようと絵を描いたりした。だが、持って行っても見てもらえなかった。

忙しかったからかな。っと思ってもう一度絵を描いた。もう一度持って行って見せると破られた。


単純に悲しかった。辛かった。


まだまだ頑張らなきゃだめだ。私を見てもらうためには、もっと頑張らなきゃ。



子供の私には、どうすれば母親が自分のことを見てくれるのか分からなかった。





私は今でも、どうすればよかったのか、分からない。




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