ショートショート「グレイテストギフト」
モデル出身の作家、なんてのは、一番叩きやすい肩書きかもしれないな。
彼女はまさにソレだった。実際ルックスはそこそこ以上に良かった。
処女作が担当の目に留まって、トントン拍子に人気作家になった。
天は二物を与える、なんて滅多にあることじゃない。だから常に噂はあった。盗作、枕営業。一番疑われたのは当然、ゴーストライターの存在だった。
彼女は本当に小説を書いているのか?
不躾な質問をぶつけた報道局に、翌日、彼女はアポ無しで訪れた。
若い社員に使い走りを頼み、鉛筆と原稿用紙を買ってこさせた。空いている机を一つ借り、代わりに撮影許可を出した。
そして、小説を書き始めた。
2ヶ月に及ぶ執筆の果て、疲労困憊の彼女が、完成した原稿を社員に渡すところまでが、机の傍らに置かれたカメラによって、世界中に配信された。
小説はベストセラーになった。
この手の逸話はいくらでもある。
やっぱり彼女は天才だったんだ。もう死んじまったから話すけど
確かに面白い小説でした、って?
ありがとう。それは嬉しいな。
なぜ俺が感謝するかって、そりゃ俺が書いたからだよ、その小説を。
彼女は俺が書いた小説を一語一句違わず暗記し、衆人監視の元で、あたかも自分が考えたような顔で書き写したのさ。
単純な手品だけど、誰も見抜けなかった。そりゃあそうだな。ずば抜けた記憶力と演技力、巧みな自己プロデュース、強い自制心とプレッシャー耐性、人を引きつけ周囲からの応援を勝ち取る社交性、全て併せ持った彼女だからできたんだ。
文才?そんなもの、からっきし無かったよ。だから何だっていうのさ?
彼女こそ本当の天才だったんだ。それだけは、間違いない。
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