ショートショート「デッドロック」

 ああ、お邪魔してます。

 僕ですか、エスパーです。


 通報はちょっと待ちませんか。

 生のエスパーと喋る機会なんて、多分もう無いと思いますよ。

 そうそう。受話器を置いて。流石だなあ。落ち着いていらっしゃる。

 どうやって室内へ?普通に合い鍵です。

 すいません、期待外れで。あと部屋も荒らしちゃって。


 僕が使えるのはキネシスだけなんです。

 サイコキネシス。念動力。物を動かす力です。

 ただ、発動条件が厳しくてね。

 自分が食べたものしか操れないんですよ。


 例えば僕が、念力で人を操って喋らせようと思ったら、あらかじめ相手の舌とか声帯とか食べないといけないんです。

 絶対そんなことしたくないし、そもそも声帯食べちゃったら、声出せないじゃないですか。もう既に矛盾した条件が課せられてるんです。

 だから本当に使い道がないんですよ。暗殺くらいにしか。


 あ、まだ言ってませんでしたか。殺し屋です。僕。


 標的は貴方です。依頼主は合い鍵をくれた方です。

 いやちょっと拳銃はやめませんか。そりゃまあ正当な反応ですけど。

 ぼくまだ銃も銃弾もあなたの指も食べたことないんですよ。うわあ。


(銃声)


 ふう。よかった。問題なく操れた。

 銃を握って、こめかみに当てて、引き金を引いたのは全部この人。

 これでどう見ても自殺だよな。依頼主に電話しないと。


 しかし不味かったなあ。爪切りの中にあった、こいつの爪。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る