第15話 北の山脈地帯に行きました

 王都に着いた翌朝、俺はギルドで依頼書が張られている掲示板を眺めていた。


「うーん、常駐依頼はっと、ゴブリン討伐にウルフ討伐、後は……ん? オーク討伐?」


 常駐依頼にしては珍しいランクCの魔物である。


 常駐依頼とは、常に出されている依頼で、事前に受付をする必要がないものである。これは基本的に常時発生している魔物の討伐や薬草などの需要が常にあるものの採取が対象となり、ランクEやFが対象のことが殆どだ。


「へー、珍しい。場所は北の山脈地帯で、オーク一体当たり五百センか」


ふむ、ゴブリンの十倍か。それなりに強いだろうが、問題ないだろう。


「あとは、何か面白そうな依頼は、……これは」


 掲示板を見渡していると赤文字で書かれた注意勧告に目が止まった。 そこに書かれていたのは北の山脈地帯での飛竜目撃情報であった。飛竜はモンスターで言うワイバーンのような見た目であるが、モンスターではなく竜族であるため理性があり、こちらから何かしない限り襲われることは無い。また、竜族の中では中くらいの強さを持ち、戦う場合は、一般的にAランクパーティーが挑むような相手とされている。


 俺はオーク討伐のついでに飛竜を探すことにし、ギルドを出て、北の山脈地帯へと向かった。




――――――




 王都から北の山脈地帯まで、転移を使いながら行ったら約10分で着いた。距離自体は二十キロメートルほどあるらしいが、視認できる範囲であれば転移が可能なので、それだけ時間を短縮することが出来たのだ。


「到着っと。さてさてオークは何処にいるのかな?」


 山脈に着いた俺はサーチを頼りに、オーク狩りを始めることにした。サーチを確認すると、至るところに反応があった。それらを一つずつ調べるのは面倒なので、近くの反応を調べ、魔物であったらその都度狩っていくことにした。


 見つかったのは初めのうちはゴブリンやウルフばかりであった。恐らく、麓の方ではランクの低い魔物しか出ないのだろう。そう考えた俺は麓のある反応は無視し、中腹から頂上にかけて反応のある所を目指した。


 すると出るわ出るわ、一匹いたらなんとやらといった具合に、次から次へとオークが見つかり、ついつい夢中になって、どんどん山脈の奥へと進んで行った。




――――――




 すっかり夢中になり過ぎていたようで、気づくと空が茜色に染まっていた。


「はあ、もうこんな時間か。結局、飛竜は見つからなかったな」


 取りあえず今日のところはこれで終了にし、そろそろ帰ろうとすると、何処からか耳をつんざくような爆撃音が聞こえた。サーチで確認してみると、そこには30人ほどの集団と10人ほどの集団が戦っているようだ。


 10人ほどの集団にはアズマさんやお下げ髪がいたので、恐らく盗賊団との戦闘中だろう。人数差はあるが、冒険者の方が優勢のようで盗賊団の数は徐々に減っている。大丈夫そうだと感じた俺は、もう一つの気になる気配の方に集中した。


 冒険者と盗賊団の戦いをサーチで調べたときに反対側に、こちらの様子を伺うように距離を取っている存在を確認したのだ。それに対して神力を使いステータスをみることにした。


 名前:ストライダー

 性別:男

 種族:飛竜(ランクB)

 HP 21000

 MP 1500

 ATK 8200

 VIT 6700

 AGI 2800

 INT 1300

 MND 1600

 DEX 1000

 LUK 800

 特殊能力:竜王の加護、咆哮、威圧(上級)、ブレス(火)(上級)


 竜王の加護:竜王の眷属となった者に与えられる加護。弓や魔法などの遠距離からの攻撃を無効化する。


 流石、竜族といったところか。ステータスがずば抜けている。いやはや、この世界はどうなっているのだろうか。こんなのが普通にいたら人族なんて生きられるはずないじゃん。まあ、いいんだけど。


 ワイバーンが見つかったのはよかったが、はてさてどうしょうか。ステータス的には、まあ、勝てない相手ではない。ただ、特殊能力で竜王の加護とか言うのが厄介だ。空飛んでるのに遠距離攻撃無効とか反則だろ。


「さて、どうするか」


 今回は様子見で来ていたのだが、実際に見つけると会ってみたくなるものだ。どうしようか迷っていたはずはずなのに、やはり欲望には勝てなかったようで、いつの間にか俺の足は飛竜の方へと向かっていた。


「人間が私に何の用だ」


 そして、目の前にはストライダーこと飛龍がいる。大きさ優にに五メートルは超えていて、見た目はRPGでよく見るワイバーンそのものであるが、色は吸い込まれるような漆黒であった。


 ちなみに、人族と竜族では言語が違うが、一般魔法のインタープリト(中級)により異種族間でも会話を成立させることが出来る。ちなみに、初級だと同種族間での違う言語に対応出来る。


 なんか高圧的な態度であるが、大人な俺は華麗にスルーして会話を続ける。


「あー、用は飛竜を見ることだから、もう用は無いかな?」


「ほう? 下等な人間が我等の言語を理解するか」


 そっちから喋り掛けておいてその言いぐさは何だ! と叫びたかったがグッと堪えた。取りあえず聞きたい事があるから機嫌が悪くなっても困るし。


「まあ、魔法の力だけどね。ちょっと聞きたいことがあるんだけどいい?」


「ふん! 口の利き方には気を付けろよ? 人間風情が竜族の私と対等であるはずなかろう。聞きたいことがあるならそれ相応の態度を示せ!」


 ウザいなこの飛竜。格の違いを理解してないのはどっちだ。まあ、俺は空を飛ぶ術は持っていないが、転移を使えばどうとでもなる。取り敢えず翼を斬っとくか。


 余談だが、飛竜とはその名の通り飛ぶ竜である。一般的に竜は空を飛んでいると考えられているが、殆どの竜は魔法で浮いているだけであり、翼は補助的なものである。その点、飛竜は数少ない自分の翼で空を飛んでいる竜である。


「……? グギャァァァア!」


 俺は転移を使い、飛竜の背後に回り込みムラマサで両翼を斬り取った。翼をなくした飛竜は、成す術もなく地に落ちると、辺り一帯に地響きと叫び声が轟音となって鳴り響いき、空気が震え渡った。


「さて、質問したいのだがいいかな? 地べたに這い蹲るトカゲ君?」


「くっ!」


 両翼をなくしてバランスが取れないのか、飛竜はふらつきながら此方を睨んできた。


「嘗めるな! 人間がぁ!」


 飛竜はそう言うと、炎のブレスを吐いてきた。かなり広範囲に広がっていて、避けるのはちょっと無理そうだ。まあ、転移を使えば余裕だが。ただ今回は格の違いってやつをしっかり叩き込む必要があるので、水魔法で対処する。使うのは中級魔法ウォーターフォール。これは指定場所に滝のように水を叩き落とす魔法である。範囲は通常は直径一メートル、俺の場合は十メートル位だ。


 俺は後方に大きく飛び距離を取って、それを瞬時に発動した。


「ウォーターフォール!」


 飛竜の上方五メートル程に照準を合わせ、魔法を放った。


「がふっ!? ぶぶぶぶぶっ!」


 ああ、何かやりすぎた。想像では、落ちてきた水がブレスの炎を消し去って驚かす程度であったのだが、実際には違った。飛竜の上方から落ちてきた水の勢いは凄まじく、その圧倒的な量も相まって飛竜を押し潰していた。何というか重力魔法で押し潰されてるような感じだ。そんな状態なので当然ブレスは掻き消え、水の圧力により口を開けるどころか、立つことすらできない状態である。


……ん? というか、竜王の加護はどうした! 普通に魔法が効いてんじゃん! これもまたチート性能の何かが原因なのだろうか。まあ、それは後にして、そろそろ助けないと危険だろう。


 俺はそう思って転移を使い、飛竜を安全圏まで引っ張りだした。


「ごふぉっ、ごほっ、ごほっ! はぁ、はぁ」


「さて、話す気にはなったか?」


 俺は息も絶え絶えになっている飛竜に問いかけた。


「はあ、はあ。……申し、……訳、……ありません、……でした」


「まあ、いいや。取りあえず少し休んでろ」


 流石にやりすぎたと思い、軽く治癒してやり、話せる状態にな

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