第6話 現状を再確認しました
ハグルと戦った翌日、俺は部屋で考え事をしていた。
「うーん、何か知らないことが多そうだな」
実際に熟練者と戦ってみて分かったが、ゲームの時はほとんど自力のみだっただけに、今持っている力の使い方がいまいちよく分からなかった。それ以外にも武器のことや異能のことなどよく考えると知らないことがどんどん増えてきた。
「取りあえず聞いてみるか」
何か困ったことがありましたらGMコールをお使いくださいと言っていたのを思い出し、GMコールをすることにした。そういえばGMコールに出ていたのが誰だったのかも知らないことに気が付きそれも確認することにした。
「もしもし、聞こえてますか?」
「はい、こちらノーゲーム管理局です」
「質問があるんですが、いいですか?」
「どうぞ。ただしお答えできるものには制限があり、そちらの世界に関することは基本的にはご自身で情報収集して頂くことになっております」
「はあ、じゃあまず貴方は誰ですか?」
あまり情報に期待はできないのかと、残念に思いながらも、そういえば今話している相手が誰だったのかも知らないことに気が付き、それも確認することにした。
「私はその世界の管理・運営を任された者です。そうですね、分かり易く言えば神といったものに近いですね」
ほぅ、神と来たか。薄々そんな感じはしていたが、実際に言われるとちょっと胡散臭いな。ただ、ここで色々言っても話が進まないので、次の質問をすることにした。
「この世界とNormalization Onlineの違いってどんなことがありますか?」
「はい、その世界はNormalization Onlineを元に作られましたが、少々手を加えていますので所々違います。ただ、あなたのような方達にはゲームと同じような仕様を採用しています」
ということは、言葉がわかることや自分のステータスが分かることなどはそういう仕様なのだろう。しかし今聞き捨てならないことを聞いた気がした。
「……ん? あなたのような方達? もしかして俺以外にもこの世界に来ている人がいる?」
「そうですね。数で言えば100人位ですか」
自分に以外にもこの世界に飛ばされた人がいると聞き、俺は少し嬉しかった。さすがに知り合いが全くいないというのは辛いものがある。
「その人達は今どこにいるんですか?」
「基本的に、ゲームで条件を達成し選択肢を決定した場所で転移することになっています。なので、居場所は様々です。また現在地をお教えすることはできませんので、ご自身でお探し下さい」
つまり俺の場合、始まりの森で選択肢を決定したので、始まりの森へ転移したのか。ということは、もしかしたら始まりの町に誰かいる可能性もあるわけか。
「分かりました。話は戻りますが、この世界とゲームの相違点として大陸や街の配置は変わりませんか?」
「主なものは大体同じです。詳しくはお答えすることはできませんが、そこはご自身でその世界を見て確かめて下さい。他の相違点としては、あなたの持つ神力などはゲームには存在しないものがあったりします。」
ふぅん、基本的に自分で調べられることは自分で調べろということらしい。ちなみに、ゲームでは大陸は五つあり、中央大陸を中心として方角ごとに東方大陸、西方大陸、南方大陸、北方大陸となっていた。相変わらず運営は名前を考えていないがその辺りは気にしてもしょうがない。また、それぞれで文化レベルが違い、中央大陸は文化レベルが最も低く、魔物が最も多く出現する大陸だったりする。
もう聞くこともないかと思ったが、重要なことを聞き忘れていたことに気が付いた。
「じゃあ、死んだ場合はどうなりますか?」
「一部例外はありますが、死んだ場合はそのまま死にます。その場合、当然元の世界へは帰ることは出来ません」
「例外というのは?」
「一つは死者蘇生の方法を使える者によって生き返らせてもらうこと、もう一つは転生することです」
この世界には復活の呪文もあるのか。なら、自動復活とかも出来るのかな。まあ、それはいいとして転生ってあの転生でいいのだろうか。
「転生っていうのはこの世界に生まれ変わるってことでいいですか」
「その理解で合ってます。ただ様々な制約が付きます、詳しいことは言えませんが……。」
「ふぅーん。あ、そうだ。アマノムラクモが使え無かったんですが、どうしてですか?」
「アマノムラクモは正常です。それについてはご自身でお調べください。そういったことはゲームの醍醐味でしょう?」
……まあ、ゲームならそうなんだが。俺は攻略掲示板を見るのは最低限にして、自分で色々検証していくタイプだった。ただ、命が懸かっているこの状況ではどうなんだろうか。こんな状況だからこそ楽しむべきなのか。
「分かりました。大体大丈夫です」
「それでは、また何かございましたらご連絡ください」
そう言うとGMコールが切れた。
「はぁ、なんだかなぁ」
ある程度は聞きたいことを聞けて、ある程度の状況は把握できたが、あまり有意義な情報がなかった。一段落して気が抜けたら、腹の音が聞こえた。起きるのが遅かったというのもあるが、いつの間にか昼時となっていた。
「取りあえず何か食べるか」
そうして俺は食堂へと向かった。
――――――
昼食をとった後、俺は街を歩いていた。今日は依頼を受けずに、街を見て回ることにした。
「うーん、何かぱっとしないな」
武器や防具を見に行ったのだが、鉄製の物が殆どであった。中にはミスリル製の物もあったが、とてもじゃないが手の出せる値段ではなかった。今の装備より良いものが無いのは当然だが、今の武器だとオーバーキルなので、相手を殺さない程度に扱える武器が欲しかったのだ。
「露店にでも行くか」
俺は気を取り直して、露店のある大通りを行くことにした。露店は街の中央にある大通りの路上で開かれている。武器屋や防具屋は町はずれのギルドの近くにあるのに対し、露店は大通りにあるのは需要によるものだろう。
――――――
大通りに着いた俺は、何か掘り出し物が無いか露店を見て回る。露店ではそれぞれの店で自分の好きに物を売っている、いわばフリーマーケットのようなものであった。露店の半分以上は食材や食べ物関連で、次に多かったのは装飾品などの土産のようなものを扱っている店であった。目当ての武具に関しては2、3店舗出ていたが、特に目ぼしいものは無かった。そうして、露店を見て回っていた所、気になるものが目に付いた。
「すいません。これは何ですか?」
「いらっしゃい。これはカリーパンと言って、南方大陸の料理のカリーをパンの中に入れて焼いたものだ。うちの店は魔法鞄があるから、こうしてほかの大陸の物も仕入れられるわけだ。どうだい? 数に限りがあるから、買うならお早めに」
歩いているときにわずかにカレーの匂いがしていたから、もしやと思ったが、あったのがカレーじゃなくカレーパンだったのに驚いた。宿の料理を食べた時にも思ったが、この世界の料理って普通に地球の物と変わらずにおいしい。こっちの世界の料理が地球の料理と近いとは感じてはいたが、こんなものまであるとは思わなかった。食材の流通手段が未発達だから種類は少ないが、旅をすれば他の料理や米とかも普通に有りそうだ。
「そうなんですか。じゃあ一つ下さい」
「まいどっ! 一個百センだ」
「はい」
お金を店の人に渡し、カリーパンを受け取った。俺はカレーパンを食べながら、しばらく露店を見て回った。食べ物の店では、肉や野菜の串焼きが多く、カリーパンのようなもの他には無かった。魔道具を扱う店があったが、基本的に生活用品みたいなものが多く、魔石を入れて動かすライターやランプのようなものを扱っていた。そんなこんなで、大体見て回ったのでそろそろ帰ろうかと考えていると、甲高い叫び声が聞こえた。
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