2018年10月 第2週―②
『おいっ!!』
思わず突っ込みを入れてしまった。
『一対一はどうした。それに、サポート役だから戦わないんじゃなかったのか?』
『そんなこと、グラたんしか言ってないんですけど? それに“[
『き……汚ねぇ……』
『いいじゃない、練習試合なんだし。必ず一対一で戦えると思ったら大間違いだよねぇ』
どんどん言いくるめられてゆく。
地味に正論らしいことを言っているのが腹が立つ。
『それに、レベルがカンストしてない[
『二対一かぁ……。グラたん頑張ってー』
向こうは向こうで、気楽なものである。
自分の試合が終わったからって……。
結局――
一対二の形式で決闘を行うこととなった。
『……OK?』
『はい……わかりました』
どうやら、[シトリー]がなにやら[
決闘フィールドが展開され――試合が始まった。
『
先程の試合と同じように、開幕で使い魔を呼び出す[
自分も[ケルベロス]と同じように先手を打とうとしたところで――
『はいはーい。通行止め、通行止め』
まさかの[シトリー]が、目の前に立ちふさがってくる。
『[シトリー]――!? サポート役ってのはどうなった!?』
『今回は時間稼ぎ要員ということで。
今まで――なんだかんだで一緒に行動をしてきた[シトリー]を。
自分のサポート役だった者を相手取るという、初めての状況。
全てが予想外の展開。そして――
『――≪
その[シトリー]の《奥義》が、発動した――
――――
『くそっ、ちょこまかと――』
『“目”の力だけで一位の座に座ってるわけじゃないからねぇ』
《奥義》の効果でこちらのスキルの状態が筒抜けなのだろう。
食らえば致命傷となるであろう《影縫い》だけは、キッチリと回避されていた。
たまに忘れそうになるが、こいつも一位――
グループの
一方的に削ってはいるものの――
《奥義》の効果と合わさって、非常にやりにくい相手となっていた。
『厄介な相手だなおい――!』
『グラたんの真似をしてるだけですけど? まぁ、ボクのは一時的な、付け焼刃な技術だけどねぇ』
『こっちの準備はOKです!』
『ほいほい。それじゃーバトンタッチということで♪』
[シトリー]が距離を離し始めると共に、[
「≪
『――!!』
足元から湧き上がってくる大量の腕、腕、腕――
【ビフロンス】の――[
急いで飛び退くも――
あっという間に決闘フィールドの床全体が覆い尽くされてしまう。
まるでそれは絨毯のように。
一面に、全面に広がっていく。
逃げ場など無かった。
わさわさと揺れながら――
上に乗る者の足を取ろうとしてくる。
――取られてしまう。
『ちぃっ!』
味方には効果がないようで、[シトリー]はそのまま後方へと下がってゆく。
そして入れ替わりに――
最大まで強化された
おいおい、マジか。待ってくれ。
本格的に一対三の状況に持ち込まれたぞ。
『――くっ!』
《影縫い》を――攻撃を当てるものの、向こうにひるんだ様子は一切ない。
そのまま、
『こいつの攻撃はマズいだろ――!』
貴重な回避スキル――《月影迅》を使用しての緊急回避。
亡者の腕による≪
それと同時に、一気に距離を取った。
――が、無敵時間が切れたタイミングを見計らって、[シトリー]からの攻撃が飛んできた。
再び亡者によって足を取られて――≪
その上、次の行動に入るまでの隙を狙われたため、モロにダメージを食らってしまう。
『――! きっつい……!』
あの状態の
それでも――まだ勝機はある。
思うように身動きが取れない状態だが――
[シトリー]と[
『形勢逆転だねぇ。このまま削りきって終わりかな?』
――二度目の《影縫い》を放つ。
目標は当然――
狙い通り、命中して足元に黒い渦が発生した。
≪
『今――!』
「≪
『消えた――!?』
『こっちに向かってきてる! [
[シトリー]の“目”は欺けない、が――[
『ここで逃がすわけにはいかない!』
一気に勝負を決めに行く!
――――
HPが0になった[
それに伴い、使い魔である
装備が万全ではない、
『さぁて……あと一人だな?』
五秒間の硬直時間に攻撃を受けていたが、所詮はサポート役。
回避補正がかかっているのもあり、削りきることなど到底できるわけもなく。
…………
『ま、まさか。非戦闘員に対して攻撃を加える気じゃ……』
散々そっちからも攻撃を加えておいて、今更どの口が言うのか。
『そういえば、これまで散々決闘を断り続けられていたし?』
丁度いいじゃないか。
これまでの借りを一気に返すとしよう。
『ひ、人でなし――!』
『お前も悪魔だろうが!』
――――
結果。
一戦目 [ケルベロス] - [
〇(圧勝) - ×
二戦目 [グラシャ=ラボラス] - [
〇(辛勝) - ×
という、なんだかんだで新参者を先輩たちで叩く形に。
『な……なんだか申し訳ないな……』
『いえ、自分としても――第一位の人に、実際に相手をしてもらうのは良い経験になりましたし』
わりと全力で戦っていた自分たちに対して――
自分よりも年下の少年は、なかなかに大人な対応をしていた。
『でも……二戦目は惜しかったと思うよ?』
『[
『一対二なんて、もう絶対にやらないからな!』
特に[シトリー]が相手にいるときは。
あれで装備が固かった場合を考えると、絶対に勝てる気がしない。
恐らく、途中で
そうなると、完全に敗北である。
『私はそれでも大丈夫だと思うけど。……今度はそれでやってみる?』
『い、いえ……遠慮しときます』
……今度は[シトリー]だけが隔離されて、[
【ケルベロス】の第一位という肩書は伊達ではない。
『今日は……ほんとに楽しかったです』
『しばらくは、こんな感じで一緒にレベル上げだね』
『まずは、装備を整えてからだねぇ』
勝利を掴むことはできなかったが――
[ケルベロス]と実際に手合せすることができて嬉しかったのだろう。
特に拗ねるような素振りも見せず、そのままの賑やかな雰囲気で。
四人で雑談をしながら、[ダンタリオン]の待っている《大図書館》へと戻った。
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