2章ー攻略の下準備開始
惶真作のカレーとナンを食べた。
皆、大変満足したあと、その日はそのまま以前借りた部屋で休むことにした。
流石に連日に及ぶ初めての迷宮探索での疲労感や【精神回復薬】を服用していても精神疲労が残っていたのか、チート化している惶真も風呂に入った後はべッドに入るとそのまま次の日までグッスリと夢の中に入っていた。
ちなみにというか、当然というか、マナとカナの2人はやはりというか、惶真の布団に入り込んでいた。
そして当然ながら、勝手に侵入した二人に気付き、「油断し過ぎか俺?」と己に呆れつつ朝一で2人に感電御仕置きを行った。
またガルダ迷宮で出会い従魔にした灰色の表皮の魔狼。名前は惶真がフェンリルと名付け、以降はそう呼ばれている。
フェンリルは惶真の部屋の片隅で眠っていた。当然マナとカナの二人の侵入も気づいていた。侵入してきた二人に『グルル』と主認定している惶真の睡眠の邪魔にならない様にと威嚇し追い返そうとした。フェンリルの存在にビクッとする二人。しかしマナとカナの真剣で純粋な説得を聞き呆れつつ見なかった事にしたのだ。
ただ、そんな事情は惶真には関係なかった。
「そうか…ニコ♪」
『ビクッ!?……”アォーーー”!!!?』
お仕置きされた。
先のお仕置きにより痺れているマナとカナは心の中で『ゴメン…ね(なの)…』とお仕置きの巻き込まれたフェンリルに対して申し訳ない気持ちだった。
+
お仕置きで痺れている2人+1匹を置いて身形を整えた後、朝食の準備をと思い台所に向かう。しかし既にリムルが起きており、エプロンを纏い朝食の準備をしていた。
やってきた惶真に気付いたリムルは笑みで朝の挨拶をした。
「あら、おはようございます。よく眠れましたか?」
「ああ。おかげ様でグッスリと眠れたよ。…不届き者が入って来るのに気付かないくらいな」
「?」
くくくと笑みを浮かべながらそう言う惶真。今頃ぶすっとしながら軽く痺れさせただけのなので今頃は痺れも収まりマナもカナも修道院風の服からそれぞれの服に着替えているであろうと思い浮かべながら。
そんな惶真に不思議そうなリムル。
「さて俺も手伝おう。ほとんど終わってるようだし盛りつけたり運んだりはするよ」
そうリムルに告げると惶真は殆ど準備が出来ている料理を居間のテーブルに運ぶ手伝いを申し出る。
「いえいえ、私がしますので、オウマさんは居間の方で待っていて下さっても」
「はは、気にするな。手伝うくらいはさせてくれ。今日からはリムル達にはいろいろ協力してもらうだろうしな」
「…わかりました。ふふ、では出来ていますのをテーブルに運ぶのをお願いしますね」
「任されよ」
そんなやり取りの後、出来上がった朝食をテーブルに並べ終えた惶真は席に付いて他のメンツが起きてくるのをのんびりと待っていた。
リムルは調理に使った器具などの後始末をしている。
家庭的なリムルの姿に従姉の美柑を重ねつつ「違うな」と思っていた。
「ぶぅ…」
「むす、なの…」
「ふぁ…どうしたの、マナもカナも?」
まだ朝一の御仕置きにぶすっと膨れているマナとカナ。そんな2人を欠伸をしながら不思議そうにまだ眠そうで見つめるヴァニラがやってきた。
不満です!とジト目で惶真に突き刺すマナとカナの視線を、惶真は気にせず、むしろ勝手に入ってきたお前たちが悪いと言うのようにお茶を一口飲む。
「なるほど…」と先程の『不届き者が入って来た』と言う惶真の言葉を理解し片付けを終えて席に付くリムルは苦笑する。
+
最初は家事(特に料理下手)の従姉の美柑と似通った容姿をしているリムルの料理に不信感があったが、今では文句なしの料理に舌鼓を打ちつつ、リムルの朝食を食した後、惶真達はさっそく【迷宮ガルダ】の隠された迷宮の領域の手掛かりを探し始めることにた。
惶真達は手分けをする事にした。
まず【ガルダ】の深部で見つけた、この世界の言語を理解出来ると言う
此方は文字を全て記憶している惶真と、かつて亡き夫と同じ考古学を学んでいたと言うリムルで調べ解読することにした。
次に迷宮ガルダの近くに存在するこの村で有名所の噂や言い伝えの類を調べる係。
此方は既に目星がすでに付いている。
迷宮ガルダの直ぐ傍であり村に近い場所にある森。その森にあると言う泉。そしてその泉に存在し言い伝えになっている花の存在。確か花の名前は【コトノハナ】と言う薄紅色の花。
それらの調査は一度泉に赴き実物の花を見たことのあるヴァニラを案内に、マナが護衛として付いて行く事になった。
基本泉や森には獣の類が出る事はあるが、魔物は出ないと言う事らしい。しかし、ヴァニラが語った話に出て来た
まあ上位種のオーガであろうが、”覚醒”し迷宮での戦闘経験を積んだ今のマナの敵ではないだろうし、ヴァニラもオーガの不意を突いた形とはいえ撃退に成功する技量を持っているので問題はないだろう。
そして最後に先の迷宮探索において消費した回復アイテムの生成をカナに担当してもらった。
今までは従来の市販されている回復剤を使っていた。
効能は確かで、回復も見込めていたが、如何せん惶真達の持つ”恩恵”の力を使うと一気に魔力を膨大に消費してしまう。迷宮挑戦を終える頃には回復薬はそこを尽きてしまうほど使用していた。
この村に戻った際に、村で売ってるらしい回復薬を調べてみたが、王国のエルドラで購入した物に比べると質はいまいちだと分かった。
ならどうするかと考え、自作すればいい、と結論付けた。
本当なら薬草系知識を習得しており、【魔晶水】の作成も行える惶真自身が作成すればいいのだが、理解不可の言語の解析に時間を使う可能性が高かった。
なのでカナに頼んだ。
回復系の【白】の属性を持ち、”再生”の”恩恵”を持っているので最適と判断した。
必要な物から、作成手順も既に伝えてある。
ついでにと、回復薬(体力回復薬、精神回復薬)の他にも、状態回復系の回復薬も作成できたら作るように指示した。
「そんじゃ、各自各々の作業に入ってくれ。とりあえず目処は昼過ぎにしよう」
「はぁい!よぉしっ、行こう、ヴァニラ!」
「うん!レッツらゴー!がんばろうマナ!」
元気組のマナとヴァニラは森の方に向かう。今はまだ”覚醒”させていないのでマナは養女モードだ。
「それじゃ一人寂しく頑張るの…」
逆に一人で回復薬の生成作業を行うカナは、言葉通り寂しさが含まれつつこの村や周囲にある薬草などの素材収拾に向かった。
一応護衛の名目でカナが一人寂しくないようにとフェンリルを同行させた。
「よし。こちらも始めるとしよう。それらしい本とかある俺が泊まっている部屋でやり始めるか。頼むなリムル」
「え、ええ。お役に立てるか分かりませんが、頑張りますわ。よろしくオウマさん」
何だか若干リムルの頬が赤い気がして不思議がるが、気にせず自分の作業に向かった。
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