1章外伝2ー②…その頃の召喚組『刻夜と咲朱』

この世界についての知識を得た後、29名の召喚者達はとある場所に案内された。


そこは厳重な施錠が施され屈強そうな騎士(ヴァレンシュ騎士長に比べれば数段下のレベル)が立ち守りに就いていた。

ヴァレンシュが二人の騎士に言葉を掛ける。

すると2人の騎士は扉の道を開けヴァレンシュに一つの複雑そうに出来た鍵を渡す。

ご苦労と声を返したとヴァレンシュは扉に施されている施錠を受け取った鍵で開ける。


ギギィと開く音。


「わぁ…」


誰かの声が零れる。

いやこの場にいる者達の殆どだったろう。

扉の中にあるものに思わず目を奪われていた。


「さあ、皆入るといい」


ヴァレンシュに促され皆足を進め入る。

全員が中に入ったのを確認後、ヴァレンシュがここにある物について説明を始めた。


「ここは我が王国の宝物庫で、この度の為に集めたアーティファクトが納められている」

「やっぱりこれ等ってアーティファクトなんだ。クロノカードとか不思議アイテムの事だと思っていたんだけど」


自分のクロノカードを取り出し見ながら、アーティファクトって色んな種類があるんだ、と声にしたのは、クラスの男子の中では小柄で大人し目な雰囲気をしている鍛冶能力に特化している福田守だった。


「その通りだ。アーティファクトには色んな種類があり形は多種多様に存在しているのだ。此処にある武器の類のものであれば、クロノカードの様に物である場合もある。他にも色んな種類が存在しており把握しきれないほどと言えるのだ。さて、皆を此処に案内したのは他でもない。今後、君達がその手にする武器を選んで貰う為だ。今回の為に色んな土地から収集した。さあ、選ぶと言い」


そう告げたヴァレンシュは「選び終えた者は外に出てくれ、俺は外で待っているから」、とさらに告げその場を後にした。

皆ソワソワしつつ選びに行こうとしたその時、


「あぁ、言い忘れたが。この宝物庫から取り出せる物は各自一つだ。それ以外を持って行こうものなら――――そいつは”呪い”に掛かるようになってるからな。それじゃ待ってるぞ」


呪いに掛かると言われ数人ビクッと震えた。

どうやらいくつも選ぼうと考えていた者がいた様だ。



その後、皆それぞれに自分の武器となるアーティファクトを選ぶ為、宝物庫内を散策し始めた。

咲夜も「どれにしようかな~」と見て回る。


「うん!私コレにしよ!」

「へぇ、コチラはわたくしに合っていますわね。フフッこれに決めましたわ」


どうやら何人かは直ぐにコレっ!と選ぶ者がいた。

率直に選んだ者は戦闘技能に特化しており、その者の技能の中に武器を扱う者が恐らくあったのだろう。



「うぅん……どれにしようかな。やっぱり剣が良いなって思うんだけどなぁ。でも私の技能って”暗器操作”と”短剣術”なのよね。良いのあるのかしら?と言うか”暗器”ってどんなものが”暗器”なのかしら?」


そう呟きながら捜していると、ふと咲夜の目に二振りの似た剣が映った。

「あら」と咲夜は声にしつつそこに置いてある二振りの剣に近付く。

その二振りの剣。分類は短剣に該当しているようだ。

その形は殆ど同じ。屈曲の刀剣の形状の刃。どこか薔薇の様な花をイメージさせる。

ただその短剣の刃はそれぞれに異なっている部分がある。それは刃の色だった。

一つは漆黒の刃の短剣。もう一つは深紅の刃の短剣だった。


「似ているけどこれって一つ一つって事?双剣なのかしら?まあいいわ、手にしてみればいいかなっと」


そう言い咲夜は置かれている赤い短剣を右手に、黒い短剣を左手に握った。

握って直ぐに咲夜は実感した。まるで長年扱っていたかのように両手に馴染む。

咲夜は「うん、決めたわ」とこの双剣を選ぶ事にした。

選んだあと、そう言えばなんて武器銘なのかしら?とこの双剣の名称を確認すると、


「えっと、赤い方が”咲朱”でいいのかしら?こっちの黒のは、”刻夜”でいいみたいね。…うん、私の字が入っているって言うのも何だか運命みたいで気に入ったわ♪」


双剣が置かれていた場所に刻まれていた名称。刻まれている文字はこの世界の文字だが、咲夜には”言語理解”がある。その能力で解析した結果そう読み取ったのだ。


その後、咲夜はもう此処に用はないと、宝物庫から出る。

出るとどうやら半数が既に選び終え、御互いに選んだ物を見せ合ったりしていた。

中には選んだものの武器と言う名の凶器を手にした事に怯えている者もいた。


「やあ、咲夜も選び終えたんだね。ほぉ咲夜は双剣を選んだんだ」


そう声を掛けて来たのは正儀だった。

どうやら自分より早く選び終えたみたいだ。

正儀の手には黄金色の鞘に納められた西洋風の形の剣を持っていた。


「なに?アンタの選んだのソレ?金ぴかとか成金趣味でもあったのアンタ?」

「ははっ、そんなわけないよ。……どうしてか自分でもわからないんだけどね。俺も始め探してたんだ。すると何だか呼ばれた気がしたんだよ」

「呼ばれた気がした?その剣に?」

「あぁ、気のせいかとも思ったんだけどね。聴こえた声の方に行くと其処にこの剣があったんだ。不思議な気がしたんだけどとりあえず手に取ってみたんだ。そしたらなんだか凄く馴染むんだ。まるで自分の手足の様に感じたんだ」


何でも選び終えて宝物庫から出るとヴァレンシュが話し掛けて来たみたいだと言う。その際になんだか動揺と言う感じに驚いていたらしい。


正儀は左手の鞘から右手で剣を抜く。

抜く際になんだか輝いているように咲夜には見えた。


正儀は剣を振るって問題ないか確認した後、その黄金の剣を水平に振り抜いた。


(ふうん、なかなかやるじゃない…)


正儀のその一振りは綺麗に空間を裂くかのように思わせた。

正儀も満足した様で剣を鞘に納刀した。


「うん、満足。やっぱり馴染んでるよ。多少剣の心得があるけど、なんだか今まで感じた事もない感じだよ」

「あっそ、よかったわね。まあ私のこの子達ほどじゃないけどね。…それでその剣の名はなんて名なの?」

「えっと、確か…デステニーだよ」

「デステニー…運命を冠するなんて正儀には勿体ない気がするわね」

「アハハ…酷い言い草だねほんと」


そんな会話をしながらしばらく待っていると、どうやら全員選び終えたみたいだった。


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